国際連合は、3月の国際女性デーに先立ち、2022年2月に「科学における女性と女児の国際デー」を定め、世界に広めています。女性科学者を増やすことがいかに大切か、そして次代を担う女子児童・生徒に科学の道を志してもらう糸口をどう作り出せばいいのか―。毎年、考えさせられる問題です。
この課題の解決を後押しするには、何よりも模範で示すことに大きな意義があります。その意味で「科学における女性と女児の国際デー」は、ロールモデルたる女性たちが大きな影響力を発揮できる機会です。この世界で活躍する皆さんのような女性たちの姿を目にする機会があれば、若者たちが将来のキャリアを考えるうえで大いに触発されることになります。女性科学者たちは何をきっかけに科学の道を志すことになったのでしょうか。今回の「科学における女性と女児の国際デー」に限らず、機会あるごとに、女性科学者たちが自らの言葉で語りかけることは、科学の世界に進みたいと考えている女性・女児にとって大きな刺激になります。
重要なのはSTEM分野の多様性
毎年、まる1日を特別な日に設定して、科学界の女性にスポットライトを当てるのは、なぜでしょうか。多様性の向上により、平等な社会づくりが推進されるだけでなく、ほかにもさまざまな恩恵が期待できることは明らかです。Elsevier Connectは、STEM(科学・技術・工学・数学)分野の女性が増えれば、研究現場での男女共同参画によって研究精度の向上につながり、男性以外の視点からの独自の見方が生まれ、技術や医療のイノベーションが促進されるとしています。ユネスコによれば、技術系のほとんどの分野でスキル不足が叫ばれていますが、女性が占める割合を見ると、女性の進出は十分とは言えず、いわゆる「第4次産業革命」(インダストリー4.0)を推進するのに必要十分な水準に達していません。
認知度とロールモデル
こうした格差が生じる理由の1つには、女子児童・生徒たちが科学界のロールモデルとなる女性を目にする機会の少なさが挙げられます。しかし、これも変わりつつあります。科学者という存在に対して、世の中では性別的に偏ったイメージが持たれがちですが、小学生に科学者の絵を描いてもらう「Draw A Scientist(科学者を描いてみよう)」と題するプロジェクトでは、1966年の開始以降、STEM分野に進出する女性の増加に伴って、小学生が思い浮かべる科学者像にも変化が生じています。The Atlantic誌によると、同プロジェクトが始まった当時、子供たちの描いた科学者像5,000点のうち、女性を描いた絵はわずか28点でした。現在、学童の描く科学者は、28%以上が女性の姿になっています。
Frontiers in Education誌に掲載された論文が指摘しているように、高校の数学や物理など一部の科目が男性的なイメージで捉えられているために、女子生徒が大学進学の際にこうした分野を敬遠するようになっても不思議ではありません。そこで、このような分野で活躍する女性たちの物語や業績に光を当て、女子児童・生徒が科学の道で活躍する自分の姿を思い描けるように手を差し伸べることが重要です。