Spheroid Culture Advancements – Microplates

抗腫瘍薬や薬剤スクリーニング、in vitroにおけるがん研究を含めた多くの研究領域で 3Dスフェロイドの有用性が認められています。スフェロイドの活用が進むにつれて、こうしたスフェロイドを均一なサイズで大量に培養できる優れたツールのニーズも高まっています。また、このような手法は再現性があり効率的でなければなりません。

コーニングではこのニーズを踏まえ、Corning® Elplasia® プレートを発売しました。このプレートは、スキャフォールドフリーモデルで、高密度のスフェロイドを形成する研究者のニーズにお応えします。また、標準的なフットプリントのプレート1枚で、スフェロイドの形成から培養、解析まで行うことができ、スフェロイドは21日以上培養できます。マイクロキャビティウェルで均一なスフェロイドを多量に形成することができ、2種類のウェル形状と表面処理から選択可能です。

スフェロイドの利点は明らかですが、その培養はときに困難を伴い、トラブルシューティングの必要性や疑問点が生じることもあります。今回の「Ask the Expert」セッションでは、コーニング ライフサイエンスのシニアサイエンティストであるHilary Sherman氏と、アプリケーションサイエンティストのAudrey Bergeron氏をお迎えし、スフェロイド培養や新たなプレートの選択肢など最新情報について質問にお答えいただきます。

Hilary Sherman:コーニング ライフサイエンスのApplications Lab(米国メーン州ケネバンクポート)のシニアサイエンティスト。2005年からコーニングに勤務し、さまざまなアプリケーションを対象に、哺乳類細胞、昆虫細胞、初代細胞、幹細胞、オルガノイドなど多彩な細胞タイプの研究に取り組む。コーニングでの主な職務は、プロトコールやホワイトペーパーなどの技術文書の作成、コーニング営業部隊や取引先向けの技術支援・トレーニング提供など。ニューハンプシャー大学卒(生物学)。過去数年に渡ってヒトオルガノイド培養を含む3D細胞培養アプリケーションに専念。

Audrey Bergeron:コーニング ライフサイエンスのアプリケーションサイエンティスト。新製品の評価のほか、コーニングの細胞培養製品を使ったプロトコールや技術文書の作成を担当。コーニングの従業員や取引先向けの製品トレーニングも担当。また、コーニングのサイエンティフィックサポートチームとともに、取引先の研究上のトラブルシューティングにも関与。

新製品のCorning Eplasia プレートには、どのような表面処理がありますか。

Corning Elplasia ラウンドボトムプレートは、6ウェル、24ウェル、96ウェルの各種フォーマットがあり、Corning 超低接着(ULA)表面を採用しています。Corning ULA表面は、独自仕様の動物由来成分フリーの共有結合ハイドロゲル表面で、親水性で電荷を持たない中性です。ULA表面は、足場依存性でありながらスキャフォールドフリーのスフェロイドを形成しやすく、回収も容易です。 Corning Elplasia ラウンドボトムプレートは、大量のスフェロイド形成、回収、拡大に最適です。

Corning Elplasia スクウェアボトムは、セルフコート用にプラズマ処理が施されており、6ウェル、24ウェル、96ウェル、384ウェルの各種フォーマットがあります。スクウェアボトムのプレートは、画像解析に適した光学特性の表面を採用、クローン選択や微小細胞集合体の高倍率イメージングに理想的なソリューションです。

スフェロイドのサイズが一定にならず苦労しています。このプレートであればうまくいくでしょうか。あるいはほかのソリューションがあるでしょうか。

Corning Elplasia プレートなら一貫性のあるスフェロイド形成に役立ちます。同種の細胞を各ウェルに加えると、各マイクロウェルに同数の細胞が入り、各ウェルのマイクロウェルごとに同じサイズのスフェロイドが形成されます。Corning Elplasia プレートの詳細や使用方法は、コーニングのウェブサイトをご覧ください。

Corning Elplasia プレートは、染色やイメージングシステムに対応していますか。

対応しています。Corning Elplasia プレートはクリアボトムを採用していて、バックグラウンドの自家蛍光が抑えられています。私たちはElplasia プレートで、20倍対物レンズの共焦点イメージャーを使ってイメージングに成功しました。またCorning Elplasiaは、染色プロトコールにも対応しています。ただし、試薬をウェルに追加する際、スフェロイドを壊さないように注意してください。また、ウェルの底部付近でのピペット操作もお控えください。

低接着プレートを使ったMCF-7スフェロイドの形成にまだ成功できていません。何かアドバイスをいただけますか。他の細胞株では成功していますが、MCF-7はまだ成功したことがありません。

接着細胞株の中にも、スフェロイドを形成しないものがあります。コーニングのサイエンティフィックアプリケーションチームは、超低接着法だけでMCF-7細胞株が初期の集合体を形成することを突き止めています。このような細胞による順調なスフェロイド形成を促進できる方法としては、メチルセルロースとともに細胞を播種するか、ラウンドボトムの超低接着容器に播種した翌日に、細胞をCorning マトリゲル基底膜マトリックスで覆う方法(オーバーレイ法)が挙げられます。

スフェロイド培養からシングルセルを回収する最良の方法を教えてください。

スフェロイドから細胞を回収する場合、Accutase、5 mM EDTA、トリプシン/EDTA(1X)、TrypLE(1X、5X、10X)などの細胞回収用試薬を加えたスフェロイドをインキュベートすることをお勧めします。細胞回収に必要なインキュベーション時間は、細胞タイプやスフェロイドサイズ、培養時間の長さによって異なります。スフェロイドが解離を始めたら、ピペットで数回混合するとシングルセル懸濁液が生成されます。

スフェロイド染色に凍結切片かパラフィン切片を使ってもいいでしょうか。

スフェロイドの染色であれば、凍結法もパラフィン法も問題なく利用されています。コーニング ライフサイエンスのアプリケーションチームでは、パラフィン包埋に利用できるプロトコールを提供しています。そのプロトコールを紹介するアプリケーションノート「Spheroid Processing and Embedding for Histology」はこちらからダウンロードできます。

96ウェルのラウンドボトムのCorning スフェロイドマイクロプレートで、スフェロイドを除去せずに培地交換するにはどのようにすればいいでしょうか。

Corning スフェロイドマイクロプレートでの培地交換にはいくつかの手法があります。マルチチャンネルピペットがあれば、スフェロイドに影響を与えることなく培地の半分を交換できます。吸引や吐出の際は、ピペットのチップを各ウェルの側面に添えることをお勧めします。培地除去の別の方法としては、DrummondやVWR、Fisher Scientificなどから販売されている、ステンレス製マニホールドなどの真空ポンプに接続したオートクレーブ対応マルチチャンネルアスピレーターを使う方法もあります。アスピレーターのピンツールの片側にウォッシャーやチューブを取り付けてピンの高さを設定することで、スフェロイドマイクロプレートに挿入されるピンの長さを制限できます。スフェロイドに影響が出ないように、1つのウェル当たり少なくとも20 µLの培地を残しておいてください。最後にご紹介する選択肢は自動化です。例えば、BioTekでは、同社のMultiFlow FXマルチモードディスペンサー用に、スフェロイドの培地交換専用のAMXモジュールを用意しています。

私たちの研究室では、メチルセルロースを使ったスフェロイド調製で問題が発生しています。上手な解決策をアドバイスしていただけますか。

スフェロイド形成は、細胞タイプとアプリケーションに応じて、いくつかの手法があります。さまざまなサイズのスフェロイドを大量に形成したい場合、フラットボトムの低接着表面処理フラスコスピナーフラスコが使用できます。同一サイズの単一スフェロイドのアッセイが目的であれば、96ウェル384ウェル1536ウェルのいずれかのCorning スフェロイドマイクロプレートをお薦めします。同一サイズで多数のスフェロイドを作製する必要がある場合、Corning Elplasia 24ウェル6ウェルのマルチウェルプレートがお薦めです。また、Corning Elplasia マイクロプレートは、アッセイの都合で応答シグナル増幅や細胞数増加が必要であれば、ウェルごとに複数のスフェロイド形成に使用することも可能です。

単に集合した細胞群か本物のスフェロイドかを早期に同定するには、どうすればいいでしょうか。また、どのくらい早い段階で同定できるようになるのでしょうか。

一般的にこの区別は位相差顕微鏡か明視野顕微鏡の観察で可能です。単なる細胞群であれば個々の細胞の輪郭が観察されますが、スフェロイドが形成されていれば、こうした輪郭は観察されません。この区別がつくタイミングは細胞タイプによります。例えば、HT29細胞は通常、1~2日でスフェロイドが形成されますが、ヒト初代培養肝細胞(PHH)の場合、スフェロイド形成に最大7日かかることもあります。

スフェロイドを移し替える際に、ピペットに付着して困っています。何かコツはありますか。

Axygen Maxymum Recovery® ピペットチップなどの接着防止設計のピペットチップを使ってみてはいかがでしょうか。もう1つの提案は、タンパク質を含む培地でピペットやチップをあらかじめ湿らせておく方法です。