小細胞肺がん脳転移モデルとしての3D細胞培養
NCIがんシステムセンター(オランダ・バンダービルト)のサイエンティフィックセンターマネージャー、Amanda Linkous博士は、小細胞肺がん(SCLC)の生態研究で3D細胞培養が有効であることを解説しました。SCLC患者の半数以上が脳転移を発症し、5年生存率5%未満となっています。SCLCは悪性度も不均一性も極めて高く、肺がん全体の15%ほどを占めています。
以前はSCLC転移の研究にはin vivoマウスモデルが必要でしたが、マウス生存中でも、腫瘍浸潤に対して「ヒト」と同じ微小環境を再現することはできません。しかも、腫瘍細胞を移植しても、通常、進行には約3〜6カ月かかります。
ヒト脳オルガノイドは、神経内分泌、非神経内分泌の両方を含め、さまざまなSCLC腫瘍細胞株をサポートしています。こうしたミニ脳は、in vivo微小環境を模倣しており、脈絡叢発生と脳皮質層形成が見られます。また、SCLC腫瘍の細胞増殖も可能で、患者に見られる腫瘍の不均一性や表現型も保持します。ミニ脳は、浸潤や増殖をサポートしているため、腫瘍形成の研究にとどまらず、化学療法剤への応答の研究にも理想的です。
また、スケーラビリティにも優れているため、研究現場で幹細胞から大量のミニ脳を作製し、膨大な量の薬剤の組み合わせや濃度、投与時点のスクリーニングが可能です。ハイスループットのスクリーニングやイメージングの研究からは、各3D細胞培養に見られる腫瘍細胞容積が応答を特徴付けていることがわかります。
主なポイント: ミニ脳は、SCLCの腫瘍増殖・浸潤が研究できる「正常」なヒト微小環境を再現します。こうした3D培養によるミニ脳は、特徴的な浸潤パターンを維持しつつ腫瘍潜伏期の短縮が可能であり、従来のin vivoのマウス脳移植試験に取って代わる高速なin vitro環境となります。
Corning Matribot バイオプリンターでオルガノイド薬物試験向けのドームをプリント
コーニング ライフサイエンスで3D細胞培養アプリケーションに幅広く取り組んでいるシニアサイエンティスト、Hilary Sherman氏は、Matribot バイオプリンターによるワークフロー効率化で一貫性と再現性を向上できることをデモンストレーションで紹介しました。
Sherman氏が例として取り上げたのは膵がんPDOアッセイ。バイオプリンティングが創薬プロセスで有益なin vitroツールになりうることを説明しました。Matribot バイオプリンターを使ったPDOアッセイ開発のベストプラクティスとしては、プログラマブルソフトウェアや完全自動化などの主要機能が挙げられました。
Sherman氏は、液滴とドームの分注が高精度である点を強調したうえで、Matribot バイオプリンターを使って96ウェルプレートに均一に分注し、ウェル間のばらつきが少なく、変動係数(CV)15%未満に抑えられると説明しました。ハイスループットイメージングであれば、化学療法剤に対する3D培養の応答の評価が容易で、結果の再現性も高いため、複数の薬剤のスクリーニングにより、個別化治療で最良の薬剤を選択できます。
主なポイント: Matribot バイオプリンターは、多様な生体組織や細胞培養の材料を扱うことができます。送達をプログラムできるバイオプリンティングでは、多くの組織培養容器で高い再現性を確保できます。ウェル間でばらつきの少ない均一な分注が可能なため、PDOアッセイのデータの有効性が高く、薬剤依存性応答の感受性も高いことがわかります。