接着細胞培養のスケールアップ:大型容器への移行
多くの研究グループがスケールアップの最初のステップで、一般的なT-150フラスコからCorning® CellSTACK® 培養チャンバー、Corning HYPERFlask® セルカルチャー容器、Corning HYPERStack® セルカルチャー容器など、大型の容器への移行が必要になります。CellSTACK培養チャンバーは、チャンバー数が1、2、5、10、40のサイズがあり、最大25,440 cm²の培養面積を確保できます。CellSTACK製品はいずれも、コーニングが提供する閉鎖系用のキャップやチューブを利用して閉鎖系に転換できます。閉鎖系に移行することにより、生産段階で不可欠なGMP(医薬品の製造・品質管理に関する基準)管理体制への移行が促進されます。
HYPERFlask容器とHYPERStack容器は、画期的なガス透過性フィルムを使用しており、さらにコンパクトなソリューションを実現しています。どちらの容器も外側は強固なポリスチレン層を採用していますが、培養表面はガス交換に対応した超薄型ポリスチレンフィルムです。HYPERFlask容器は従来のT-175フラスコと全体的なサイズや形状が同じですが、10層構造の超薄型ポリスチレンフィルムを採用しているため、1,720 cm²の培養表面が利用できます。HYPERFlask容器は、手作業にも自動化にも対応しています。
HYPERStack容器は、出荷時から閉鎖系用となっており、12段または36段があり、培養表面積はそれぞれ6,000 cm²、18,000 cm²となっています。HYPERStack容器の設置スペースはCellSTACK培養チャンバーと同様ですが、CellSTACK-40が高さ72 cmであるのに対して、HYPERStack-36は高さがわずか28 cmです。HYPERStack容器同士をシングルユースのマニフォールドで接続することで、ハンドリング時間を短縮することができます。5アーム型マニフォールドを使えば、HYPERStack 36段容器×4個のスタックを結合できます。
Corning 自動マニピュレータープラットフォーム(日本未発売)はHYPERStack 36段容器×6個に対応し、合計108,000 cm²(10.8 m²)の培養面積を提供することで、リキッドハンドリングを効率化し一貫性を向上します。 また、CellSTACK-40容器×3個にも対応し、合計76,320 cm²(7.632 m²)の培養面積を実現します。
接着細胞培養の早期スケールアップの適合性を確保
CellSTACK培養チャンバー、HYPERFlask、HYPERStackの各容器を使用する場合、従来の2D細胞培養手法に比較的簡単な変更を加える程度で済みます。生産スケールが拡大すると、ある程度の検証や変更が必要になりますが、プロセス自体はかなりわかりやすいため、プロセス開発の期間が限られている場合に適した選択肢となります。研究開発段階では、通常、ポリスチレン表面で細胞を2D培養します。こうした表面は組織培養用に処理されていて、細胞接着を促すコーティングがされている場合もあります。研究プロセスの初期に、使用する表面コーティングや細胞、培地、追加要素(培地、血清、添加剤を含む)が、治験など下流のステップに適合するかどうか確認しておく必要があります。また、細胞や細胞製品の回収方法も考慮しておきます。変更が必要な場合には、後回しにせずに早めの実施を検討します。