細胞治療薬は複雑なバイオ医薬品で、プロセス開発と製造に高度な要件を伴います。このため、細胞治療薬を手がける研究室は、内製のメリットとCDMO(医薬品開発製造受託機関)との連携のメリットを比較検討する必要があります。
細胞治療薬の開発は内製かCDMO委託か
細胞治療薬の開発を手がけるスタートアップやアカデミア研究室は、多くの場合、1種〜数種の製品で構成される限られたパイプラインしかありません。今日開発されている遺伝子・細胞治療薬の多くは、患者の細胞を使ったカスタム開発が必要であり、ウイルスベクターの製造や、患者由来細胞もしくは他家細胞の改変に別途培養系が必要なものもあります。このような要素が、製造に固有の課題をもたらします。
研究室が内製かCDMO利用かを比較検討する場合、さまざまな点を考慮します。細胞治療薬を内製する場合とCDMOとの協業の場合のメリット、デメリットを取り上げ、どちらが向いているのかを判断するための条件を紹介します。
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細胞治療薬では、培養系やプロセス手順がわずかに変わるだけでも大きなインパクトをもたらし、細胞の増殖や特性を変容させる可能性があります。パイロットスケールの実験から生産スケールへの移行、あるいは前臨床段階から臨床段階への移行の際に混乱に陥ることのないように、事前にしっかりと計画を立てておきます。
CDMOは、プロセス開発と製造の両面で支援する体制を整えています。経験豊富なCDMOとの協業では、CDMO保有の高価な特殊機器やクリーンルームのスペースを生かした開発の恩恵を受けることができます。自前のクリーンルームが利用できない場合、クリーンルームを必要とする開放系プロセスの手順があるため、CDMOとの協業が有利になります。しかし、マニュアルステップを最小限に抑えた閉鎖培養系(クローズドシステム)や自動化系であれば、この要件が簡素化され、内製開発が可能になります。
互換性のあるプラットフォームから始めると、内製でも円滑なスケールアップが実現します。例えば、すでに市販されているモジュール式の柔軟な技術を活用すれば、細胞の安定条件を維持しながら、生産量の拡大につなげることができます。