Lab Essentials – Tips for Making your Cell Culture Work More Efficient, Productive, and Easier | Corning

多くのライフサイエンス研究室の重要な仕事のひとつである細胞培養。その作業を少しでも楽にしたり、ベンチに向かう時間の生産性を高めたりするベストプラクティスについて、改めてじっくり考える機会を持ってみてはいかがでしょうか。

ベンチに向かう時間を充実させるためにどのような対策を講じることができるのでしょうか。今回のベストプラクティスの記事では、コーニング ライフサイエンスの米国サイエンティフィックサポート マネージャー、Kyung-A Song博士を迎え、人間工学に基づく使いやすさ、ベンチのセットアップ、細胞培養の段取り、時間節約の機会、さらにはこうした取り組みを支える適切なツールや製品の準備などの重要ポイントについて聞きました。

クリーンで整理整頓された作業環境

わかりきったことではありますが、クリーンで整理整頓されたベンチがいかに重要なのか、折に触れて意識する必要があります。無菌性が大切なことに誰も異論はないはずです。当然、ベンチが散らかったままになっていれば、何らかのコンタミネーションをうっかり引き起こすだけでなく、自分が担当している培養物にまでコンタミネーションを発生させる恐れがあります。

意外に見落としがちなのが、インキュベーターです。ここは非常にクリーンに保つことが絶対条件です。定期的なメンテナンスのスケジュールを設定し、湿度維持に使用する加湿トレイは、一般にコンタミネーションの温床とされるだけに、定期的に徹底した清掃が欠かせません。

消耗品はすぐに使えるように準備

ベンチを整理整頓してクリーンに保ち、プレートやディッシュフラスコ、細胞培養培地、ピペットやピペットコントローラーといったリキッドハンドリングツールなど実験に不可欠な製品・ツールをしっかり備えておくことは、作業効率化の一助となり、作業中にベンチを離れずに済みます。さらに、ベンチに備える消耗品や機器は必要最小限にとどめておけば、不必要な実験用品が汚染されたり、汚染を持ち込んだりする恐れもありません。

ベンチはレイアウトと人間工学に基づく使い勝手がポイント

作業スペースはレイアウト次第で大きな差が出ます。右利きか左利きかといった簡単なこともしっかり考慮すれば、自分のニーズに合った作業スペースをセットアップできます。これは回り回って作業の効率化につながります。ベンチで何かを取ろうと利き手とは反対側に手を伸ばす動きが頻繁にあると、うっかり液体をこぼすといった失敗も起こりがちですが、レイアウトの工夫で回避できます。

こうした取り組みを支援するのが、コーニングから発売されている便利なリキッドハンドリング機器です。日々の研究業務の無駄がなくなり、コンタミネーションのリスクも軽減できます。携帯型のCorning® Stripettor® Pro ピペットコントローラーには、人間工学に基づく使いやすいスタンドが付属しており、ピペット装着の有無にかかわらず簡単にセットできます。ピペットに液体が残っていても、このスタンドでは、やや傾斜してセットされるため、装置への液体の入り込みやコンタミネーションの発生を防止できます。

微量サンプルには、シングルチャンネルかマルチチャンネルのピペッターにフィルター付きピペットチップを組み合わせた使用をお勧めします。多彩なピペッタースタンド(リニア型、カローセル型)があり、ピペッターの保管が簡単になるため、必要なときにすぐに手に取ることができます。ピペットチップは、コンタミネーションを最小限に抑えるため、蓋付きラックに適切に保管することが極めて重要です。Corning Lambda™ EliteTouch™ ピペッターとDeckWorks™ ピペットチップをラックで活用すれば、簡単に取り出すことができます。コーニングによるこの総合的なアプローチの狙いは、研究者のために効率化を進め、清潔な研究環境を維持することにあります。

細胞培養の準備

何よりも細胞培養の準備段階では、良好な細胞が必要です。ウイルスやマイコプラズマなど生物起源のコンタミネーションのない培養を開始することが極めて重要です。

そこで、ほとんどの研究者が標準プロトコールを守っています。例えば、プレートでの接着細胞の培養プロセスは次のようになります。

1.気相式窒素タンクからバイアルを取り出します。
2.37°Cのウォーターバスでバイアルを融解します。
3.次に洗浄緩衝液を加え、再び遠心沈殿させてペレットにし、凍結保存培地を完全に取り除きます。凍結保存培地にはDMSOが含まれていて細胞傷害性があるため、遠心分離で凍結保存培地をすべて取り除きます。
4.細胞の培養・選択に使用する調製済み培養培地に細胞ペレットを懸濁させます。コーニングでは、細胞種や具体的な研究目的に応じて使用できる培地を幅広く取りそろえています。
5.細胞を播種し、3〜4日後に培養フラスコに接着したら、古い培地を吸引して新鮮培地を加えます。
6.細胞生存率を確認し、細胞が80〜85%のコンフルエントな状態になるまで待ちます。
7.細胞を回収するときは、古い培地を吸引し、洗浄バッファーを加えてから再度吸引します。細胞にトリプシンなどの解離試薬を加えてから、37°C、CO2濃度5%で短時間インキュベートします。
8.インキュベーション後、血清含有培地で解離試薬を不活化し、再度、洗浄のステップを実行します。
9.次の継代を行いたい場合、培養物を分割するか、凍結保存培地に細胞を懸濁してから凍結保存容器に戻して凍結の準備をします。

大スケールプロジェクト

製造の準備段階など大スケールのプロジェクトの場合、Corning HYPERFlask®HYPERStack® セルカルチャー容器などでスケールアップできます。どちらの製品も培地上部の空間を完全に排除できるため、スペース効率に優れており、細胞が酸素透過性かガス透過性のメンブレン上で増殖可能なことから、高密度充填またはコンパクトな細胞培養系が実現します。

例えば、HYPERFlask容器は、占有スペースこそT175フラスコと同じですが、10層構造のため、T175フラスコ1個で培養する場合に比べ、同じ占有スペースで10倍(培養面積1,720 cm2)の細胞を培養できます。また、培養面積が175 cm2しかない従来のフラスコを10個も扱う場合と比べ、フラスコ1個だけのハンドリングで処理時間とインキュベーター保管スペースを削減できるため、時間とスペースの節約につながります。HYPERFlask容器は、自動化にも対応しており、バーコード付きで、Automation Partnership SelecT™やCompacT™ SelecT™細胞培養系と互換性があり、さらに効率を高めることも可能です。

HYPERFlaskの培養を36段のHYPERStackにスケールアップすると、同等の占有スペースで従来の細胞培養容器の5倍の培養表面積を確保できます。これは閉鎖系のため、開放しながらの液体操作がなく、コンタミネーションのリスクを大幅に抑えられます。複数のサイズがそろっていてスケール変更が可能なため、スケールアップとスケールアウトの両方に対応します。人間工学に基づく設計により、操作やハンドリングが容易です。

時間を節約

培養を効率化する方法は多岐にわたり、時間と労力の節約につながるさまざまな手段があります。

多量のリキッドハンドリングの場合の選択肢

多層型容器では、多量の培地を移す必要があるため、多量のリキッドハンドリングが重要になります。そのような作業に役立つのが、5 mL〜100 mLの送液に適したCorning Stripette® ピペットです。多量培地の送液が可能で、作業時間が短縮されるため、操作担当者の負担も軽減されます。各種サイズがそろっており、包装形態もバルク包装と滅菌の個包装が用意されています。また、コーニングでは、多彩なピペットチップを取り扱っています。形状はフィルター付き、フィルターなしがあり、サイズは5 μL〜1000 μLまでそろっています。

特殊マイクロプレート

コーニングは、時間節約の提供を特徴とする各種マイクロプレートを提供しています。

  • 各種細胞外基質をコーティング済みのマイクロプレート:プレートへの表面処理に時間をかける必要がありません。
  • スフェロイドマイクロプレート:3Dの多細胞スフェロイドをひとつのマイクロプレートで増殖・分析できる特殊設計です。超低接着(ULA)表面のため、均一で再現性に優れた3D多細胞スフェロイド形成が可能です。ウェル自体は光学的高透明の丸底ですが、マイクロプレート本体が不透明な黒色のため、ウェル間のクロストークを遮蔽します。このため、1つのマイクロプレート上でスフェロイドの培養からアッセイまで対応でき、別のマイクロプレートに移す必要がありません。
  • ハイコンテントスクリーニングマイクロプレートは、光学特性に優れた設計で、イメージングシステムを使ったハイコンテントの細胞アッセイに最適です。フラットな光学的高透明表面を採用し、オートフォーカス時間が短く、スループットが向上するため、細胞を用いたハイスループットアッセイに最適です。

細胞カウントの自動化

自動細胞カウントは、手作業の細胞カウントに比べてはるかに高速でユーザー依存度も低くなりますが、多くの研究室では、使い捨てカウントスライドのコストを嫌い、依然として手作業のカウントに頼っています。

Corning セルカウンターは、手作業と自動化の双方のメリットを生かした初の自動細胞カウンターです。オンライン画像処理による高速性、クラウド型機械学習アルゴリズムによる正確性、一般的で再利用可能なガラス製血球計算盤使用による低コストを特長とし、消耗品が不要です。

サステナブルな製品

理想的な研究室のセットアップについてこれまでに紹介してきたポイントに加え、サステナブルな製品の重要性についても考えておく必要があります。コーニングは、環境に配慮した製造・包装・物流工程から生まれる製品をそろえた新プログラム、EcoChoice™プログラムを開始しました。このプログラムに該当する製品は、米国FTCの指針に適合しており、このことは、製品のサステナビリティ宣言に具体性があり、エビデンスに基づいていて、追跡可能であることを意味します。

Corning EcoChoiceプログラム対象製品は、以下の条件をひとつ以上満たさなければなりません。

  • リサイクル材含有率(プレコンシューマー材またはポストコンシューマー材)
  • 原料削減
  • 集約化:占有スペースを削減しつつ細胞産生量が増加するように製品を設計し、アウトプット単位量当たりのプラスチック量の削減につなげること。
  • 再生可能エネルギー・RECs
  • 証書

例えば、コーニングは、75 cm2のCorning 細胞培養用フラスコの設計を見直し、製品に使用するプラスチック量を23%削減しました。肩部分が丸みを帯びた新設計のフラスコは、使い勝手の良さにもつながり、研究者にとっても環境にとってもメリットがあります。