医薬品製造:血清メーカーの信頼性確認に役立つ6つのポイント

血清の発注先を決定する際、供給の安定性を重視する研究者がかつてないほどに増えています。しかし、医薬品製造で大切なのは、メーカーの納入体制の安定性だけではありません。サプライチェーンの安定性も重要なのです。

垂直統合型のサプライチェーンであれば、ワクチン製造や他の生物学的製剤の製造のための首尾一貫した長期在庫に対応しています。ところが、パンデミック下など世界的に在庫確保が厳しい局面では、すべてのメーカーが確実な納入体制を築けるわけではありません。

だからこそ血清の調達先については特に慎重を期すべきとコーニング ライフサイエンス血清事業責任者のMark Koza氏は言います。

「生物学的製剤製造を支える血清の需要は、コロナ禍の前から急拡大していましたが、パンデミックで拍車がかかりました。供給が絞られた結果、最大手メーカーの一部にも影響が及び始めている今、製薬会社は自社の製造プロセスの基準を満たせる調達先探しに乗り出しています。サプライチェーンの一貫性、トレーサビリティ(履歴管理)、品質の検証は今後も重要な鍵を握ります。」とKoza氏は言います。

高品質の血清が必要なときに確実に入手できる体制を確立するためには、製薬各社は研究室用に在庫を確保・補充する前に、調達先に対して突っ込んだ質問をいくつかぶつけてみる必要があります。具体的には、次の6つのポイントを確認します。

1.購入を検討している血清のエンドトキシン濃度とヘモグロビン濃度はそれぞれどのくらいか

メーカーの血清収集過程の品質や清浄度を判定するうえで、最適な指標となるのがエンドトキシン濃度とヘモグロビン濃度です。濃度は低いほど良好です。

「エンドトキシンは常に大きな問題になっていて、品質や取り扱いの不十分さを示す尺度と見ることができます。ヘモグロビンも同様で、高濃度であれば分離過程で赤血球の溶解が多かったことになり、理想的な処理条件を満たしていなかったことがわかります」とKoza氏は言います。

2.この血清には、どのようなロット間差が見込まれるか

ウシ胎児血清(FBS)などの動物由来品では、ロット間差が生じますが、その差はメーカーごとに異なり、ごくわずかの場合もあれば、かなり大きい場合もあります。Koza氏によれば、一般的には大手のメーカーほど一貫性も高くなります。

どのような差が考えられるのか調達先に確認したうえで、サンプルを取り寄せ、既存ロットの性能に対する新しいロットのスクリーニングを実施します。

Koza氏は次のように説明します。「同じ原料由来でも2つのロットがあれば、それぞれの挙動は大きく異なることがあります。期待どおりの望ましい結果を出すには、購入前にロット評価を実施することで、期待と結果を一致させることができます」

3.予算に合った高品質の血清を購入するにはどうすればいいか

2020年のコロナ禍に伴う研究室閉鎖や助成削減を受け、多くの研究室が資金難に見舞われています。そうなると価格ばかりに目を奪われて血清を購入しがちですが、品質は価格に相応です。安物買いの銭失いにならないようしなければなりません。

「価格を唯一の判断材料にしてしまうと、血清の由来が不明のままということもあり、注意が必要です。すべての企業が完全なトレーサビリティを備えたサプライチェーンを持っているわけではありません。誰しも出所のはっきりしない血清を購入したいとは思わないはずです」とKoza氏は言います。

予算内に抑えることを重視しつつも、品質までは犠牲にしたくない場合、予算の制約内でどのような選択肢があるのか調達先に尋ねてみるといいでしょう。思いもよらぬ価格で購入できることもあるかもしれません。

4.コロナ禍で血清のサプライチェーンにどのような影響があり、どのように対応しているのか

今回のパンデミックは、血清関連業界にさまざまな形で影響を及ぼしましたが、とりわけ食肉処理場にも重大な影響が見られました。パンデミックの初期、食肉加工施設での感染拡大で大幅な減産や操業中止に追い込まれたからです。現在は適切な安全策が講じられた結果、供給が回復しています。

これに限らず、今回のパンデミックでどのような影響がありうるのかメーカーに確認することはもちろん、特にKoza氏の言う「いざというときのサプライチェーンの備え」を確保しているメーカーを選びたいものです。食肉加工業者と直接取引関係があるメーカーもあれば、仲介業者経由で供給を受けているメーカーもあります。直接取引のメーカーを選べば、今日のように不安定な時代には大きな効果を発揮します。

5.血清のサプライチェーン全体を管理できる立場にあるか

血清の生産モデルは、メーカーごとに異なります。単に最終製品を再販するだけの業者もあります。逆に、もっと統合型のバリューチェーンを構築しているメーカーもあり、その中でも仲介業者から生血清を大量に調達して、パートナー企業に最終工程を委託しているメーカーもあれば、食肉処理場から血液を直接確保して、調達から研究室のベンチまで一気通貫の完全統合モデルを確立しているメーカーもあります。

理想的なのは後者。統合度の高いモデルを築いているメーカーを探すことが大切です。コーニングのような垂直型モデルを追求したメーカーは、最終産物のあらゆる面について難なく検証できます。

6.ISIA認証とはどのようなもので、ISIA認証を取得済みか

血清に不可欠なのが、国際血清工業会(ISIA)のトレーサビリティ認証です。ISIAは、技術標準規格の整合化、倫理的行動の徹底のほか、ライフサイエンス産業向けに血清の効用に関する啓蒙活動に取り組んでいます。ISIAでは、トレーサビリティ認証の発行に当たって、対象企業のサプライチェーン全体について厳格な監査を実施しています。また認証取得企業のリストも公表しています。

ISIAのトレーサビリティ委員会の委員も務めるKoza氏は、「ISIAでは、血清1本ごとの由来に至るまで情報が確認できることを保証しています」と説明します。「原料の由来から、最終ユーザーに届くまで、製造のすべての段階を通じて管理体制に空白がないことを認証する広範な監査です。つまり、血清製品にISIA認証が付いていれば、その由来は信用できると言えます」とKoza氏は言います。

また、コーニングが手がけるいくつかの血清製品は、欧州医薬品医療品質部門(EDQM)の適合性証明(CEP)も取得しています。欧州で販売する治療薬の場合、CEPは極めて重要な意味を持ちます。血清の製品・プロセスがBSE(ウシ海綿状脳症、いわゆる狂牛病)のリスクを最小限に抑えているかどうかという点で、CEPは欧州薬局方(EP)の基準を満たしている証しとなるからです。

いざという場面でものを言う信頼性

上記の6つの質問をメーカーにぶつけてみて、血清のボトル1本1本の由来が当てにならないとか、血清が必要なときに入手できそうにないと感じたら、医薬品製造のニーズに合わせてもっと信頼のおけるメーカーを見つけるべきなのかもしれません。

最後にKoza氏は次のように締めくくります。「どの製薬会社も、調達先メーカーと強固な信頼関係を築きたいとお考えだと思います。パートナー選びに当たっては、品質検査から原料調達、サプライチェーン統合状況に至るまで、重要な要素がいくつかあります。自信を持って最終的なパートナー選びの結論を出すためにも、今回ご紹介した質問を投げかけてみてはいかがでしょうか」

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