Scale-up Benchtop Cell Cultures Using HYPER Technology | Corning

バイオプロセシングを始め、非常に高密度の細胞が必要なアプリケーションを対象とした細胞培養のスケールアップについては、すでに多くの文献があります。しかし、インキュベーターにT-175フラスコが詰まっているような研究室はどうでしょうか。

T-175や他のサイズのフラスコは、細胞培養ベンチで実績ある主力製品ですが、スケールアップが目的となると、選択肢は限られてきます*。多くの場合、細胞を播種するフラスコの数を増やすと、その結果、処理回数も処理時間も増加し、インキュベーターのスペースもますます必要になります。

その点、Corning High Yielding Performance Flask(HYPERFlask)容器は革新的なソリューションと言えます。独自の多層構造を採用したガス透過性培養表面で効率的なガス交換を実現するCorning® HYPERFlask®は、インキュベーター内での設置スペースが175 cm2のフラスコと同じでありながら、その10倍(1,720 cm2)の培養面積があります。

細胞は、ガス透過表面に接着し、フィルム層を介してガス交換しながら増殖します。液体の出し入れは、全層に繋がっている単一のネックから行います。

さらに、Corning HYPERFlask容器は、Corning HYPERStack®セルカルチャー容器と同じガス透過性培養表面を採用しています。HYPERStackは、設置スペースをコンパクトに抑えながらも、6,000 cm2(12段構成)〜18,000 cm2(36段構成)の細胞培養面積を確保できます。このため、HYPERファミリーは研究からバイオプロセシングに至るまで、信頼あるスケールアップの道筋を確立します。

HYPERテクノロジーを活用した治験のためのスケールアップ

オタワ病院研究所の細胞製造施設の研究チームは、第I相試験の際、新たに培養した同種骨髄由来MSCを敗血症性ショック患者に投与しました1。単回投与量は、必要に応じて Corning HYPERFlaskで製造されました。投与量は患者ごとに決められるため、研究チームは患者登録の通知を受けてから6時間以内に投与量を確保する必要がありました。

大規模な治験段階では真の臨床的有用性を判定する必要があり、研究チームは、同じアイソレーターユニット内で作業し、同じプロトコールに沿って、はるかに大きなスケールで再現性のある細胞培養を確実に進めることが求められました。

「病院併設の細胞製造施設は、スペースや人員の面で大きな制約があることも多く、その場合、標準的なスケールアッププロセスでは実現が難しくなります。MSCを使ったアカデミア主導の臨床試験に求められる典型的なスケールアップの場合、Corning HYPERStackシステムはバッチ製造量への到達まで極めて管理しやすいプラットフォームになります。」と、同細胞製造施設でバイオ治療薬担当ディレクターを務めるDavid Courtman博士は説明します。

Courtman博士らのチームでは、Corning HYPERStack細胞培養容器を使い、同一性や分化能といった細胞特性も維持したまま骨髄由来MSCを順調にスケールアップすることに成功しました2

詳細については、当社バイオプロセス関連の情報をご覧ください。

*ベンチトップのスケールアップに適した他の選択肢としては、3層・5層のオプションが揃ったFalcon マルチフラスコ細胞培養容器もあります。

参考文献

1. McIntyre LA, Stewart DJ, Mei SH, et al. Cellular immunotherapy for septic shock. A phase I clinical trial. Am J Respir Crit Care Med. 2018;197(3):337-347.

2. Khan S, Davila L, Salkhordeh M, et al. cGMP-compatible large-scale production of mesenchymal stem cells (MSCs) in xeno- and serum-free media for allogeneic cell therapies. Ottawa Hospital Research Institute. Ottawa, ON, Canada.