オルガノイドを使った疾患モデル構築

オルガノイド培養によって、研究者は生理学的に高い関連性のある系を利用してヒト疾患の研究に取り組めるようになりました。ヒトオルガノイドは、腎臓や肺、腸、脳、網膜などの臓器・器官の主な構造的・機能的特性が反映されるため、とりわけin vitroヒトモデルのニーズが満たされていない状況では、極めて有用です。

その有用性に疑いの余地はありませんが、オルガノイド培養は極めて難易度が高くなることもあります。オルガノイド培養用にさまざまなツールや手法が開発されているものの、細胞タイプ、研究領域、実験目標によっては、適切な手法の見極めが難しくなることもあります。

今回の「Ask the Expert」セッションでは、専門家の方々を招き、オルガノイドを使った疾患モデル構築に関する質問に回答していただきました。専門家の略歴は以下のとおりです。

Jie Wang博士
コーニング ライフサイエンス 開発アソシエイト

Jie Wang博士はコーニング ライフサイエンスの開発アソシエイト。コーニングのDiscovery Labware(マサチューセッツ州ベッドフォード)に10年間在籍し、複数の組換えタンパク質(リコンビナントタンパク質)ベースの製品や細胞ベースの製品の開発を統括。ボストンカレッジで博士号取得、ハーバード大学医学大学院でポスドクトレーニング修了。

Elizabeth Abraham博士
コーニング ライフサイエンス シニアプロダクトマネージャー

2008年にコーニング ライフサイエンス入社後、R&D、プロジェクトマネジメント、事業運営など、さまざまな部署で上級職を歴任。哺乳類初代細胞・幹細胞の培養に用いる先進的な細胞外基質(ECM)・表面コーティング材や実験器具など、各種新製品の開発を指揮。23本の原著論文、テクニカルノートを執筆したほか、発明者として11件の特許を取得。初期のキャリアでは、Cell Therapyで糖尿病の幹細胞治療法候補の評価に従事。現在、オルガノイドや3D細胞培養向けの製品の事業責任者として、新たなコンセプトづくりに顧客の声を反映し、世界各地での製品化に取り組む。

Franziska Wienholz博士
EMEA担当 サイエンティフィックサポートスペシャリスト

DNA損傷修復を博士課程研究テーマとし、その分子調節の知見を深めた結果、細胞がDNA損傷に対処して早期老化やがんを防ぐ仕組みの解明につながることを解明。2017年からはコーニングのサイエンティフィックサポートスペシャリストとして、セミナーやウェビナーなどのイベントで、社内外の顧客・ユーザーに対する製品サポート面の助言、実験のデザインやセットアップ、研究データの提供に従事。

Sylvia F Boj博士
Hubrecht Organoid Technology研究ディレクター

IDIBAPSにおける、膵β細胞でのMODY(若年発症成人型糖尿病)遺伝子の転写の役割解読のための機能的遺伝子解析の研究により、2006年にスペイン・バルセロナ大学の博士号を取得。

EMBOの長期フェローシップを獲得し、ポスドクフェローとしてHubrecht Institute(オランダ・ユトレヒト)に勤務。Hans Clevers教授の研究室で、代謝調節に関わるTCF7L2の役割を初めて研究。その後、ヒト膵臓がんのin vitroオルガノイドモデルを樹立。2014年、オランダ・ユトレヒトのHubrecht Organoid Technology(HUB)に移り、「嚢胞性線維症(CF)・がん」プログラムのグループリーダーに就任。2016年、HUBのサイエンティフィックディレクターに任命された博士は、製薬会社との連携を通じ、オルガノイド技術の研究成果を新薬開発に生かすとともに、治験を実施してオルガノイドによる患者応答の予測精度のバリデーションを行うという究極のゴールを掲げる。

オルガノイドの長期テストを実施したいのですが、24時間以上維持できずにいます。どうすれば培養期間を延長できるのかアドバイスをお願いします。

オルガノイド作製は細心の注意が必要な作業であり、使用する細胞やアプリケーションごとに調整と確認が欠かせません。オルガノイドの培養も同様に繊細なプロセスで、細胞やオルガノイドに特異的な必要条件を検討する必要があります。

オルガノイドの作製と長期培養の成否は、以下のようなさまざまな要因に左右されます。

  • 細胞タイプ(幹細胞か?どの臓器由来か?)
  • 培養条件(使用する培養条件、培地、ECMは?)
  • 細胞の課題(低生存率、オルガノイドの分解など)
  • オルガノイド作製後に計画しているアッセイ

これらの情報は質問の中で提供されていませんので、24時間以上に渡るオルガノイドの作製・培養に関する有益な技術資料をいくつかご紹介したいと思います。

アプリケーションノート:

細胞タイプに応じて、異なるタイプのオルガノイドを作製するプロトコールは、どこで入手できるでしょうか。

近年、Corning® マトリゲル基底膜マトリックスが基礎研究や創薬の領域でオルガノイド培養の強力な新ツールとして発展を遂げており、これをサポートするプロトコールもいくつか登場しています。タイプの異なるオルガノイドの作製支援に役立ちそうな技術資料を以下にご紹介します。

Citations on Corning Matrigel Matrix and Organoid Culture
研究論文からの引用をまとめた資料です。オルガノイドのタイプがいくつか紹介されています。

Modeling Development and Disease with Organoids
この総説では、Hans Clevers教授が数種類のオルガノイドのタイプとそれぞれの作製方法について解説します。この基礎情報を足掛かりに、具体的なオルガノイドタイプに関して文献を検索し、めざすアプリケーションに最適なプロトコールを見つけることをお勧めします。

オルガノイドモデルとアプリケーション
オルガノイドの各タイプに関する解説や、オルガノイド作製手法を扱った画期的論文の紹介は、コーニング ライフサイエンスのオルガノイドモデルとアプリケーションのページをご覧ください。

特定オルガノイドの関連資料

消化器オルガノイド
Single Lgr5 Stem Cells Build Crypt–villus Structures in vitro Without a Mesenchymal Niche

脳オルガノイド
Cerebral Organoids Model Human Brain Development and Microcephaly

前立腺オルガノイド
Identification of multipotent luminal progenitor cells in human prostate organoid culturesKIDNEY ORGANOIDS
Directing Human Embryonic Stem Cell Differentiation Towards a Renal Lineage Generates a Self-Organizing Kidney

卵巣オルガノイド
Long-term organoid culture reveals enrichment of organoid-forming epithelial cells in the fimbrial portion of mouse fallopian tube

肝臓・膵臓オルガノイド
Culture and establishment of self-renewing human and mouse adult liver and pancreas 3D organoids and their genetic manipulation

腸オルガノイドの培養に、Corning マトリゲル基底膜マトリックスの代替となる合成マトリックスを探しています。お薦めの製品はありますか。

オルガノイド培養にマトリゲル基底膜マトリックスに代わる合成品を評価したいという関心が高まっています。さまざまな研究から、アルギン酸と機能性ポリエチレングリコール(PEG)の組み合わせで、ヒト多能性幹細胞由来腸オルガノイドや健常マウス腸組織から採取した臓器前駆細胞をサポート可能なことがわかっています。しかし、硬度を調整し、合成ハイドロゲルに適切な機能性を持たせる必要があります。オルガノイド形成を成功させるには、生化学的要素と構造支持体の双方を制御することが大切です。こうした手法を取り上げている文献のリンクを紹介します。

Synthetic Hydrogels for Human Intestinal Organoid Generation and Colonic Wound Repair

この文脈で言えば、このような合成製品の多くは、オルガノイド培養を促進する能力の面で、マトリゲル基底膜マトリックスほどの頑健性がない点に注意することも大切です。例えば、合成処方では、健常腸組織由来のオルガノイド形成はサポートできても、患者由来のオルガノイドには対応できないかもしれません。オルガノイド形成に伴うさまざまな形態(出芽型か嚢胞型か)に対応できない可能性があるからです。こうした多能性幹細胞(PSC)由来オルガノイドの例では、マトリゲル基底膜マトリックスでPSCを増殖してから合成環境に移行しています。したがって、マトリゲル基底膜マトリックスから合成品への完全な切り替えはまだ確認されていません。

コーニングでは先ごろ、新たにCorning マトリゲル基底膜マトリックス オルガノイド形成用を発売しました。腸オルガノイドの培養に必要な生化学特性、多孔性、硬度に最適化されたECMです。

スケーラビリティに興味があります。創薬にも耐えられるようにするためには、かなり高いスループットが求められます。スループットをどう上げればいいのか、ご意見をお聞かせください。

オルガノイドは、その性質上、創薬の優れた基盤になります。ご質問にもあったように、ハイスループットスクリーニング(HTS)環境にオルガノイドを使う場合、大量のオルガノイドが必要になります。現時点では、この領域にはかなりの人手を伴う作業や時間などの課題がありますが、オルガノイドの増殖法を簡潔にまとめたプロトコールがあります。

アプリケーションノートと総説:

スケーラビリティという意味では、オルガノイドはシングルウェルプレートに播種できます。創薬スクリーニング用にオルガノイドを用意する場合、オルガノイドをさらに1:1に分けて1〜2日かけて再播種するように分割すれば、オルガノイド数を飛躍的に増やすことができます。こうすると、オルガノイドが分裂のストレスから回復する時間が確保できるため、スクリーニング作業に適切なサイズ(20〜70 µm)に達します。すべての単一細胞が常にオルガノイドのように増殖できるわけではないため、私たちは創薬スクリーニング用にオルガノイドを単一細胞として播種した経験はあまりありません。スクリーニング用にオルガノイドを操作中は、洗浄培地にRhoKi(Rhoキナーゼ)10 µmを添加することをお勧めします。こうすると、ECMに包埋されていないオルガノイドに生じるストレスが低減されます。材料をすべて回収する際にオルガノイドをオンアイスにすることはお勧めできません。

スクリーニング用にスループットを高めるには、Corning マトリゲル基底膜マトリックスでコーティングしたHTS用マイクロプレート(384ウェルプレートなど)にオルガノイドを置きます。その際、サンドイッチ法か包埋法を使用します(SPC-356255-Gの使用については、コーニングのガイドラインを参照)。また、参考文献として「Assay Establishment and Validation of a High-Throughput Screening Platform for Three-Dimensional Patient-Derived Colon Cancer Organoid Cultures」も挙げておきます。この文献は、大腸がん患者由来の3Dオルガノイド培養を目的とした384ウェルフォーマットでのハイスループットスクリーニングプラットフォームの確立・検証を報告しています。

3日経過しても肝細胞のオルガノイド形成が見られないのですが、もう少し待つべきでしょうか、それともやり直した方がいいでしょうか。

通常、3日間というのは非常に短い期間ですが、最初に用意した材料(マウスかヒトの肝細胞)の性質にもよりますし、単離後に肝細胞を単一細胞として播種したか、細胞塊として播種したかによっても異なります。単一のヒト肝細胞の場合、肝細胞オルガノイドが観察され始めるまでに1週間以上かかります。

従来の2D単層の培養条件では、PHHは肝表現型を急速に失います。一方、3D培養でのPHHは、生存能と機能を数週間にわたって維持できます。

創薬開発研究での3D肝臓スフェロイドモデルをサポートするため、コーニングではCorning スフェロイドマイクロプレートを使った3Dスフェロイドに対応する初代ヒト肝細胞を販売しています。アプリケーションノート「3D Primary Human Hepatocytes (PHH) Spheroids Demonstrate Increased Sensitivity to Drug-induced Liver Injury in Comparison to 2D PHH Monolayer Culture」に掲載されているプロトコールでは、PHHが小細胞隗となり、細胞凝集塊に成長し、やがて6〜7日でスフェロイドを形成します。PHHスフェロイドはひとたび形成されると、形態やサイズの測定結果からわかるように4週間以上安定状態を維持します。

この結果から、スフェロイド作製には最大7日かかることがわかります。

しかし、ここで取り上げたスフェロイドは、PHHから作製されたものです。オルガノイドは、例えば単離した導管細胞から作製できます。「Culture and establishment of self-renewing human and mouse adult liver and pancreas 3D organoids and their genetic manipulation」という文献では、単離した導管細胞をCorning マトリゲル基底膜マトリックスで培養するオルガノイド作製プロトコールが紹介されています。この方法では、培養7日目にオルガノイドが観察されています。

どちらの方法でも、スフェロイドやオルガノイドの形成には最大で7日かかります。そこで、ご質問への回答としては、その細胞培養を継続し、7日目にオルガノイドが存在するか再度確認してみることをお勧めします。

Hans Clevers教授の論文を参考にした培地で肝細胞オルガノイドを培養しています。培地はどのくらいの頻度で交換すればいいのでしょうか。2〜3日おきに培地交換していますが、交換直後にオルガノイドの一部が死滅していることに気づきました。

オルガノイド形成を促進するには、2〜3日おきの培地交換をお勧めします。使用する化合物の中には、37°Cで数日経ってもあまり安定しないものもあります。培地交換直後にオルガノイドの死滅が観察されたということは、培地組成の見直しか最適化が必要です。また、組成にまったく問題がないとすれば、オルガノイドの死滅は想定外の事態ですから、試薬の最終濃度を最適化する必要があるかもしれません。

がん細胞スフェロイドからオルガノイドを生み出すプロトコールはありますか。

がん細胞からのオルガノイド作製というと、どこか矛盾しているような印象を受けますが、がんに見られる不均一性を研究する目的や個別化医療の進展のために、この手法が研究者の間で注目を浴びています。がんオルガノイドは、文献(Patient-derived lung cancer organoids as in vitro cancer models for therapeutic screening)に示されているように、臓器機能を再現し、臓器特異的マーカーの発現があります。

患者のがん生検からのオルガノイド作製を説明する文献もいくつかあります。その一例としては、Cancer Sample Biobanking at the Next Level: Combining Tissue With Living Cell Repositories to Promote Precision Medicineが挙げられます。

スフェロイドからのオルガノイド作製に関する情報は、おそらくスフェロイドの性質もあって、もっと少なくなります。ただし、腸のスフェロイドであれば、文献(A process engineering approach to increase organoid yield)でオルガノイドの形成が可能であることが報告されています。

現在、多段階の長期実験に関わっており、オルガノイドを凍結保存してから、約1カ月後に解凍する必要があります。そのための最良の方法を検討しているのですが、アドバイスをお願いします。

オルガノイドの凍結保存は、オルガノイドを利用した治療法の改善や大量の細胞採取に向けて、ますます重要になります。剥離剤使用の有無による腸オルガノイドの凍結保存について解説した文献(Long-term culture-induced phenotypic difference and efficient cryopreservation of small intestinal organoids by treatment timing of Rho kinase inhibito)をご覧ください。

興味深いことに、マウスオルガノイドとヒトオルガノイドのどちらを使うかによって、凍結保存のプロトコールが異なることがあります。ヒトオルガノイドとマウスオルガノイドの凍結保存も想定したオルガノイド培養について解説しているプロトコールハンドブックもあります。

さらに、Tuveson研究室のプロトコールのステップ1に沿って小さなサイズ(30〜40 µm)に処理し、55%のECMの液滴で1〜2日かけて播種した場合、オルガノイド解凍後の細胞生存率に大幅な向上が観察されました。この播種ステップでは、分裂のストレスからオルガノイドを回復させるだけでなく、凍結直前に増殖状態を活性化します。ヒトオルガノイドモデルでも、例えば1日でサイズの増大が視覚的に観察されるオルガノイド(大腸)もあれば、3日かかるオルガノイド(肺や乳房)もあります。ステップ3以降の手順に従って、ECM液滴から回収して凍結します。ペレットにECMが存在してもオルガノイドの生存に悪影響はないことが観察されたため、ECM除去のためにさらに洗浄する必要ありません。ペレットからオルガノイドを含まないECMの吸引をお勧めします。

オンチップ培養にあまり詳しくありません。通常の培養と比べてどのような違いがあるのですか。

もっと複雑なオルガノイドモデルで研究する場合、ECMや液体輸送、制御式培地交換、空間分離など、考慮すべき重要な要因が多数あります。このような高度なモデルの場合、細胞外基質に「オーガンオンチップ」方式を組み合わせると有用性が高まる可能性があります。 チップがいわばスキャフォールド(足場)の役割を担うため、コンパートメントの形成に役立ちます。

チップを使ったオルガノイド培養の例を以下にご紹介します。

オルガノイド培養のコスト、あるいは所要時間や研究室のリソースの面はいかがでしょうか。

2Dにしても3Dにしても、細胞培養プロトコールには「標準」と言えるものが存在せず、フォーマット、量、プロトコールを直接比較できないため、回答が非常に難しい問題です。一般的に、2D細胞培養製品よりも3D細胞培養製品の方が先進的な製品を使用するので、その意味では、3D細胞培養の直接のコストは、従来の単層培養実験の場合よりも大きくなりがちです。さらに、シンプルな単層であれば、2〜3日以内に形成されます。一方、オルガノイドのような3D細胞構造の形成には、最大で数日かかりますが、この期間は細胞培養担当者にとって特に厄介な作業はありません。

しかしアプリケーションによっては、従来の2D実験では、3D細胞培養の実験と同じように充実した結果には至らないこともあります。3Dで増殖した細胞の方が、組織や臓器でのin vivo挙動を厳密に模倣するからです。創薬では、3D細胞培養環境の方が生物学的に関連性の高いモデルになるため、予測性に優れた実験結果や新薬候補化合物検査の成功率向上、上市までの期間短縮、開発コストの削減につながります。研究室での3D細胞培養のセットアップやオルガノイド作製に関心をお持ちでしたら、3D細胞培養へのハードルを下げてくれる製品やソリューションを使ってはいかがでしょうか。例えば、Corning スフェロイドマイクロプレートCorning マトリゲル基底膜マトリックス オルガノイド形成用などはオルガノイド培養に活用できます。

3D細胞培養に関するその他のリソース

オルガノイドモデル

スフェロイドモデル

組織モデル

オルガノイド培養は、マトリックスやスキャフォールド(足場)に依存します。特にCorning マトリゲル基底膜マトリックスには、オルガノイドの増殖・分化に寄与する多くの増殖因子が含まれています。オルガノイド培養を促進できる代替の低生理活性マトリックスはありますか。

Hubrecht Organoid Technology(HUB)では、オルガノイドモデルの増殖をサポートするECMとしては、これまでのところCorning マトリゲル基底膜マトリックスが最良と判断しています。オルガノイド増殖に影響しかねない増殖因子や他のタンパク質・分子の存在によって生じる変異性を抑制するため、私たちは必ず、グロースファクターリデューストフェノールレッドフリーのマトリゲル基底膜マトリックスを使うようにしています。生物学的細胞外基質に代わる合成品を探してはテストしてみましたが、今のところマトリゲル基底膜マトリックスに匹敵するレベルでオルガノイド形成を促進する製品に出会ったことはありません。

コーニングは、オルガノイド研究に必要な再現性や一貫性をサポートするため、先ごろマトリゲル基底膜マトリックス オルガノイド形成用を発売しました。オルガノイドの増殖・分化を促進することが確認された最適化組成を採用し、ロットごとにオルガノイドのワークフローを促進する特性である基質硬度が測定されています。マトリゲル基底膜マトリックス オルガノイド形成用は、健常細胞と疾患細胞のそれぞれに由来するオルガノイドを順調に形成できることが実証されています。各ロットは、一般にオルガノイド培養に用いられる安定した「3Dドーム」構造を形成することも事前に確認されています。

オルガノイド培養に当たって、無血清培地と血清含有培地の使い分けについて教えてください。

所定の条件下でオルガノイドを増殖する際には、血清の使用を控えることをお勧めします。Hans Clevers研究室が作成した培地プロトコールはいずれも、Wnt3aの存在が欠かせない組織特異的オルガノイドモデル(ヒト腸モデルなど)の場合には血清が含まれています。Wnt3a含有培地は、5% ウシ胎児血清(FBS)を含有し、活性Wnt3aを生成する最も頑健性の高い方法とされています。幸いにも、「Surrogate Wnt」(スタンフォード大Garcia研究室)など、無血清Wnt3aの新たな原料が登場し始めており、無血清でオルガノイド増殖が可能です。

拡散速度とオルガノイドの健康状態・サイズに関して、オルガノイドを大きく培養するにはどのような培養方針が重要ですか。同様に、オルガノイドの長期培養を促進し、血管新生化を模倣する戦略についてはいかがでしょうか。

拡散速度でオルガノイドのサイズと健康状態を調節できます。一定のサイズに到達した時点で、オルガノイドは増殖を停止し、壊死コアを形成します。このプロセスは、増殖性のステム様状態から非増殖性の分化状態への転換、さらにオルガノイドコアの壊死と関連がある可能性があります。最終分化はオルガノイドのサイズを制限する戦略になり得ますが、オルガノイドの健康状態のためには、早期分化の恐れがある壊死コアの防止が極めて重要です。壊死コア防止に役立つ技術として論文で議論されているのが、オルガノイド周囲への養分の灌流・フローです。オルガノイドの血管新生は、長期培養の重要な条件です。そのために検討されている重要なプラットフォームとしては、系に内皮細胞を播種して血管形成(血管新生)を可能にすることや、バイオプリンティングで細胞の構造・配列を操作することが挙げられます。