小さなステップの積み重ねが大きな成果を生む
もちろん、プラスチック廃棄物削減のためにスケールアップすることが常に適切とは限りません。包装材などの要素を削減する方法はさまざまです。シングルユースの未使用プラスチックが必要なアプリケーションであっても、削減方法はあります。ちりも積もれば山となるのです。
例えば、Axygen®ブランド製品用の包装について、先ごろリサイクルを念頭にデザイン見直しを実施しました。カートンは、100%リサイクル可能な無漂白天然パルプ段ボール紙、リサイクル可能な水性塗装、従来デザインよりも少ないインク(現在、植物由来インクを使用)に切り替えました。2024年末までにすべての製品包装材が新デザインに移行する予定です。別の例としては、リロードタイプのピペットチップボックスの素材が再生ポリプロピレン材料100%に変わりました。
コーニング ライフサイエンスのオートメーションチップ&リザーバー担当プロダクトラインマネージャー、Todd C. Gilmore氏によれば、こうした最新の進歩を背景に、イノベーションの追求、廃棄物削減意欲がますます高まっています。開発チームでは、新たなブレークスルーに向けて引き続き力を注いでいます。「当社製品は、ラックやフタを中心に、可能な限り、プラスチックのリグラインド材を採用し始めています。チップ製造工程のプラスチック射出成形の際、ランナーと呼ばれる不要部分ができます。そこで、このランナーを工程上の樹脂の流れに直接戻せるように、多くの製造ラインを改修しました。また、エンジニアリングチームと共同で、ラックの射出成形に新しい手法の開発に取り組んでおり、成功すればプラスチック使用量を50%以上削減できるようになります」
Corning Pharmaceutical Technologies(CPT)のビジネスサプライマネージャー、Nitin Deore氏は、製品包装の進化など、サステナビリティへのインパクトについてさらに事例を紹介します。「CPT内部で、3R(廃棄物の発生抑制、部品などの再使用、リサイクル)プログラムを実施しています。昨年は、ニュージャージー州バインランドの当社施設から外部・内部の顧客向けにガラス管を出荷する際に使っていたパレットの30%を再利用しました。ノースカロライナ州ダーラムの施設では、パレットやトレーから出たプラスチックスクラップ180トンをリサイクルすることで、埋め立て処理を回避しました。また、製品の現地化により、サプライチェーンの範囲を狭めて温室効果ガス排出量を削減する取り組みも進めています」
イノベーションの伝統を受け継ぎ、新たな挑戦へ
このDeore氏を始め、サステナビリティを追求するイノベーターたちにとって、長い歴史を通じてコーニングが培ってきた伝統は、モチベーションやインスピレーションの源泉になっています。Deore氏が続けます。「私から見ると、サステナビリティは、コーニングの企業文化を流れる〝血〟であり、その精神は1人ひとりの従業員に宿り、革新的な行動を生み出しています。例えば、当社は50年前、大気浄化法の施行に伴い、自動車向けにセラミックを生かした排出制御技術の提供に乗り出し、40億トンの炭化水素と同量の亜酸化窒素(N2O)による大気汚染を抑えました」。最近のCPTの動きについてDeore氏は、「品質と効率を高めた持続可能なガラス製バイアルやチューブ類の提供も開始しています」と説明します。
前出のGilmore氏は、従業員の話題に加え、ライフサイエンス分野のサステナビリティに関して何よりも大きな手応えを感じたのは、顧客からの反響だとして、次のように語りました。「私がライフサイエンス業界で働き始めた2003年のことですが、当時、ほとんどのお客様は、研究活動から出てくる廃棄物の量についてあまり関心がありませんでした。こうした姿勢に大きな変化が見られるようになったのは、ここ5、6年のことです。研究活動が環境に与える影響について若い世代の研究者のほうが意識が高いようです」
コーニング ライフサイエンスでは、バイオ系研究でのシングルユースのプラスチック製品の消費量や廃棄物量を激減させる可能性のあるケミカルリサイクル手法をいち早く開発し、実験用プラスチック製品の死角のない循環体制の確立に向け、全社を挙げて取り組んでいます。このアプローチは、使用済みプラスチック製品の回収、基本要素レベルへの分解、未使用品に匹敵する品質の素材への再構成を柱とし、そこから、実験用品としての品質基準を満たすピペットやディッシュなどの実験ツールを新たに生み出します。
前出のVessels氏は次のように説明します。「これこそイノベーションであり、当社らしさを見事に表しています。今後有望な新しい押出成型技術も開発中です。こうした革新的な技術は世界中で大きなニーズがあることから、今後はさらにこのような技術に取り組めるようになると期待する声が高まっています。こうした技術は、私たちの未来に欠かせないと確信しています」
また、コーニングでは、持続可能な事業運営をめざすため、再生可能エネルギーや省エネ化に重点的に投資しており、米国環境保護庁(EPA)の2022年度「Energy Star Partner of the Year」に選定されました。コーニングは、イノベーションの伝統を受け継ぎ、これからもきれいな空気、きれいな水、生まれくる世代の健康増進への道を開いていきます。
サステナビリティ関連のコーニングの最新の成果を紹介しています。コーニングライフサイエンスの取り組みはこちらをご覧ください。