3D Cell Culture Models Are Driving the Fight Against Infectious Diseases Like Coronavirus | Corning

コロナウイルスのパンデミックはウイルス科学をニュースの1面にしていますが、その報道の大部分はウイルス感染の統計学的予測に焦点を当てている傾向があります。ウイルス生物学を理解し、その理解を新しい治療やワクチンの開発に役立てようとする研究はあまり注目されていません。

3D細胞培養やその他の新しい技術を思いのままに使えるようになることで、研究者はウイルスや細胞科学をより速く、より予測可能な形で進めることができるようになります。3D細胞培養モデルは、これらの生物学的システムをより予測しやすくし、in vitroでの結果をより簡単にヒト患者に応用することができます。

3D細胞培養モデルは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような感染症との闘いに欠かせない技術の1つです。

改善の必要な重要ツール

感染メカニズムであれ細胞に生じる変化であれ、ウイルスを研究するには、そのウイルスに関連する細胞や組織を特定することから始まります。ウイルスが作用する最も重要な生物学的環境を特定し、それに適したモデルがあれば、科学者たちは研究を始めることができます。研究者はウイルスをその変異種とともに分離し、自然界と同じような挙動を示すかを確認する必要がありますが、初期段階ではヒトを用いた実験は当然行うことができません。

結果として、疾患モデル、薬物標的の同定および検証、薬効プロファイリングおよび毒性評価を含む疾患研究のほぼすべての段階で様々な種類の細胞培養が常に行われてきました。それにより、実際のヒト被験者を危険にさらすことなく、ヒト様モデルで医薬品開発が可能になるからです。

しかし、従来の2D細胞培養モデルは、これまでと同様に欠かせないツールではあるものの、常に多くの制限がありました。

歴史的に研究者たちは2D細胞培養法について研究してきましたが、プレートに播種した細胞と生体組織では明らかに違いがあるため、研究には手間がかかり、初期段階での間違いを起こしやすいのです。Frontiers in Pharmacology誌に発表された研究によると、現時点で全臨床試験の半数以上が治験の第2相または第3相で脱落しています。見込みのある新薬候補は、早期に有望な結果が得られるため治験の次の段階に移行しますが、研究の初期段階で使用したin vitro細胞モデルで予測できなかった副作用のために、その後、新薬開発候補から脱落してしまいます。

これでは、貴重で限りある資源と資金を無駄にしてしまいます。早期の医薬品開発や不適切な候補の識別に利用できるより現実的なモデルがあれば、新薬がより迅速、かつ低コストで提供できるようになります。

より効率的で現実的なモデル

2D細胞培養法は、実際の組織を完全には再現できないため、実際の組織機能について部分的かつ不完全な考察しか得られません。それに対し3D細胞培養は、それらの組織を直接培養する試みであり、より複雑で高い研究精度を意味しています。

3D細胞培養は、ウイルスがin vivoで遭遇する物理的および生化学的環境をより良く再現します。これにより、トキソプラズマから結核菌まで病原体の感染性作用に関する新しい知見が幅広く得られています。 

Nature誌に掲載された最近の研究では、感染性呼吸器疾患の研究においてヒト気管支や小気道の細胞を模倣した3D細胞培養モデルの有用性に注目しています。彼らの研究では、既存の2D細胞培養モデルだけでは困難で時間のかかる結果を、3D細胞培養モデルによって生物学的に妥当な結果(呼吸組織における宿主病原体相互作用)を効率的に得ることができる事を発見しました。 

オランダのHubrecht Organoid Technology社 (HUB)では、現在ヒト肺オルガノイドを用いた呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)による影響の研究など、オルガノイドモデルを用いた感染症の研究を行っています。

American Society for Microbiology誌が発表した最近の研究では、3D細胞培養モデルは一般的に「感染症のメカニズムや抗菌療法を研究するための、より生理学的に妥当かつ予測可能なフレームワークを提供してくれる」と述べています。これは、疾患機序に対抗する、またはそれを阻害する化合物をより早く特定し、感染症の治療法をより早く開発することを意味します。

細胞培養を3Dで行うために必要な専門的ツールは、これまで以上に簡単に入手できるようになっています。これらのツールには、細胞外マトリックスを模倣した物理的スキャフォールドと適切な増殖因子を同時に提供するCorning® マトリゲル基底膜マトリックスや、スキャフォールドを用いずに3D培養を可能とする超低接着表面などのより新しい技術が含まれます。

3Dスフェロイド培養物の生成とアッセイのためのハイスループットかつ高密度の技術は、3D細胞培養による研究の精度が、従来の2D細胞培養のハイスループット技術にすぐに追いつくことを示しています。

次の10年の課題を乗り越えるために

科学は1つの成功の上に長い間あぐらをかいているわけではありません。既に研究者たちは3D細胞培養技術を使ってオーガン・オン・チップ上にオルガノイドのネットワークを形成しています。これらの構造は、比較的迅速に利用できる研究ツールでありながら、包括的な臓器特異的モデルを作成することができます。将来的には、バイオプリンターで新しく、より優れた3D細胞培養物を簡単に設計、作製できるようになるでしょう。

コロナウイルスや従来の抗ウイルス薬に対抗できる可能性のある類似ウイルスなどの感染症との戦いでは、医師や研究者はこれまで以上に優れたツールを必要としています。科学者たちは、結果の正確性を損なうことなく、医薬品開発プロセスのすべてのステップを迅速に進める必要があります。最新の3D細胞培養モデルと専門技術があれば、実現に必要なツールは既に揃っているのかもしれません。