同ラボが送り出したVTMチューブは150万本に上ります。このうち110万本がニューヨーク市内のおよそ20の病院に供給されたほか、Einstein系列の病院システムであるMontefiore Health Systemに40万本が供給されました。2020年の11月16日、ようやく製造は終了しました。夜も満足に眠れない長時間シフト体制で、多くの研究者が燃え尽き症候群の寸前まで追い詰められたものの、全員がプロジェクトを最後までやり抜くという思いで成し遂げたと、Shan博士は話します。そもそもの目的があまりに重要すぎて、逃げ出すわけにはいきませんでした。
同チームのがんばりがあったからこそ、ニューヨークで100万人を超える市民が検査を受けることができたのです。本来、これだけの規模の検査をまかなえなかったとしても決して不思議ではありません。この一つひとつの検査がCOVID-19の感染拡大を抑えるうえで、重要な役割を担っています。
「全員、疲れ切っていました。それでも、これがこの街で必要とされている、近隣の住民に必要とされているのだと実感すると、疲労が極限に達していても何とか助けになりたい一心で期待に応えられるんです。」とShan博士は言います。
世界中の研究所で働く人々の多くが、こういったモチベーションに駆り立てられて取り組んでいます。COVID-19感染者数の増加が止まらない中、同ラボの研究者の中には大切な家族が陽性になってしまった人もいます。あるいは研究者自らが陽性になるケースもありました。ラボと病院の間を行き来している医学生は、今回の取り組みの成果を間近に見届けている、とShan博士は述べています。
「実際、彼らはCOVID-19感染患者とじかに接しています。感染に苦しんでいる多くの患者と向き合い、その様子を私たちにも伝えてくれます。そういう現場の話を聞くことも、目の前の重要な仕事に対するモチベーションにつながっています。」とShan博士は話しています。