今日から研究室で実行できるサステナビリティへの3つの取り組み

多くの研究者が、研究室の“不都合な真実”に真正面から向き合っていません。ライフサイエンスは、皆さんが思うほど環境への配慮が行き届いた世界ではありません。

使い捨ての手袋やチップ、フラスコは増える一方。発泡スチロールやプラスチックのパッケージはゴミ箱に入りきらないほどあふれています。しかも、フリーザーや流しは24時間休みなく稼働しています。エネルギー消費は、平均的なオフィススペースの3倍に達するとHarvard's Green Labs Programは指摘しています。

それでも、サステナビリティ促進のために研究現場で実践できる取り組みはあります。Chemistry World誌によれば、以前にも増して多くの研究者、研究機関、メーカーがこうした活動に関わっています。では、研究室として、サステナビリティにどのように取り組めばいいのでしょうか。

サステナビリティ意識の高い研究室をめざす3つの方法

1. フリーザーの開け閉めを減らし、ドラフトチャンバーはサッシを閉め、ちょっとした配慮の積み重ねで節電につなげる

機器は、定期的なメンテナンスと手入れを怠らず、効率的な動作を維持します。研究室にあるフリーザーの扉周囲のガスケットを点検し、霜がついていたらきれいに取り除きます。ドラフトチャンバーのサッシを閉めれば省エネになり、コスト削減にもつながります。ハーバード大学で実践したところ、電気料金が24万ドル以上の節約になり、大学が排出する温室効果ガスを約330.7トン以上削減しました。

次のような小さな積み重ねでも、大きな効果につながります。

  • マスタースイッチ付きの電源タップを使用する。
  • タイマーを使って機器の電源を自動的にオフにする。
  • 夜は照明やコンピュータの電源をオフにする。
  • 使い終わったら電源を切るように、使用者に注意を促すシールを貼っておく。

2. 真空ポンプなど節水型の改良を加え、家庭で当たり前のように実践している習慣は研究室にも取り入れる

機器の軽微な改良であっても節水につながることがあります。ノースカロライナ州立大学によると、例えば真空アスピレーターの代わりに真空ポンプを使えば、1時間当たり908リットル近い節水効果があります。また同大学は、オートクレーブに節水バルブを取り付けたところ、最大90%節水できたと報告しています。冷却水の循環利用も、1回だけ水を通過させるワンパス冷却と違って節水に役立ちます。

自宅でどのように水を使っているのか考え、研究室でもその意識を働かせることが大切です。蛇口から水漏れしていたら修理します。米国環境保護庁によれば、蛇口の水漏れで無駄になっている水は、1年間に約3兆7850億リットルに達するそうです。

3. リサイクルプログラムなど環境保全の取り組みに熱心なメーカーと取引し、大口発注・一括購入を検討する

大口発注にすると、送料を節約できるだけでなく、梱包資材や配送回数も少なくなるので、サステナビリティにつながります。ただし、問題は、在庫を上手に計画しなければならない点です。研究室の在庫管理の指針(例えば「Lab Manager」が紹介している在庫管理ガイドなど)があれば、何をいつ発注すればいいかの目安になります。

サプライヤーは慎重に選びましょう。リサイクル原料から製品を製造するなど、持続可能な取り組みを行っている業者から購入することは、研究室の環境負荷軽減に効果があります。

また、不用梱包材などの無料返却プログラムを実施しているメーカーを検討することも大切です。製品包装などに使われているポリ袋や包装用収縮フィルム、発泡樹脂製ラック、チップ用ラックなど、リサイクル可能な部材を返却できるサービスを多くのメーカーが用意しています。例えば、コーニングリサイクルプログラムでは、米国のお客様を対象に、FedExまたはUPSの着払い送り状(配送料はコーニングが事前支払い済み)を提供しており、これを使ってCorning®、Falcon®、Axygen®の各ブランドの所定の製品・包装材を返却できます(注:現在、本プログラムは米国内に限定して実施されています)。

できることから実践

ある日、突然、ライフサイエンスが完全にサステナブルなものになるような画期的な解決策は、すぐに現れないかもしれません。しかし、研究室が環境に与える影響を減らすために、誰でもできることをコツコツと実践していくことは可能です。大袈裟に構える必要はありません。できるときに、できることから実践していけばいいのです。サステナビリティは、研究室の中だけで終わりではなく、各自の私生活とも連動していることを忘れてはいけません。自宅で生ゴミの堆肥化や、廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)に取り組むことができれば、その分、研究室での環境負荷を相殺する手段にもなるのです。

ちょっとした取り組みも継続すれば大きな成果。賢い行動の選択が大切です。