Scaling Up Allogeneic Cell Therapies: A Biomanufacturer's Success Story

同種細胞療法は、活発な市場に支えられて、2022年以降成長が続くと専門家の間で予測されています。

こうした製品は、多くの人々の健康に資するだけでなく、サプライチェーンの複雑化を抑える可能性も秘めています。健康なドナーから患者への同種細胞製品は、比較的容易に拡大できる一方、自家細胞療法の場合、重病患者から採取した細胞を扱わざるを得ないという最大の課題があります。こうした複雑な状況があるため、研究現場ではCAR-T免疫療法などの治療法に同種細胞を用いる可能性を検討しています。

しかし同時に、同種細胞療法ははるかに総合的なスケールアップ戦略が欠かせません。マスター細胞バンクやワーキング細胞バンク、最終的には製品づくりのために、再現性を損なうことなく細胞を拡大培養していくには、目標収率(1ロット対多型の治療法の場合は収率も大きくなる傾向)だけでなく、労働力、売上原価、スペース、期限といったプレッシャーが拡大培養計画にどこまで影響するのかも考えておく必要があります。

さらに、こうした治療法に接着依存性培養を用いる場合、細胞加工はますます困難になります。マイクロキャリアのようなバイオリアクター技術は、接着細胞の利用を前提にしていますが、マイクロキャリアは患者に渡る前に治療薬から除去する必要があるため、完璧な選択肢とは考えられていません。

Waisman Biomanufacturing社(Waisman社)は、ヒト胚性幹細胞バンク、間葉系間質細胞、その他の細胞株のポートフォリオを対象に、生産能力の増強をめざしてはいるものの、この課題を抱えていました。こうした悩みは同社に限らず、業界の多くの企業に共通しています。同社は、施設の大規模改修やスタッフの大量採用は避けたい意向だったため、保守整備が少なくて済み、立体的に大きく拡張できる多層型システムの導入に動きました。

気になる導入結果は生産能力250%増を達成。しかも、コストはわずか20〜25%増に収まったことを考えれば、導入は成功だったと言っていいでしょう。

同種細胞療法のスケールアップ:あるバイオ製造企業の成功事例

CellSTACKからHYPERStackへ移行

Waisman社の取り組みは、Corning® CellSTACK® プラットフォームから大容量のCorning HYPERStack®への移行から始まりました。この移行で、既存の多層型システムは1容器当たり10段から36段に拡張されました。この結果、これまでと同じ設置スペースでありながら、培養面積は従来の手法と比べて3倍以上に拡大しました。新しい環境は、閉鎖系のためガスや培地の交換が容易で、収率が向上しても管理スタッフを増員する必要がありませんでした。

こうした利点は、Waisman社が配管マニフォールドで15台のHYPERStackを接続しても維持されました。すべての容器を単一の閉鎖系の一部として機能させることから、システムがバイオセーフティキャビネット内になくても、使用済み培地の交換や細胞回収の作業が無菌状態で実施できるようになりました。

もちろん、こうしたシステムで常に課題となるのが、プロセス制御の欠如です。バイオリアクターにはpHや酸素供給をチェックするセンサーがありますが、多層型システムはリアルタイムのモニタリング機能がないため、細胞が置かれている状態はわかりません。しかし、Waisman社は、Corning HYPERFlask® 容器に、一種の監視システムとして大型マニフォールド装置を組み合わせることで、この課題に対処しました。単一の容器内での細胞培養の様子を確認できるようにした結果、培地交換や回収のスケジュールに合わせて、HYPERStack内の状況を予測する精度が向上しました。

多様なアプリケーションにモジュール式で対応

今回の移行にWaisman社が採用した方法は、コストやリソースを大幅に増やすことなく同種細胞療法の生産能力を拡大したいと考えている他の研究室にも応用できます。それは、モジュール式の手法であることがポイントです。

Waisman社では、15台のHYPERStackをセットしたマニフォールドを使用しました。導入先各社のプロセスによって、必要なHYPERStack数は異なるでしょう。そして、コンパクトな設置面積、手頃な価格、作業量の少なさといったメリットを享受しながら、各社の目標を達成できます。

Corning 自動マニピュレータープラットフォームにHYPERStack容器やCellSTACK容器を組み合わせた場合のように、自動化機能も互換性があればモジュール式プロセスに対応します。このマニピュレータープラットフォームは、回収のタイミングで解離試薬を適用するのに必要とされる正確な動作が可能です。とはいえ、そのような自動化を求めない場合や、少なくとも当面使う予定がない場合、自動化機能は不要です。

モジュール式の利点は、ワークフローを発展させる必要があれば、新たな機能を追加できる点にあり、まったく新しいシステムに買い換える必要がないことです。今後、同種細胞療法の普及が進み、市場環境に応じて生産量を変える必要が出てきます。このような環境の中では、即座にスケールアップできるように既存のプロセスを強化しておけば、時間に追われるバイオ製造企業にとって明らかに有利になります。

大衆のための医薬品づくり

同種細胞治療・遺伝子治療の需要は高まっています。そこでメーカーは現在の生産力と将来の予想生産力を分析し、1対多型のプログラムがもたらす豊富な機会を生かす体制づくりが必要です。接着細胞培養のスケールアップが課題の場合、比較的小さな設置面積で効率的に収量を生み出すHYPERStackのようなコンパクトなソリューションが有効です。

Waisman社の場合、事業予算増額の投資コストがかかっていますが、そのおよそ10倍に相当する生産力の増強効果があったことになります。この結果、同社では、マスター細胞バンクやワーキング細胞バンクに必要な細胞の提供能力、そして実際の製品の生産能力が向上しました。バイオテック企業の競争が激化する一方で、リソースが限られている時代は、いかに大きな投資リターンを確保できるかがものをいいます。