How Adherent Cell Culture Scale-Up Platforms Can Help in the Race to Billions | Corning

バイオプロダクションのプラットフォームとして多用途性に優れた接着細胞培養。ウイルスワクチンから遺伝子治療に至るまで多種多様なアプリケーションに対応していますが、そこには、何十億もの細胞の培養という共通のゴールがあります。ですから、研究室がどの細胞培養プラットフォームを選定するかが決め手となります。とりわけ商用スケールの製造となるとなおさらです。今回は、コーニング ライフサイエンスのシニアフィールドアプリケーションサイエンティストであるAustin Mogen博士と、同フィールドアプリケーションサイエンティストのCat Siler博士に、接着細胞培養のスケールアップに適したプラットフォーム、時間短縮やコスト削減のアイデア、さまざまな接着培養に関するアプリケーションでの生産効率化の方法を聞きました。

BIOPHARM:接着細胞培養はすでに十分に確立された方法であり、研究現場ではプレートやフラスコもお馴染みの容器ですが、これでは製造スケールに発展させることはできません。バイオプロセスのワークフローを前提とした細胞の培養には、どのようなプラットフォームが使えるのでしょうか。

SILER博士:当然のことながら、何百、何千という数のフラスコを使おうなどと考える人はいないと思います。実際、もっと有効な方法がたくさんあります。例えば、2Dシステムをご希望でしたら、Corning CellSTACK® 培養チャンバーや、コンパクトさを追求したCorning HYPERStack® セルカルチャー容器などの多層型製品が使えます。もっと大きなスケールであれば、Corning CellCube® システムか新製品のCorning Ascent™ fixed bed reactor (FBR)をお薦めします。3Dシステムが必要な場合、Corning マイクロキャリアが適しています。

いずれも複雑さや導入所要期間はさまざまです。Corning CellSTACK 培養チャンバーやCorning HYPERStack セルカルチャー容器は馴染みのあるサイズ感で、自動化プラットフォームにも対応しているため、プロセス開発に必要な時間の短縮にもつながります。一方、マイクロキャリアは、省スペース性に優れ、プロセス制御が可能ですが、これまでに使用経験がない場合、導入に時間がかかる可能性があります。Ascent FBRシステムは、占有スペースがコンパクトで、プロセス制御機能を搭載し、効率的な細胞回収に対応しています。

どれを選定するかは、ゴール次第です。つまり、どのくらいの量の細胞が必要なのか、培養期間はどのくらいあるのか、プロセスを通じて重視するポイントは何かを検討します。

BIOPHARM:凍結細胞バイアルから製造スケールへと発展させるには、どうすればいいのでしょうか。

MOGEN博士:バイオプロダクションのプロセスは凍結細胞バイアルから始まることが多く、ワーキング細胞バンク(WCB)やマスター細胞バンク(MCB)が使われます。続いて解凍融解した細胞は、通常、Tフラスコなどの小型容器に播種します。やがて細胞が増殖したら、回収して大型容器で継代します。

小型Tフラスコから大型容器への移し替えのプロセスは、シードトレインと呼ばれます。これが複数回実施されます。シードトレイン容器の選定やプロセスは、アプリケーションによって異なります。プロセスの最終スケールによって、必要な容器の数や、容器を移し替えながら製造スケールに到達するまでの所要期間が決まります。

回収・再播種のプロセス自体にも課題があります。それらは細胞タイプに特異的なことがあります。例えば、細胞タイプによって、回収や再播種が容易なものもあれば、そうでないものもあり、これがプロセスで使用するプラットフォームの選定に影響を与えることがあります。

最後に、細胞やシードトレインのスケールアップの際、ゴールから遡って考えると、わかりやすい場合があります。つまり、期待する細胞収率や細胞数、またはこうした細胞から作製することになる製品を基準にして、そこから逆算して最終的なスケールを決定するのです。

BIOPHARM:接着培養プラットフォームの自動化やプロセス制御についてはいかがですか。

MOGEN博士:プロセス制御や自動化の方式は、細胞培養のスケールアップに使うプラットフォームによって異なります。Corning CellSTACK 培養チャンバーやCorning HYPERStack セルカルチャー容器などの多層型容器に関しては、プロセス制御の選択肢は元々あまり多くありませんでした。しかし、コーニングでは、Corning CellSTACK 培養チャンバーやCorning HYPERStack セルカルチャー容器の移動に伴うハンドリングを自動化する、自動マニピュレータープラットフォームが提供しています。これは、製造ロット内やロット間の一貫性を維持するうえで重要な要素となります。

Corning Ascent FBRシステムやCorning マイクロキャリアとバイオリアクターの組み合わせなどの次世代型の接着細胞培養プラットフォームの場合、追加でプロセス制御機能を内蔵できます。例えば、一般的には溶存酸素とCO2のガス供給を制御できます。pHコントロールのほか、厳格な温度管理機能もあります。

さらにもう一歩踏み込んで、バイオプロダクション領域では、こうしたバイオリアクターシステムのさまざまなリキッドハンドリングやプロセスを自動化する動きが見られます。Corning Ascent FBRは、タッチスクリーン制御とチューブ管理により、バイオリアクターへの液体の出し入れに伴う多くの手動プロセスを自動化し、オペレーターの介在による変動を排除します。

BIOPHARM:接着培養細胞の回収率を高める技術的なソリューションはありますか。

SILER博士:Corning CellSTACK 培養チャンバーやCorning HYPERStack セルカルチャー容器などの容器であれば、Corning 自動マニピュレーターをプログラムして、急傾斜か高速な動きを設定して表面上の液体の動きを促すことで、細胞が剥離しやすくなります。こうした自動化装置により、バッチ間の一貫性が確保されます。Ascent FBRプラットフォームでは、細胞除去も自動化されます。このシステムは、試薬が固定床に到達する流量と試薬量を均一に保てるように設計されており、プロセスがさらにシンプルになります。

BIOPHARM: Ascent固定床バイオリアクターの独自性はどこにありますか。

SILER博士:Ascent FBRシステムには、優れた特長がいくつかあります。基質は、非常に規則的なパターン構造を持つPET製メッシュです。固定床内部には培地や細胞などを均一に送液することができます。そのため、培養過程では栄養分が、また回収時には回収試薬が、細胞に均等に行き渡ります。

回収という意味では、固定床リアクターは分泌産物用によく利用されます。確かにこのプラットフォームは、こうした目的にも利用できますが、最終製品としての培養後の細胞回収はもちろん、近日発売予定の大型のAscent FBRシステムへのシードトレインの際の細胞回収にも対応しています。元々、優れたスケーラビリティを前提に設計されています。固定床式のため、培地・表面積比も好条件になります。

特に優れた特長の1つに、プロセスステップの自動化が挙げられます。タッチスクリーン画面でプロセス内の次のステップを案内するようになっていて、バルブの開閉や送液など、多くの作業をシステムが代行してくれます。

MOGEN博士:Ascent FBRシステムの場合、細胞が栄養分やガスに均等に曝露されるため、AAV(アデノ随伴ウイルス)産生などのアプリケーションで細胞当たりの生産性が向上します。Ascent FBRシステムは、バイオプロダクションの負荷削減や細胞培養条件の最適化により、なるべく細胞の健康状態を高め、ストレスを抑えた環境が整います。健康的でストレスのない細胞は、生産力が高まり、治療法のワークフローへの適合性も向上します。