Pipetting Best Practices to Prevent Hand Strain

研究室で最も使われているツールのひとつ、ピペッター。ピペッターは信頼性があって当たり前のように思われていますが、日々の使い方や継続的なメンテナンスの状況によっては、実験の結果や、ピペッター使用者の手・手首の健康に大きな差が生まれます。この点を踏まえ、ピペッティングのベストプラクティスを見ていきましょう。

ピペッティングに代表される反復的な動作は、いわば職業病的な障害を引き起こすこともあります。調査によれば、ピペッティングを年間300時間以上続けると、手や肩の障害に発展するリスクが高まります。研究室スタッフの多くは年間500時間以上(毎就業日に約2時間)をピペッティングに費やしています。したがって、人間工学に基づく作業慣行を導入することが極めて重要です。

ピペッティングテクニックが未熟だと、実験が台なしになる恐れもあります。テクニック上の問題があると、手や腕を酷使することが多く、実験の正確性や信頼性の低下にもつながりかねません。例えば、チップを取り付ける際、あまり強く押し込むとチップに小さなひびやキズが生じることがあり、正確性の問題が生じます。使用後にチップを取り外す際もより強い力が必要になり、手の負担が大きくなります。また、不適切な角度でピペッティングを行っていると、溶液の吸引量が不正確になるだけでなく、長期的には手に障害が生じるリスクが高まる可能性もあります。

ピペッティングのベストプラクティスを身につけ、確かな成果を得られるようにしっかり準備しましょう。

 

人間工学に基づくピペッティングテクニック

テクニックを後回しにしたピペッティングでは、時間の経過とともに親指や手首、肩の障害が発生しかねません。反復と押し込みの動作はどちらも障害のリスクを高めるため、ピペッティングの際の力加減を弱めるといいでしょう。

労働衛生専門家は、次のようなピペッティングのベストプラクティスを推奨しています。

  • スピードを落としましょう。ピペッティング操作が速過ぎる人が多く、これでは手に対する負担が大きくなり、チップ内に気泡が生じたり、液体がピペット本体に流入したりする恐れがあります。
  • 正しい姿勢を心がけましょう。椅子に座るときは、背もたれにしっかり背中をつけ、快適に作業できるように椅子の高さを調整します。
  • 作業中は脇を締めましょう。手の高さは肩より低い位置を維持し、実験対象から離れないようにすれば、かがんだり、手を伸ばしたりする必要がありません。
  • 楽に握り、ピペッティングでは無理な力をかけないようにしましょう。無理に力をかけ過ぎると、実験の正確性に影響するだけでなく、身体への負担の面でも悪影響があります。
  • ひねりや回転の動きを避けましょう。こうした動きは手首を酷使します。
  • 休憩を取りましょう。20分ごとに1〜2分の小休止をお勧めします。小休止の際に姿勢を変え、指、腕、肩のストレッチをします。
  • ユーザーの手になじむ軽量のピペッターを選びましょう。Corning® LambdaTM EliteTouchTM ピペッターなど、操作にあまり力を必要としない、人間工学に基づく特別設計のピペッターの購入を検討しましょう。

 

メンテナンスとキャリブレーション

ピペッターは他の実験機器に比べて故障しやすく、目に見えないところで性能が時間とともに劣化します。長期にわたってピペッターの正確な分注や性能を維持するためには、メンテナンスが鍵を握ります。

メカニカルピペッターは、内部の仕組みが複雑で、磨耗する部品や、特定の周期で洗浄、注油、点検、交換が必要な部品もあります。内部シールは、多くのメーカーが12カ月ごとの交換を推奨しています。

また、定期的にピペッターのキャリブレーションも必要です。臨床・検査標準協会(CLSI)によると、臨床現場で使用するピペッターは、3〜6カ月ごとにキャリブレーションが必要です。アカデミア研究室の場合、ピペッターの使用状況に応じて、年に1回以上の頻度でキャリブレーションを実施する必要があります。

キャリブレーションとメンテナンスの作業内容を記録し、定期メンテナンスの日程をあらかじめカレンダーに書き込んでおきます。計画を立てることは、回避可能な問題や不正確さを生じさせない一助になり、また、きちんと記録を残すことは、正確性や再現性の問題の調査・トラブルシューティングに役立ちます。

 

問題のトラブルシューティングと解決

ピペッター本体に誤って腐食性溶液を吸引してしまった場合や内部部品が突然故障してしまった場合など、不測の事態や事故には即座に対応し、実験結果の信頼性が揺らがないようにする必要があります。

例えば、吸引後に先端から液体がゆっくり滴り落ちていることに気づいたとします。これは、シール不良の前兆の可能性があります。多くの場合、洗浄してピペット内部に注油し、摩耗した部品があれば交換することで解決するはずです。それでも解決しなければ、チップの互換性の問題が考えられます。漏れやズレは小さいほど気づきにくくなります。そこで定期的なメンテナンスとキャリブレーションが重要になります。

適切なピペッティングテクニックを身につけ、ピペッターに少しでも問題が見つかったらすぐに直すことで、実験の質は大幅に高まり、身体的な苦痛や障害も予防できます。

コーニング ライフサイエンスでは、使い手の身体的な負担軽減と高い精度・正確性の維持に向け、人間工学に基づく設計のピペッターを幅広く取りそろえています。コーニングのリソースライブラリーには、キャリブレーションの手順、ピペッティングガイドなど各種資料がそろっています。