ほとんどの細胞治療は、個別患者の治療に用いられるため、スケールは比較的小規模にとどまり、スケールアップよりもスケールアウトが適しています。しかし、スケールアウトの際、多くのことを並行して実行しなければならないため、研究室が大きな鍵を握ります。具体的には、適応症に必要な量を製造するための原料受け入れやバッチ記録レビューが挙げられます。他家細胞治療の場合、どこかでスケールアップする必要が出てきますが、それでも量は非常に小さく、200Lを下回ります。こうしたケースでは、その量を処理するのに必要な単位作業時間が壁になります。時間がかかればかかるほど、生存率に及ぼす影響も大きくなるからです。
ほかにも薬剤製造コストを左右する要素があります。生産施設の立地が米国の西海岸なのか東海岸なのか、それとも欧州なのかでコストに差が出ますが、プロセスを閉鎖系にすれば、生産施設建設コストの削減につながります。プロセスがすでに閉鎖系になっているのなら、清浄度がグレードAやBである必要はなく、グレードC、場合によってはグレードDでも製造は可能です。また、低グレード区域ではガウニング(更衣)要件が緩和されるため、運用コストも削減できます。往路(採取〜製剤)・復路(出荷〜投与)ともに凍結保存の製品か、往路・復路ともに冷蔵保存の製品かといった点も影響があります。リリース、検査、出荷の際、凍結保存の製品のほうが自由度は高くなります。冷蔵製品の場合、特に採取地と受け渡し・出荷のタイミングに関して、複雑なサプライチェーンや受け渡しに関わる課題を抱えやすくなります。