Prevent Chemical and Bacterial Cell Culture Contamination | Corning

順調に増殖する培養細胞を維持しようと無菌操作を徹底して心がけていても、培養細胞に化学物質や細菌によるコンタミネーション(あるいは好ましくない微生物混入)が発生すれば、すべてが台無しになってしまうこともあります。

はっきりとわかるコンタミネーションであれば、細胞は死滅し、長時間を費やした努力も水の泡となります。しかし、培養細胞のコンタミネーションに気づかないこともあります。そのままにしていると、知らず知らずのうちにデータの質に影響し、最終的にワクチンや薬剤といった産物は使い物にならず、安全性も担保されません。場合によっては、過去の実験の正当性まで疑問視されかねません。

このため、実験を汚染物質から守るだけでなく、いち早くコンタミネーションに気づくための検出法を知っておくことも大切です。そこで、一般的な汚染物質についてライフサイエンス研究者が心得ておきたいポイントをご紹介します。

1. 細菌のコンタミネーション

細菌性の汚染物質は、部外者、昆虫、植物に始まり、未濾過空気や加湿インキュベーター、培地、その他の要因など、さまざまな発生源が考えられます。一般的に、細菌のコンタミネーションは、微生物培養、グラム染色検査、目視による濁りの測定、pHの酸性化により確認します。こうしたコンタミネーションを防止するには、抗生物質、適切な濾過、厳格な殺菌が有効です。

2. 酵母・真菌のコンタミネーション

細菌のコンタミネーションと同様に、酵母や真菌のコンタミネーションも、スタッフや機器、未濾過空気など、研究室内外から発生します。酵母は、微生物培養に加え、臭いや目視できる混濁からも判断できます。一方、粒子や菌糸があれば、真菌の徴候です。酵母・真菌の予防策は、細菌のコンタミネーションの場合と同様ですが、抗生物質の代わりに抗真菌剤を使う点が異なります。

3. ウイルス性のコンタミネーション

不要なウイルスは、組織自体のほか、血清、スタッフ、クロスコンタミネーションによって研究室に入り込みます。ウイルス性のコンタミネーションは、通常、共培養、PCR試験、電子顕微鏡、アッセイ、in vivo試験で検出します。予防策としては、限外濾過法、化学処理、ガンマ線照射血清、細胞株ストックの気相式液体窒素(LN2)保存、動物由来成分フリー製品の優先利用などが挙げられます。

4. マイコプラズマのコンタミネーション

マイコプラズマ感染は大きな問題で、この状況はずいぶん前から続いています。1970年代から1990年代にかけて、米国の培養細胞の15%がマイコプラズマに汚染されていたと推定されます。通常、汚染された細胞株や血清、培地、スタッフ、バイオセーフティキャビネットからコンタミネーションが広がります。

感染の多くは、微生物培養やヘキスト染色、専用キット、PCR試験で同定できます。限外濾過法、抗生物質、動物由来成分フリー製品の使用や、液体窒素の気相保存は、いずれも予防に効果があります。

5. 細胞のコンタミネーション

細胞のコンタミネーションといえば、エピソードとしてHeLaの顛末を挙げないわけにはいきません。1960年代当時、ある細胞株が一般的に普及していましたが、Henrietta Lacksという患者に由来する細胞株から培養した細胞に意図せず完全に置き換わっていた事実をある研究者が突き止めました。このエピソードからもわかるように、細胞のコンタミネーションは、培養物のクロスコンタミネーションで発生し広がることがあります。また、異なる細胞株間やバイオセーフティキャビネット間での培地の使い回しも原因になります。

一般に、細胞のコンタミネーションの検出法は、細胞認証以外にありませんが、「1度に1つの細胞株だけを扱う」「徹底的な清掃を怠らない」「液相ではなく気相で保存する」など、さまざまな予防のベストプラクティスがあります。

最も大切なのは無菌操作

生物学的・化学的コンタミネーションは、実験助手から研究室の運営責任者、日々の生活を医薬品に頼っている患者に至るまで、科学と接点のあるすべての関係者に深刻なリスクをもたらします。研究室のコンタミネーション防止に取り組むうえで、心しておきたいのは、適切な無菌操作に代わるものはないということです。

無菌操作に、抗生物質や抗真菌剤、細胞バンク、しっかりとしたコンタミネーションモニタリングプログラムを組み合わせることにより、世界が望まない小さな侵入者から研究室や貴重な培養物を守ることができるのです。