What Is Transfection | 3D Cell Culture | Corning

トランスフェクションは、生物学研究の強力なツールです。トランスフェクションの登場により、遺伝子産物や細胞内の遺伝子の機能研究が可能になりました。Analytical and Bioanalytical Chemistry誌によれば、トランスフェクションの方法としては、生物学的手法、化学的手法、物理的手法の3つに大別できます。

研究現場では、細胞内での特定遺伝子の発現を抑制または増強する場合や組換えタンパク質を作製する場合にトランスフェクションが用いられます。例を挙げると、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製、短鎖干渉RNA(siRNA)を用いたノックダウン処理、症状緩和から疾患治癒までを含めた遺伝子治療にも利用されています。

トランスフェクションの基本

トランスフェクションは、基本的には、外来核酸を細胞に導入し、遺伝子組換え細胞を作製するプロセスを指します。トランスフェクションの種類としては、導入した核酸であるDNAやRNAが細胞内に安定的に存在する安定トランスフェクションと、限られた期間だけ存在する一過性トランスフェクションがあります。 一過性トランスフェクションで導入した遺伝子は、細胞のゲノムには組み込まれず、限られた期間だけ発現します。一方、安定トランスフェクションで導入された遺伝子は、安定的、持続的に細胞内にとどまり、ゲノムに取り込まれるため、宿主細胞のゲノムとともに複製されていきます。

遺伝子導入法

さまざまな細胞タイプや目的に合わせて、これまでにいくつかの遺伝子導入法が開発されています。ウイルス法は、臨床研究で最も普及している手法ですが、免疫原性や細胞毒性を生じる恐れがあります。

最近の研究では、化学的導入法が広く利用されており、主にカチオンポリマー、カチオン性脂質、リン酸カルシウム、カチオン性アミノ酸が使われています。基本的な考え方としては、化学物質に正の電荷を持たせ、この化学物質と核酸の複合体が生じると、負の電荷を持つ細胞膜に引き寄せられる仕組みです。しかし、こうした複合体がどのように細胞膜を透過するのか、まだ詳しいことはわかっていません。

物理的手法には、粒子衝撃法(パーティクル・ガン法)、エレクトロポレーション法、レーザー照射法、マイクロインジェクションによる直接注入法などがあります。トランスフェクションプロセスのゴールや目的にもよりますが、mRNAを使ったほうが、DNAを使用する場合に比べていくつか利点があります。

プロセスの強化

非ウイルス性の遺伝子導入法に関する研究の大部分では、2D細胞培養での遺伝子導入機構の解明に主眼が置かれています。しかし、Integrative Biology誌によれば、3D細胞培養での遺伝子導入に関わる細胞内機構はほとんど解明されていません。一部の研究では、細胞遊走と基質分解速度のバランスを取ることにより、3D培養での遺伝子導入効率が改善されることや、細胞と基質の相互作用を操作することで遺伝子導入が調節できることがわかっています。

トランスフェクションプロセスの改善を目指し、さまざまな3D細胞培養法の開発・研究が進められています。例えば、 Molecular Therapy: Nucleic Acids誌で2019年に発表された研究では、患者の骨髄由来の治療用細胞作製に非ウイルス法として、濃縮したmRNAを使用する方法を最適化しました。同研究では微小粒子を用いてmRNA複合体を導入しています。この結果、3D培養も含め培養状態の「細胞代謝活性とトランスフェクションの向上が可能になった」とMolecular Therapy誌では報告されています。

Scientific Reports誌に掲載された2018年の研究では、3D培養でsiRNAを用いて、標的遺伝子の長期的な発現抑制という課題の克服をめざしました。同研究グループによれば、従来の低血清培地で調製したsiRNAはマトリゲルを透過することができませんでしたが、標準の血清添加培地で形成・導入したsiRNAはマトリゲル、スフェロイド、オルガノイドを透過できることがわかりました。

トランスフェクションは、遺伝子治療・再生医療への応用に当たって、極めて重要な手順となります。その未来を語るうえで、3D培養細胞が重要な役割を担います。同時に、3D細胞培養法の発展は、プレシジョンメディシンや個別化医療の進展に欠かせません。