Corning History: Echoes of Life Science Innovations Trailblazers

業界の先駆者であり、またイノベーターとして活躍するコーニング ライフサイエンスには、110年近い歴史があります。また、数十年にわたって進歩と研究の成果をあげながら、科学界をリードしてきました。コーニングは、長い歴史を通じて、常に確固たるビジョンと使命感の下、世の中を一変させるようなイノベーションの実現に取り組む研究者を支えてきました。

根底にあるひとつの目標のなかに、こうした使命感や、コーニングが手がけているあらゆるイノベーションが含まれています。コーニングでは、主に細胞培養を用いて細胞の可能性を引き出そうと取り組む研究者をあらゆる面から支援しています。この強く献身的姿勢があったからこそ、初期にはワクチン開発に道が開かれ、さらに時代は下って今日では、がん研究や細胞治療薬の進歩の後押しにつながっています。

そこでコーニングの細胞培養分野における最大の成果の一部およびそれらに関わった人々をご紹介します。

細胞培養の始まり

すでに1900年代初頭から研究者たちはin vitroでの細胞培養を検討し、試行錯誤していました。しかし、一貫性のある培養には誰一人として成功できていませんでした。1907年、その壁が打ち破られる日がやってきます。ジョンズホプキンズ大学の生物学者・解剖学者のRoss Harrisonが、細胞培養のための新しい外科的無菌操作法を開発したのです。

Harrisonは、カエル胚を使った実験で、カエル神経管の一部を、無菌カバーガラス上の新鮮なカエルリンパ液滴に加えました。リンパ液が凝固後、そのカバーガラスを反転してくぼみのあるスライドガラスのウェルに被せました。このようにして誕生したのが、ハンギングドロップ培養です。これによってHarrisonは、in vitroで外植組織の神経細胞からカエル神経線維が成長する様子を観察することに成功したのです。

Harrisonの尽力により、培地、培養容器、観察、培養物のコンタミネーションに関わる根本的な問題が解決しました。また、この発見を機に、細胞培養が研究ツールとして確立し、後にワクチンやモノクローナル抗体、細胞由来医薬品の製造に不可欠な手法となります。

1910年には、Alexis CarrelとMontrose Burrowsの2人の研究者がHarrisonの手法を発展させ、温血動物組織にニワトリ血漿を加える方式を確立します。数ヵ月後、最初の細胞株の開発に成功しました。

細胞培養に対するコーニングの貢献

細胞培養やライフサイエンスのイノベーションに対するコーニングの貢献は、Carrelとともに始まりました。Carrelは、13年に及ぶ細胞培養実験の末に、初の実用的な細胞培養フラスコを開発します。このフラスコは「Dフラスコ」と呼ばれ、CorningのPYREX®ガラスで製造されました。Carrelをはじめとする研究者らは、このフラスコを使って大量の培地に血漿凝塊を浸せるようになったことから、継代培養の養分補給や維持が容易になりました。

その後もライフサイエンスのイノベーションは続きます。ポリオワクチン開発競争が繰り広げられていたころ、カナダの生化学者・細菌学者のLeone Farrellは、5LのPYREX Povitskyボトルを使い、細胞培養物を静かに揺り動かすトロント法と呼ばれる手法を開発しました。この結果、ポリオワクチン生産が加速しました。

1974年、コーニングは、カントネックフラスコや、ラックに入った15 mLと50 mLの遠沈管など、初のディスポーザブルタイプのプラスチック製実験用品を発売します。ガラス製品と違ってオートクレーブ処理が不要になり、実験の安全性が向上するとともに、細胞増殖のための表面処理が可能になりました。

その後もコーニングは、多層型プラスチック容器にさまざまなイノベーションをもたらし、Corning CellCUBE® システムCellSTACK® チャンバーHYPERStack®などで、培養細胞容積を拡大してきました。数十年の時を経ても、多層型容器は依然として多くのワクチンやスケールアッププロセスの主力ツールとなっています。

ライフサイエンス分野でのイノベーションに対する貢献が拡大

やがてコーニングは、お客様のニーズやフィードバックに対応した先駆的な体制を構築します。お客様が抱える課題や研究上の悩みに耳を傾けながら、次世代型の培養用製品や実験用製品の数々を生み出しています。こうしたツールの機能には一貫性があり、質の高い結果を生み出す基盤となっています。

例えば、Corning Matrigel® Matrixは、プレシジョンメディシン(精密医療)向けのオルガノイドモデルのアプリケーションに対応しています。特に、がん研究用の3D細胞培養モデルには、マトリゲル基底膜マトリックスが頻繁に用いられています。3D技術は、in vivo様の疾患モデルが構築可能であり、がん研究に関して途方もない可能性を秘めているため、コーニングでは、3D技術の開発を長年にわたって提唱しています。米国のFDA(食品医薬品局)近代化法2.0は、研究開発の際にオルガノイドなどの非動物モデルの使用拡大を求めており、当社の取り組みもこの指針に沿って進められています。

コーニングが開発したCorning Elplasia® フラスコは、高密度スフェロイドの形成に取り組む研究者の役に立っています。こうした大量形成のスフェロイドは、創薬スクリーニング、がん研究のほか、先端的な細胞治療薬研究などのアプリケーションに欠かせません。コーニングの超低接着(ULA)技術を採用したフラスコの表面は、動物由来成分フリーの共有結合ハイドロゲルが使われており、スキャフォールド(足場)のない環境で高密度スフェロイドの作製と容易な回収をサポートしています。

また、コーニングは、限られたスペースで接着細胞培養量を拡大できるツールである独自のHYPER技術により、めざましい進歩を遂げています。その1つであるHYPERStack セルカルチャー容器は、バイオ医薬品製造での細胞・遺伝子治療薬アプリケーション向けの高収率・省スペース型ツールです。Corning Ascent® Fixed Bed Reactor(FBR)システム(日本未発売)では、スケーラビリティが大幅に向上します。こうしたツールを利用することで、研究現場では開発スケールから製造スケールへと移行(1 m2〜1,000 m2)できます。この技術は、大量の接着細胞が必要な製造プロセスで特に力を発揮します。

サステナビリティという遺産のために

コーニングは、2022年から「Corning EcoChoice™」というプログラムを開始しています。これは、リサイクル材含有率、発生源からの削減、集約化、再生可能エネルギー利用に関する米国連邦取引委員会(FTC)の環境保護ガイドラインに準拠するものです。

現在、マイクロプレート、フラスコ、ピペットなど、10,000点以上のコーニング製品が、環境配慮型製品をピックアップしたFTCの「グリーナーチョイス(Greener Choice)」に認定されています。コーニングの取り組みの一部をご紹介します。

  • サステナブルパレットプログラム:この取り組みでは、FSC認証の材料を使用し、廃棄物を最小限に抑えます。物流用のパレットのおよそ40%を毎月返送し、4〜8回再利用しています。
  • フラスコ設計の見直し:コーニングの75 cm2細胞培養フラスコの設計を見直し、プラスチック使用量を32%削減しました。
  • 製品包装:コーニングの培地ボトルの包装に使われていた発泡緩衝材(ピーナッツ形など粒状の発泡緩衝材)を再生可能なクラフト紙に変更し、埋め立て処理される発泡緩衝材の廃棄物をおよそ65 m3削減しました。

コーニングの歴史とライフサイエンスのイノベーションが向かう次なる先端分野

コーニング ライフサイエンスは、これからも先駆者として走り続けます。フィールドアプリケーションサイエンティストをはじめ、コーニングのサイエンスチームは世界各地に拠点を置き、お客様のワークフローの合理化、製造の効率化、細胞収量の拡大、ベンチトップ操作の簡素化、研究・製造上の難関突破に取り組むお客様の支援に専念しています。

コーニングは、細胞生物学と材料科学のリーダーとして、3D細胞培養、細胞治療薬、創薬スクリーニングなどの分野で豊富な専門ノウハウを生かし、中核研究から、先端治療薬のプロセス開発や本格生産に至るまで、幅広く支援しています。コーニングは、1世紀にわたって築き上げてきた技術のパイオニアとしての地位にあり、確かな歩みを続けています。