2D細胞培養法は、実際の組織を完全には再現できないため、実際の組織機能について部分的かつ不完全な考察しか得られません。それに対し3D細胞培養は、それらの組織を直接培養する試みであり、より複雑で高い研究精度を意味しています。
3D細胞培養は、ウイルスがin vivoで遭遇する物理的および生化学的環境をより良く再現します。これにより、トキソプラズマから結核菌まで病原体の感染性作用に関する新しい知見が幅広く得られています。
Nature誌に掲載された最近の研究では、感染性呼吸器疾患の研究においてヒト気管支や小気道の細胞を模倣した3D細胞培養モデルの有用性に注目しています。彼らの研究では、既存の2D細胞培養モデルだけでは困難で時間のかかる結果を、3D細胞培養モデルによって生物学的に妥当な結果(呼吸組織における宿主病原体相互作用)を効率的に得ることができる事を発見しました。
オランダのHubrecht Organoid Technology社 (HUB)では、現在ヒト肺オルガノイドを用いた呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)による影響の研究など、オルガノイドモデルを用いた感染症の研究を行っています。
American Society for Microbiology誌が発表した最近の研究では、3D細胞培養モデルは一般的に「感染症のメカニズムや抗菌療法を研究するための、より生理学的に妥当かつ予測可能なフレームワークを提供してくれる」と述べています。これは、疾患機序に対抗する、またはそれを阻害する化合物をより早く特定し、感染症の治療法をより早く開発することを意味します。
細胞培養を3Dで行うために必要な専門的ツールは、これまで以上に簡単に入手できるようになっています。これらのツールには、細胞外マトリックスを模倣した物理的スキャフォールドと適切な増殖因子を同時に提供するCorning® マトリゲル基底膜マトリックスや、スキャフォールドを用いずに3D培養を可能とする超低接着表面などのより新しい技術が含まれます。
3Dスフェロイド培養物の生成とアッセイのためのハイスループットかつ高密度の技術は、3D細胞培養による研究の精度が、従来の2D細胞培養のハイスループット技術にすぐに追いつくことを示しています。