Meet the Sustainability Innovators at Corning

コーニングのような大企業では、イノベーションは1人の力あるいは1つのチームの力では実現しません。企業文化に深く根付き、組織のあらゆる階層から支持されていなければなりません。コーニングは、170年もの長きにわたり、刻々と変わる世界のニーズに応えるため、発明やイノベーションを推し進めてきました。そして今、この精神を気候変動にも広げ、企業活動の持続可能性強化を掲げて取り組んでいます。

サステナビリティ活動を支えるイノベーターたちが世界を変える

コーニング ライフサイエンスは2022年に「Design for Sustainability」(サステナビリティのためのデザイン)と銘打ったプログラムを試験的に実施しました。この「Design for Sustainability」について、コーニング ライフサイエンスのAdvances Surfaces and 3D担当シニアプロダクトマネージャー、Michelle Vessels氏は「製品企画から発売まで当社のイノベーション活動に目を向け、廃棄物やエネルギー使用量をどのように削減できるのか考えることが目的」と説明します。

例えば、Corning® Elplasia®フラスコは、標準的な成形・組み立て手順と比べて、プラスチックの使用量を抑え、エネルギー効率を高めた製造プロセスを使用する設計になっています。コーニングのU型胞培養フラスコは、肩が丸みのある形状のデザインを採用して、使い勝手を高めるとともに、プラスチック使用量を従来のTフラスコより約23%削減に成功しています。プラスチック使用量が少ないということは、プラスチック樹脂製造時と廃棄後の焼却時のCO2排出量の削減につながります。

Vessels氏は次のように説明します。「当社のU型フラスコの設計見直しにより、プラスチック使用量は減りましたが、力学的にはむしろ強化されています。プロジェクトは単発のアイデアとしてスタートし、フラスコ製品ファミリー全体に広がり、お客様からも好評を集めていて、プラスチック使用量を年間数百万ポンド(100万ポンド=45万3592 kg)も削減できています」

Corning EcoChoice™製品

Corning U型フラスコは、2023年9月に始まったCorning EcoChoice™プログラムの対象製品です。EcoChoice製品の製造、包装、流通は、米FTC(連邦取引委員会)のガイドラインに沿って環境に配慮した方法が採用されています。これは、あらゆる製品のサステナビリティ取り組みの表明内容が具体的であること、根拠に基づくものであること、トレースできることを意味します。

戦略担当ディレクター、サステナビリティ責任者のSarah Dowdall氏は次のように説明します。「Corning EcoChoiceは、お客様の購買行動が環境に与える影響について透明性を高める仕組みです」。また、EcoChoice製品を選定した場合の効果については、「イノベーション、スケールアップ、その他の新しいアイデアかを問わず、ライフサイエンス業界のサステナビリティの取り組みを促進することにもなります」と語ります。

EcoChoiceプログラムの対象製品となる条件は、リサイクル材含有率(プレコンシューマー材料またはポストコンシューマー材料)、発生源からの削減、環境属性証明書(EAC)、集約化のうち、最低でも1項目に適合していなければなりません。集約化とは、プラスチック廃棄物量当たりの細胞生産量が増えるように製品を設計することを意味します。

例えば、Corning HYPERFlask®HYPERStack®の多層化容器は、容器占有面積当たりの製造細胞数が増える結果、単位製造量当たりのプラスチック使用量が低減します。生産の集約化とプラスチック使用量の削減をさらに進めるため、Corning Ascent® Fixed Bed Reactor(FBR)システム(日本未発売)は、3D培養環境に近い状態を生み出し、細胞増殖に理想的な条件が整います。

小さなステップの積み重ねが大きな成果を生む

もちろん、プラスチック廃棄物削減のためにスケールアップすることが常に適切とは限りません。包装材などの要素を削減する方法はさまざまです。シングルユースの未使用プラスチックが必要なアプリケーションであっても、削減方法はあります。ちりも積もれば山となるのです。

例えば、Axygen®ブランド製品用の包装について、先ごろリサイクルを念頭にデザイン見直しを実施しました。カートンは、100%リサイクル可能な無漂白天然パルプ段ボール紙、リサイクル可能な水性塗装、従来デザインよりも少ないインク(現在、植物由来インクを使用)に切り替えました。2024年末までにすべての製品包装材が新デザインに移行する予定です。別の例としては、リロードタイプのピペットチップボックスの素材が再生ポリプロピレン材料100%に変わりました。

コーニング ライフサイエンスのオートメーションチップ&リザーバー担当プロダクトラインマネージャー、Todd C. Gilmore氏によれば、こうした最新の進歩を背景に、イノベーションの追求、廃棄物削減意欲がますます高まっています。開発チームでは、新たなブレークスルーに向けて引き続き力を注いでいます。「当社製品は、ラックやフタを中心に、可能な限り、プラスチックのリグラインド材を採用し始めています。チップ製造工程のプラスチック射出成形の際、ランナーと呼ばれる不要部分ができます。そこで、このランナーを工程上の樹脂の流れに直接戻せるように、多くの製造ラインを改修しました。また、エンジニアリングチームと共同で、ラックの射出成形に新しい手法の開発に取り組んでおり、成功すればプラスチック使用量を50%以上削減できるようになります」

Corning Pharmaceutical Technologies(CPT)のビジネスサプライマネージャー、Nitin Deore氏は、製品包装の進化など、サステナビリティへのインパクトについてさらに事例を紹介します。「CPT内部で、3R(廃棄物の発生抑制、部品などの再使用、リサイクル)プログラムを実施しています。昨年は、ニュージャージー州バインランドの当社施設から外部・内部の顧客向けにガラス管を出荷する際に使っていたパレットの30%を再利用しました。ノースカロライナ州ダーラムの施設では、パレットやトレーから出たプラスチックスクラップ180トンをリサイクルすることで、埋め立て処理を回避しました。また、製品の現地化により、サプライチェーンの範囲を狭めて温室効果ガス排出量を削減する取り組みも進めています」

イノベーションの伝統を受け継ぎ、新たな挑戦へ

このDeore氏を始め、サステナビリティを追求するイノベーターたちにとって、長い歴史を通じてコーニングが培ってきた伝統は、モチベーションやインスピレーションの源泉になっています。Deore氏が続けます。「私から見ると、サステナビリティは、コーニングの企業文化を流れる〝血〟であり、その精神は1人ひとりの従業員に宿り、革新的な行動を生み出しています。例えば、当社は50年前、大気浄化法の施行に伴い、自動車向けにセラミックを生かした排出制御技術の提供に乗り出し、40億トンの炭化水素と同量の亜酸化窒素(N2O)による大気汚染を抑えました」。最近のCPTの動きについてDeore氏は、「品質と効率を高めた持続可能なガラス製バイアルやチューブ類の提供も開始しています」と説明します。

前出のGilmore氏は、従業員の話題に加え、ライフサイエンス分野のサステナビリティに関して何よりも大きな手応えを感じたのは、顧客からの反響だとして、次のように語りました。「私がライフサイエンス業界で働き始めた2003年のことですが、当時、ほとんどのお客様は、研究活動から出てくる廃棄物の量についてあまり関心がありませんでした。こうした姿勢に大きな変化が見られるようになったのは、ここ5、6年のことです。研究活動が環境に与える影響について若い世代の研究者のほうが意識が高いようです」

コーニング ライフサイエンスでは、バイオ系研究でのシングルユースのプラスチック製品の消費量や廃棄物量を激減させる可能性のあるケミカルリサイクル手法をいち早く開発し、実験用プラスチック製品の死角のない循環体制の確立に向け、全社を挙げて取り組んでいます。このアプローチは、使用済みプラスチック製品の回収、基本要素レベルへの分解、未使用品に匹敵する品質の素材への再構成を柱とし、そこから、実験用品としての品質基準を満たすピペットやディッシュなどの実験ツールを新たに生み出します。

前出のVessels氏は次のように説明します。「これこそイノベーションであり、当社らしさを見事に表しています。今後有望な新しい押出成型技術も開発中です。こうした革新的な技術は世界中で大きなニーズがあることから、今後はさらにこのような技術に取り組めるようになると期待する声が高まっています。こうした技術は、私たちの未来に欠かせないと確信しています」

また、コーニングでは、持続可能な事業運営をめざすため、再生可能エネルギーや省エネ化に重点的に投資しており、米国環境保護庁(EPA)の2022年度「Energy Star Partner of the Year」に選定されました。コーニングは、イノベーションの伝統を受け継ぎ、これからもきれいな空気、きれいな水、生まれくる世代の健康増進への道を開いていきます。

サステナビリティ関連のコーニングの最新の成果を紹介しています。コーニングライフサイエンスの取り組みはこちらをご覧ください。