3D細胞凍結保存のベストプラクティス

細胞・細胞株の凍結保存は、3D細胞培養の基本テクニックです。細胞を極低温まで冷却して細胞、組織、オルガノイド、その他の生物学的構造体を保存します。凍結から融解まで、細胞生存率を維持することが極めて重要です。

Integrative Medicine Research誌に掲載されたレビューによれば、温度制御装置や凍結保護剤(CPA)のおかげで、このテクニックの成功率はかつてないほどに高まっています。

凍結保存の仕組み

凍結保存では、CPAを細胞に添加してから冷却し、凍結・保管します。細胞を急速に凍結すると、氷晶形成や細胞膜損傷、浸透圧ショックで細胞死を引き起こします。このため、徐々に凍結することが重要です。CPAは、水分輸送、氷晶形成、氷核形成の速度抑制に使われます。

CPAを使用すると、凍結・融解プロセスで細胞や組織に生じる損傷が減少します。細胞は、Corning® CoolCell®アルコールフリー凍結容器などの凍結保存容器で保存します。プロセスが正しく行われると、細胞の繊細な構造が保持され、融解後も細胞は生存可能です。

3D培養細胞の凍結保存

オルガノイドなどの細胞培養物は、重大な課題を抱えています。オルガノイドの長期保存によって、オルガノイド技術の継続的な開発や臨床へのトランスレーションが可能になるはずですが、氷晶形成があるため、複雑な組織の凍結は困難です。

オルガノイド

現行方式では、オルガノイドを含む細胞培養物は、CPAと高濃度血清を添加した培地で凍結し、冷却温度は1分に約1°Cの速度で徐々に下げていきます。Advanced Biosystems誌に掲載された論文によれば、時間をかけた凍結プロセスであれば、氷形成は避けられるものの、失透現象のような結晶形成は依然として問題であり、細胞に損傷を与え、細胞間相互作用を阻害しかねません。

この研究を行ったチームは、ハイドロゲルカプセルをベースに、スケール変更可能なオルガノイド培養・凍結保存システムを開発しました。このカプセルは、Corning® マトリゲル基底膜マトリックスのコアに、アルギン酸がシェルとなるコアシェル構造になっています。同チームの推測によれば、このシステムでは、凍結・融解プロセス中にハイドロゲル層がオルガノイドの物理的損傷を防ぐため、回収率向上につながります。

ゲルシステム

International Journal of Molecular Science誌に掲載された論文は、凍結保存への橋渡し役として天然ポリマーハイドロゲルシステム、合成ポリマーハイドロゲルシステム、超分子ハイドロゲルシステムを評価しています。ハイドロゲルシステムは、独自の3D構造により優れた生体適合性を備えています。

天然ハイドロゲルシステムでは、細胞をキトサンやアルギン酸で被包し、ハイドロゲル構造内部に氷晶形成を封じ込めた結果、細胞損傷を最小限に抑えられました。合成ポリマーハイドロゲルは良好に機能したものの、著者らは、強力な化学結合のために融解後の細胞除去が難しくなると仮説を立てています。

実用的なアプリケーション

前出のAdvanced Biosystems誌の研究によれば、コアシェル構造のカプセルシステムで、さまざまなスケールでの腸オルガノイド作製が可能になり、凍結保存中の物理的損傷からオルガノイドを保護できました。

オルガノイドやその他の3D培養細胞は長期保存によって、研究・臨床移植への供給に容易に利用できます。