3D Cell Imaging | Best Practices in 3D Cell Culture Imaging | Corning

最近利用が拡大しているスフェロイドやオルガノイドなどの3D細胞培養には、細胞イメージング上、特有の問題があり、特に実験解析にデジタルモデルの作成が必要な場合に、こうした問題が顕著になります。従来の単層の細胞培養ではなく3次元の培養となるため、研究現場では3Dの利点を最大限に生かせる手順を考慮する必要があります。コーニングのシニア バイオプロセス アプリケーション サイエンティスト、Ann Rossi Bilodeau氏によれば、イメージング前の調製と最適化が鍵を握ります。

「まずはシンプルに始めること。そして、特にハイスループットがゴールの場合、最適化を重ね、培養細胞の均一化を図ります」とBilodeau氏はアドバイスします。

臨床研究での3D細胞培養

単層の細胞培養からの脱却は、個別化医療や高速創薬スクリーニングの研究をさらに極め、スピードアップにもつながります。スフェロイドやオルガノイドは、従来の多くのセルベースアッセイで、標準的な細胞培養に取って代わりつつあります。例えば、細胞毒性研究が高速化し、これまで以上のスループットでさらに広範なデータが得られています。

さらに、in vivo研究における「3Rの原則」(削減・改善・代替)(こちらの米国実験動物学会誌を参照)の取り組みの一環として、3D細胞培養は、in vitroによる極めて有効な代替策となります。スフェロイドとオルガノイドは、実験動物を使用した同等の研究に比べ、薬剤応答スクリーニングや病態研究も迅速に実施できます。

3D細胞イメージングのデータ収集

細胞培養用製品の進化を背景に、スフェロイドやオルガノイドの培養は、ハイコンテントスクリーニング(HCS)と高い親和性を示すようになりました。例えば、U底スフェロイド培養プレートは、成長条件を最適化できるだけでなく、各ウェルの中央で均一な細胞増殖も可能です。

しかし、マルチウェルプレートでのアッセイであろうが、Zスタック層からのデジタルモデル作成であろうが、コスト削減や時間効率を最大化するためには、細胞イメージングで得られるデータの品質を大きく左右する要因を押さえておかなければなりません。In Vitro Cellular & Developmental Biology — Animal誌で指摘されているように、3Dデータ収集に移行しようとしているのに、2D前提に開発されたアッセイに依存しようとは思わないはずです。3D用の最適化なしに、単に単層からスフェロイドへと移行すればいいというわけではありません。

では、どうすればよいのでしょうか。

 

細胞イメージングでの3Dの検討

Bilodeau氏は、3D培養細胞のイメージングの際に対処すべき最大の課題として光浸透性を挙げ、次のように説明します。

「サンプルの厚みが不透明さを引き起こします。構造全体を画像化できなければなりません。高品質の画像でなければ、サンプリングバイアスが生じてしまうからです」

細胞のサブセット全体が欠落するリスクも問題です。3D培養物の構造は、拡散勾配に依存していますが、これが原因で細胞塊の内部に異なる微小環境が生まれ、外側の細胞は中心の細胞とは異なる挙動を見せます。その結果、光の透過性が得られなければ、内部の解像度が低く、イメージングで重要な細部が欠落します。

このような理由から、細胞増殖特性や染色プロトコールに関して徹底的に最適化することに加え、イメージング前に3D培養細胞の調製が重要とBilodeau氏は説明します。

固形サンプルのイメージングに当たって、従来の手順では、病理組織診断の前に組織切片を調製します。これは3D培養でも可能ですが、時間がかかるうえに破壊的です。これに代わる3D培養用の手法として、Bilodeau氏はCorning® 3D組織透明化試薬などの組織透明化試薬の使用を勧めています。Corning 3D組織透明化試薬の特長は、ハイコンテント処理に完全対応していて、培養細胞を移すことなく、マイクロプレートですべての手順を完了できることにあります。透明化処理は可逆的なので、3D培養を詳細に分析できるだけでなく、試薬が細胞形態に影響することもありません。

スフェロイドの場合は組織透明化が唯一の手順です。Bilodeau氏によれば、オルガノイドを扱う場合、包埋した培養マトリックスを透明化する手順が加わります。

品質管理

Bilodeau氏が説明するように、どのようなイメージング研究でも基本に立ち返り、細胞タイプごとに最適化する必要があります。また、アッセイ内・アッセイ間の一貫性を確保する品質管理対策も加えるよう助言しています。

染色液が良好に浸透するよう十分に最適化した染色プロトコールとともに、細胞挙動を予測することも、細胞応答の特定に役立ちます。

「細胞位置を仮定し、そこからスフェロイド内の活動を想定すれば、どこに重点を置くといい結果につながるか事前に予測できる」とBilodeau氏はアドバイスします。また、核染色も追加すれば、浸透がわかるだけでなく、細胞生存率とスフェロイド構造も明らかになるそうです。

最後にBilodeau氏は、イメージングの専門家であれば実験に適したイメージング手法について具体的に助言できる可能性があるため、こうした専門家の意見を求めることも大切だと言います。