Upstream Manufacturing: Is an Open or Closed System Better? | Bioprocess Manufacturing | Corning

医療などの分野で重要性が高まっているバイオプロセス製造。産物には、タンパク質、モノクローナル抗体、核酸などが挙げられます。こうした産物の製造の上流工程では、多くの場合、きめ細かく制御された条件下で細胞を増殖させる必要があります。細胞回収が終わると、産物の検査、精製、包装などの下流工程へと続きます。

研究プロセスにおいて、研究開発から製造への移行段階にきたことは、大きな成果であると同時に、新たな課題も生まれます。こうした課題の1つとして、製造工程に開放系と閉鎖系のどちらを採用するかという極めて重要な判断を迫られます。

開放系か、それとも閉鎖系か

「開放系は、内部表面、要するに培養物が触れる部分を外部環境に曝露するものです」。コーニング ライフサイエンスのフィールドアプリケーションサイエンティスト、Tom Bongiorno博士は、このように説明します。例えば、細胞培養フラスコのキャップを外して培地を入れるとき、細胞は外部環境にさらされることになります。その場合、バイオセーフティキャビネット(BSC)内で作業すれば、コンタミネーションのリスクを最小限に抑えられます。

一方、閉鎖系は外部環境から隔離されているため、バイオセーフティキャビネットの外で作業を進めることができます。閉鎖系は、シングルユースの容器や組み立て済みチューブ類で構成されており、その代表であるCorning Ascent® Fixed Bed Reactor(日本未発売)には、無菌コネクターで培地充填済みバッグを接続することも可能です。

完全閉鎖系は実現が難しいケースが多く、「機能的閉鎖系」や「準閉鎖系」が用いられることがあります。前出のBongiorno博士は次のような例を挙げています。「一部のコーニング製品には、MPC(オス・メス)コネクターが付属しています。接続はBSC内で行う必要がありますが、いったん接続してしまえば、BSCの外に移動しても構いません」。あとは閉鎖系と同様に使用できます。

開放系の利点

開放系は、細胞培養に携わるほとんどの研究者にお馴染みの環境です。圧倒的な柔軟性を備えているため、多くの場合、研究開発環境向けに手軽で費用対効果に優れた選択肢になります。開放系はコンタミネーションのリスクが大きいものの、さまざまな理由から実験を繰り返す必要性が高い研究開発環境では、それほど大きな問題にはなりません。

研究開発から製造への移行の際、開放系の利点として、閉鎖系よりもセットアップに時間がかからない点が挙げられます。コーニングでは、Bongiorno博士らのチームがお客様と緊密に連携しながら、個別のニーズに応じたカスタムソリューションを開発しています。Bongiorno博士は開放系から閉鎖系への移行について、自らの経験を基に、次のように説明します。「間違いなく時間がかかります。トレーニングを受けて、すべてバリデーション済みとなるまでに、おそらく6カ月から1年程度必要です。アカデミアの研究室では、一般的に承認の数は少なくて済むため、移行期間は主にトレーニングが多くを占めます。この期間は比較的短く、1、2カ月で済みます。大がかりなバリデーションプロセスを伴うなど、規制が厳しい環境にある大企業の場合、もっと時間がかかります」

閉鎖系の利点

開放系から閉鎖系に転換する利点の中でも、まず目につくのは、コンタミネーションのリスクが低減することです。プレシジョンメディシン用の特殊なサンプルを扱う場合は、特に大きなメリットと言えます。閉鎖系には、ほかにも利点があります。場所を取り、コストもかさむバイオセーフティキャビネットを、いくつも導入する必要がありません。ベンチさえあれば、実験に着手できます。さらに、閉鎖系の構成要素の多くはシングルユースで、組み立て済みのため、滅菌や実験のセットアップに必要な時間を短縮できます。

最近開発された無菌コネクターを使えば、閉鎖系の利用に当たって、BSCを使う機会がさらに減少します。標準的なAseptiquik® コネクター*は、無菌性を保ちながら接続が可能です。若干の仕様違いのバージョンとして、接続と切断の両方に対応する製品もあります。Lynx® コネクター**は、最大6回までの接続・切断に対応します。Aseptiquik® コネクター*もLynx® コネクター**もコーニング製品で利用できます。

Bongiorno博士は次のように付け加えます。「閉鎖性が高いほど、一般的にはスケーラビリティも高まります。好例の1つとして、マニフォールド利用が挙げられます」。コーニングでは、CellCube®システム用にAseptiquik® コネクター*4個付きのマニフォールドを提供しています。なお、CellCubeには、10層、25層、100層の各モジュールがあります。「マニフォールド接続にすると、大量の容器の操作時間を短縮できます。容器ごとに同じプロセスを何度も繰り返すことなく、基本的には1回の操作で済みます」(Bongiorno博士)

閉鎖系に移行すると、自動化できる機会も増えるため、担当者間のばらつきがなくなります。Corning Automated Manipulator(日本未発売)は、HYPERStack 36段容器またはCellSTACK 10スタック容器を、1度に最大6個まで扱うことができます。

開放系から閉鎖系への移行を簡素化

研究開発から製造への移行が想定される場合、この移行を円滑に進めるためにも、閉鎖系への転換やスケールアップが容易になるシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。Bongiorno博士は次のように説明します。「Corning CellSTACK®は、開放系のスタンダードとされていますが、当社では、これを閉鎖系に転換するアクセサリーも用意しています。基本的には、キャップを外し、あらかじめチューブ装着済みのキャップと交換して閉鎖系に転換します」。ゆくゆくは表面積の拡張が必要になると予想される場合、Corning High Yield PERformance(HYPER)テクノロジーであれば、あらかじめ閉鎖系として設計されており、スケールアップとスケールアウトに対応しています。

コーニングの研究者は、常にお客様に寄り添いながら、個々のニーズに合ったシステムの開発に取り組んでいるため、開放系から閉鎖系への移行プロセスによって、製造の上流工程の改善・円滑化が進みます。製造に閉鎖系を活用する利点については、こちらをご覧ください。

*AseptiQuik®はColder Products Companyの商標です。
**Lynx®はMerck KGaA, Darmstadt, Germanyの商標です。