CAR-T Cells, Immunotherapy, and 3D Models in Cancer Research | Immunotherapy | Corning

がん治療は、つい最近まで「手術療法」「放射線療法」「化学療法(薬物療法)」が3本柱とされていました。そこに、第4の柱として「免疫療法」が登場しました。この免疫療法は、イノベーションに支えられて進歩を遂げています。

キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)は、がん研究領域で革新的な発展を遂げ、とりわけ末期がんや希少がんの患者に対して、がん治療の第4の柱である免疫療法に貢献しています。CAR-T細胞は、3D細胞培養モデルとの組み合わせで、最新研究の最前線に位置しています。

CAR-T細胞とは何か

CAR-T細胞は、患者のT細胞から作られます。このT細胞は、アフェレーシス(免疫細胞の一括採取)という方法で患者から採取し、製造施設でキメラ抗原受容体(CAR)を導入して改変・培養します。このようにしてできあがったCAR-T細胞を再び患者の体内に戻すと、腫瘍細胞に発現する細胞表面抗原を目標に攻撃を仕掛けます。

B細胞悪性リンパ腫患者では、CAR-T細胞療法は完全寛解を達成する可能性が示されています。しかしながら、固形腫瘍に関しては、このような治療法で同様の成功を収めるに至っていません。The Scientist誌によれば、固形がん性の腫瘍は、低酸素性、酸性、免疫抑制性を示すことが多いので、T細胞がたとえ浸潤できたとしても、そのような環境での生存は難しいのです。

CAR-T細胞とスフェロイド

3D多細胞腫瘍スフェロイドは、3D細胞培養モデルの一種で、in vivoで固形腫瘍の生態をさらに正確に模倣することが認められています。研究によれば、スフェロイドは、化学療法に対して2D単層細胞培養よりも高い耐性を示すことがわかっています。腫瘍スフェロイドでのCAR-T細胞のスクリーニングの研究によれば、3Dスフェロイドは、低酸素の中心領域を形成し、腫瘍と同様の薬剤拡散プロファイルを示しました。

同研究では、3D多細胞腫瘍スフェロイド作製の信頼性向上と時間短縮を可能にするCorning® スフェロイドマイクロプレートを使用し、スフェロイドとして培養された腫瘍細胞に対するCAR-T細胞の細胞毒性効果を定量化しています。その結果、CAR-T細胞が腫瘍細胞を特異的に標的とし、細胞傷害性を誘発することがわかりました。同マイクロプレートは、CAR-T細胞や細胞傷害性試験と組み合わせることにより、CAR-T細胞試験で腫瘍スフェロイドの作製・スクリーニングを実行するハイスループットのプラットフォームとなります。

CAR-T免疫療法の課題

CAR-T免疫療法で固形腫瘍を治療する場合の課題の1つに、CAR-T細胞を腫瘍に直接誘導する方法が挙げられます。The Scientist誌のレポートによれば、血液がんの場合、一般にCAR-T細胞は血管への注入によって投与されます。しかし、例えばT細胞は血液脳関門を通過して脳腫瘍に到達できますが、通常、腫瘍を死滅させるのに十分な量のT細胞は届きません。研究者たちは、注入を繰り返し実施してCAR-T細胞を体内に長時間存続させる方法を研究しています。また、肺がんの場合には胸腔にCAR-T細胞を投与するなど、局所的に投与する方法の研究も進められています。

適切な抗原を標的として選択することも重要です。がん細胞だけを攻撃し、その周囲の正常細胞を残すCAR-T細胞療法が開発されなければ、深刻で危険な副作用が生じかねません。そこで3DスフェロイドでCAR-T細胞療法をテストすることにより、適切な抗原を標的に選びやすくなります。コーニングの研究で利用されているシステムのように、ハイスループットのシステムであれば、臨床病期の前に抗原標的について理解を深めることも可能です。

3D免疫療法に関する今後の研究は極めて重要であり、スフェロイドを継続的に使用することで、目下の課題の克服につながる可能性があります。日々、新たなイノベーションと希望が生まれており、CAR-T細胞が治療の代名詞になる日が近づいているのではないでしょうか。