細胞間伝達シグナルとして機能する細胞外小胞(EV)。このナノ粒子はタンパク質、糖鎖などの生体物質を内包しており、隣接する細胞や組織とコミュニケーションし、細胞が健常か異常かなどのメッセージを送っています。この機能は、生物製剤領域で大きな可能性を秘めていますが、研究者の間では、いまだに、EVの生物学的特性やアプリケーション、究極的な価値に関する知識の基盤づくりが進められている段階にあります。
EVは、全細胞型の治療薬と違って無細胞産物であり、たとえて言えば、反応を誘発するためにテキストメッセージをやり取りする仕組みに似ています。全細胞は相対質量が大きく、また特定の合成薬が免疫原性反応の引き金となるのに対して、EVは細胞全体よりもはるかに小さいために、生物学的な障壁を容易に乗り越えることができます。サイズが小さいEVには、ほかにも利点があります。まず、サイズが小さ過ぎて細菌やウイルスなどの病原体を運べません。また、EVは、全細胞型治療薬が時折引き起こす不必要な複製や腫瘍形成の能力もありません。