転移の治療におけるスフェロイド
転移の治療は、がん研究において依然として大きな課題です。MCTSは、癌細胞が原発巣から血管内浸潤を介して血液循環へ、また血管外浸潤を介して臓器の実質へ拡散する時に形成される転移性微小腫瘍を模倣することができます。このことから、Science Advances誌にも示されているように、MCTSモデルは転移性細胞を標的とする治療の開発に特に有用です。
またスフェロイドは、卵巣癌における経体腔的転移の研究にも用いられています。このような転移においては、腹腔内に染み出た原発腫瘍細胞がそこでスフェロイドを形成し、体液を介して二次的部位に移動します。経体腔的転移の研究においては、流体せん断応力を理解することが非常に重要ですが、そのモデルを腫瘍微小環境において構築することは困難な問題でした。しかし、Cells誌に掲載された最近の研究では、動的培養法を用いて実験室環境において流体せん断応力下でスフェロイドの形成に成功しました。これらのスフェロイドは、人体における癌の形成および転移の仕組みをより正確に再現することのできるin vivo特性を持ったことで、薬物スクリーニングプラットフォームとして活用されるでしょう。