How to Reduce Pipetting Errors

ピペッティングは、ほとんどのライフサイエンス研究室で最もよく使われる操作の1つです。しかし、研究室で実験に携わるようになったからといって、誰もが上手なテクニックを身につけられるわけではなりません。

幸い、スキルの向上やさらなる上達に取り組むのに遅すぎるということはありません。実験の正確性を確保するための、ピペッティングのミスの減らし方を解説します。

ピペッターは適切なメンテナンスとテクニックが大切

実験を成功させるには、ピペットの高い正確性(設定した容量と実際に分注した容量に差がないこと)と高い精度(毎回同じ容量を分注できること)が必要ですが、それにはピペッターの定期メンテナンスと適切なピペッティングテクニックが重要です。

メンテナンスが甘かったり、ピペッティングテクニックが十分でないと、ピペッターの過剰な劣化、サンプルのコンタミネーション、実験での誤分注や分注量のばらつきを招くことがあります。このような問題があれば、ウェルの乾燥や化合物の不正確な分注、一貫性のない細胞増殖などの問題も引き起こし、実験結果に影響を及ぼします。

長期的なピペッターメンテナンス

メンテナンスを怠ると、気づかぬうちに劣化が進むことがあるため、定期メンテナンスの手順を守ることが大切です。研究室にあるすべてのピペッターを対象に、少なくとも年に1度、あるいはメーカーの推奨頻度で、適切なメンテナンスと校正を実施します。劣化したパーツが見つかったときには、すぐに交換します。

非常に小容量の液体に用いるピペッターは、さらに校正の頻度を上げ、通常は3カ月ごとに実施します。多くの研究室は、定期校正を専門業者に依頼していますが、自前でピペッターの校正を適切に実施する技能を身につけさせている研究室もあります。

ピペッターの日常メンテナンス

ピペッターは、毎日、70%エタノールでさっと拭き取る方法で清掃します。さらに、3カ月に1回程度の頻度で、またはコンタミネーションが起こりやすい手順を伴う実験の前には、分解清掃を実施します。ピペッターの分解、清掃、組み立ての手順は、マニュアルを参照してください。

ピペッターの滅菌やデコンタミネーションが必要な場合、状況に応じて適切な手順を確認してください。ピペッターによってはオートクレーブによる滅菌に対応しています。

実験中のピペッティングテクニック

このコツを身につければ、実験中のピペッティングのミスを減らすことができます。

  • ピペッターをピペットチップに垂直に確実に差し込みます。その際、あまり強く押し込むとチップが曲がったり、歪んだりする恐れがあります。
  • ピペットチップ先端を溶液に入れ、吸引・吐出操作を1回行うことで、あらかじめチップを溶液になじませます。この操作を「プレウェッティング」と呼びます。
  • 急いで操作してはいけません。常にゆっくりとプッシュボタンを押し下げ、ゆっくりと初期位置まで戻すことを心がけてください。吸引操作が速すぎると、液体に気泡が混ざったり、吸引した液体がピペッター本体に入ったりすることがあります。吐出操作が速すぎると、液体がエアロゾルになったり、飛び散ったりすることがあります。また、その結果、実験対象の細胞がダメージを受ける恐れもあります。
  • 「Bioinformation」の記事によれば、ピペットチップを液体に浸す深さや角度が不適切な場合、ピペッティングの正確性が低下することがあります。液体を吸引するときにはピペッターは垂直に持ちますが、液体を吐出するときには、30度〜45度ほど傾けて持ちます。ただし、ピペッター本体に液体が流れ込むほど傾けてはいけません。ピペッティングで量り取る液量に応じて、チップを液体に浸す適正な深さを調べ、常にこの深さを維持します。
  • プッシュボタンを引き上げたら、チップを液面からすぐに出さずに、液体がチップに完全に吸引されるのを見届けます。チップ内部の液面からの蒸発が発生するため、完全吸引までの待ち時間もサンプル間でできるだけ一定に保つようにします。

また、研究室内の環境条件の変動を防ぐことも大切です。温度、相対湿度、気圧など研究室の環境条件にばらつきがあると、日々のピペッティングの正確性が変わってしまいます。

フォワード法とリバース法によるピペッティング

フォワード法は、最も一般的なピペッティングテクニックで、ほとんどの水溶液に用いられます。フォワード法では、プッシュボタンを第1ストップまで押し下げます。液面から適正な深さまでチップを浸し、液体をゆっくりと吸引します。液体を吐出する際には、プッシュボタンを第2ストップまで押し下げ、チップから液体をすべて吐出します。

もう1つのテクニックがリバース法で、液量自体をクッションにして分注するため、粘性、揮発性、起泡性のある液体のピペッティング操作や、微量分注の際に有効です。リバース法では、プッシュボタンを第2ストップまで押し下げます。チップを液体に浸し、ゆっくりとプッシュボタンから指を離して液体を吸引します。吐出でプッシュボタンを押し下げる際には、第1ストップで止めます。チップ内に残った余剰の液体は廃棄するか、元の容器に戻します。

適切なピペッターの選び方と正しい保管方法

どのようなメンテナンスやテクニックが不適切なのか認識するだけでなく、それ以外のありがちな失敗も把握しておくことで、ピペッティングのミスの減らし方を身につけます。こうしたミスには、扱う液量と不釣り合いなピペッターサイズやチップの使用、ピペッターの不適切な保管などがあります。

ピペッターサイズ

ピペッターにはさまざまなサイズがあり、一般的には0.1 μLから1000 μLまたはそれ以上までそろっています。分注したい液量が扱えるピペッターの中で、最も小さいサイズのピペッターを選びます。ピペッターが扱える容量範囲の最小容量に近いほど正確性と精度が低下するからです。例えば、10 μLの液体を分注したい場合、容量範囲が10〜100 μLのピペッターではなく、容量範囲が0.5〜10 μLのピペッターを選びます。

微量の分注で正確性と精度を担保することは容易ではありません。最終的に所定の濃度になるように考えてサンプルを希釈して使用すれば、液量が増えてピペットで扱いやすくなります。

ピペットチップ

チップは、扱う物質やその粘性に適した素材と形状のものを選びます。蒸発する腐食性サンプルを使用する場合、フィルター付きチップを使ってピペッターを保護します。フィルター付きチップは、サンプル間のクロスコンタミネーションの防止にも役立ちます。

ピペッターの保管

ピペッターを使わないときには、垂直に立てられるスタンドに適切に保管します。

ピペッター、ピペットチップ、資料の探し方

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