Achieving High Yield, Versatility, and Scalability for Adherent Cell Culture with Circulation/Perfusion Systems | Corning CellCube | Corning

この記事は、2022年9月29日にBioPharm Internationalに掲載された記事を翻訳したものです。

ワクチンや先進治療製品の需要が右肩上がりに伸び続ける中、細胞培養プラットフォームは、プロセス開発から大スケール製造への容易な移行が可能な、費用対効果に優れた高収量生産が求められています。この点を深く掘り下げるため、BioPharm Internationalでは、コーニング ライフサイエンスのシニアバイオプロセスアプリケーションサイエンティスト、Ann Rossi Bilodeau博士にCorning® CellCube® システムの特長について聞きました。

このインタビューはポッドキャストでもご視聴いただけます。以下は、インタビュー内容を書き起こした記事です。

循環・灌流系はどの段階に最適でしょうか。またその理由もお聞かせください。

BILODEAU: 循環・灌流系は、大スケールで接着培養を実現する手段です。ばらつきを最小限に抑えられるだけでなく、最終的に、静置的手法の容器をスケールアウトする形態に比べ、必要な人員も抑えることができます。馴化培地を循環させることで、高密度またはコンパクトな培養表面であっても、効率的にガスや栄養を供給し、代謝産物を除去できます。静置的な培養で効率的に培地を使用する場合に比べ、細胞収量や生産性を高めることができます。しかも、プロセスの監視・制御機能を搭載した閉鎖系ならではの利点があります。

こうした循環・還流的な細胞培養プラットフォームは、どのような細胞タイプやアプリケーションに特に適していますか。

BILODEAU: それは、個々の系によるのと、ほかにもいくつかの条件によって決まります。第1に、動的な培地の流れがある中で、使用する細胞タイプが基質上でしっかり増殖できるかどうかです。第2に、細胞回収の必要があるかどうかです。まず第1のポイントですが、循環・還流的プラットフォームによって培養表面材料が異なるため、最適化や適応が必要になることもあります。また、トラブルシューティングを重ねながら系に適した循環速度を決定する必要もあります。これと対照的なのが、Corning CellCubeシステムです。CellCubeモジュールの培養表面は、細胞培養用処理済みポリスチレンです。つまり、標準Tフラスコの培養播種がそのままCellCube表面にも適用できることを意味します。CellCubeモジュールのプレート1枚が850 cm2のローラーボトルの表面積と同等のため、一般にローラーボトルで培養できる細胞に特に適しています。また、使用する細胞の剥離が必要で、接着性が弱い場合、CellCubeモジュールには細胞接着性を強化したCorning CellBIND® 表面もあります。

第2のポイントはアプリケーションです。他の循環・還流的培養プラットフォームの中には、細胞回収が障害になるものもあります。そのような特定のシステムは、循環培地中に遊離する細胞外小胞やレンチウイルス(LV)などの細胞製品の回収を目的としたアプリケーションのほうが適しています。一方、Corning Ascent® Fixed Bed Bioreactorシステム(日本未発売)やCorning CellCubeシステムなどは、循環培地の回収並みに容易に細胞を回収できます。つまり、CellCubeシステムは、幹細胞培養から、細胞・遺伝子治療アプリケーション向けのウイルスベクター製造、さらにはワクチン製造に至るまで、あらゆる用途に適しています。

循環・灌流接着細胞培養プラットフォームは、主にどのような要素で構成されるのですか。

BILODEAU: 一般に、細胞培養容器と培地馴化容器をチュービングループで接続する構成か、これにペリスタポンプを加えて系全体に培地を循環させる構成が考えられます。培地や溶液の追加がある場合は、1台あるいはそれ以上のペリスタポンプが必要になると思います。例えば、pH制御に炭酸水素塩を添加する場合がこれに当たります。また、プロセスの監視・制御にコントローラーも必要になります。培地にガスを供給する圧縮ガス供給系統もあります。それから、これも重要な要素なのですが、温度や溶存酸素、pHなどチェックしておきたい各種パラメーターに応じて、センサーかプローブも必要になります。インラインで導入してもいいですし、培地馴化容器に導入することも可能です。

細胞増殖中に制御するパラメーターにはどのようなものがありますか。

BILODEAU: 最も一般的な制御パラメーターとしては、温度、溶存酸素(DO)、pHのほか、増殖中に細胞に十分な酸素・栄養素供給を維持するための循環・灌流速度が挙げられます。

このタイプの閉鎖系は、従来の平面培養容器のように顕微鏡下に置くわけにはいきません。細胞増殖をどのようにチェックすればいいのでしょうか。

BILODEAU: 少なくともプロセス開発の段階で、顕微鏡観察が可能なサテライト容器を用意し、メインの細胞培養物の代替として、並行して播種・培養する方法が取られます。私たちは研究室で日常的にこの方法を利用しています。Corning CellCubeシステムの場合、静置的容器とは常に1対1の対応関係にあるわけではないので、小型のUSBカメラで最外層の増殖表面層を観察し、細胞増殖を直接チェックしています。小型顕微鏡はスマートフォンに接続して使用します。価格も手ごろで使いやすく、増殖中の細胞のコンフルエンシーや細胞形態をチェックするには十分な倍率を備えています。この方法であれば、顕微鏡観察が難しい大きなバイオプロセス容器でもうまく確認できます。Corning Ascent FBRを始めとする市販の循環系の中には、細胞の増殖状況を直接チェックするために増殖基質のサンプル採取が必要なものもあります。しかし、細胞増殖のチェック方法は、細胞可視化だけではありません。特徴が明確な培養物であれば、溶存酸素やグルコース消費量、乳酸蓄積など、細胞増殖中にチェックするパラメーターを細胞増殖状況チェックの代用にできます。こうしたパラメーターは、非常に高い精度で細胞増殖を予測できます。

静置的平面容器からCellCubeモジュールに培養物を移行し、最適化するプロセスについて教えてください。

BILODEAU: 先ほど触れたように、どちらのポリスチレン培養表面も同一の処理がされているため、平面培養容器からCellCubeシステムへ円滑に移行できます。トラブルシューティングや最適化が少し必要になることもあります。対象の細胞について理解を深め、培養物の特性が明確になるにつれて、移行も円滑に進むようになります。

特に、CellCubeに移行する前に、静置的培養での細胞接着や細胞伸展のタイミングを把握しておくことが大切です。また、お使いの培地の組成や、細胞培養中の変化も理解しておくと役に立ちます。例えば、大量のグルコースを使用する細胞であれば、グルコース消費量が増殖状況を見る指標として利用できます。一般的には、CellCubeの10層か25層のモジュールで、細胞株の維持培養に使用している培地に、標準的な細胞濃度で播種するところから始めるとよいでしょう。平均的な増殖期間で計画を立て、あまり極端ではない無難な培地馴化で開始します。特にパラメーターを指定するデータがない場合には、pHは7.35から7.4、溶存酸素は50%を目安にします。細胞増殖中に定期的に栄養代謝物濃度をオフラインで監視します。日頃使用している関連試薬で回収し、収量を確認します。それを踏まえ、この小スケールで目標とする単位面積当たり収量に到達するように、播種、培地量、培地馴化パラメーターを調整します。

Corning CellCubeプラットフォームでは、どのように接着培養をスケールアップするのですか。

BILODEAU: 培地馴化やその他のプロセスパラメーターが決定している場合、すでに実行に移して小スケールでの調整に取り組んでいることと思います。馴化用のバイオリアクターで使用する容量をスケールアップしている限り、CellCube 10(10層モジュール)からCellCube 25(25層モジュール)、さらにはCellCube 100(100層モジュール)へと直線的にスケールアップできます。もっと大きな収量の場合でも、CellCube 100モジュール4個まで収容可能な当社のクリーンルームカートを使って、CellCube 100をスケールアウトできます。その場合、1つの大型バイオリアクターから4ヘッドのペリスタポンプを使ってCellCubeモジュール4個に供給し、4個すべての並列循環を促進します。