Cracking the Reproducibility Code: Sera Is a Key Component | Corning

感受性が高く繊細な細胞の培養は時に困難です。研究現場では、こうした細胞をディッシュからディッシュへとピペット操作で移したり、凍結、融解や消化酵素の添加による基質からの剥離などの操作が行われます。細胞は、pHの変化、重金属イオン、エンドトキシン、タンパク質分解活性の影響を受けることもあります。こうした条件下では、細胞の成長を促すために培地添加剤としてウシ胎児血清(FBS)が使用されることがあります。一般的には、体積比で細胞培養培地の5〜10%を添加すると最良の結果が得られます。

FBSは、ホルモンやビタミン、ミネラル、脂質など、培養する細胞の代謝要件を満たすさまざまな化合物の供給源となります。血清には、さまざまな細胞や組織に由来する特徴的なタンパク質が多く含まれているほか、何千もの低分子代謝物も含まれます。このため、未定義の成分が多数存在します。

FBSは、屠場で分娩前のウシを屠殺する際に回収したウシ血の凝固しなかった液体成分です。この血清は驚くほどに複雑で、飼料、産地、時期、ホルモンや抗生物質の投与の有無、ウシ胎児の在胎期間などの要因によって変化します。こうした要因があるため、たとえ同じ屠場から供給され、同一の加工処理を施したFBSのロットであっても、ロット間差が生じます。発表された細胞培養研究結果のうち、場合によっては同一の研究室であっても再現できないことがあり、一定数は明らかにこうしたロット間差が原因と考えられます。

理想的な解決策は、無血清の完全合成培地ということになりますが、現状で入手可能なのは、一部のアプリケーションの特定の細胞タイプに適したものにとどまっています。血清は、正確な組成がわからなくても使用すれば細胞培養がうまくいくため、当分の間は、血清に対する人気は変わらないでしょう。ロット間差の問題は、綿密な計画や確認で軽減できるため、再現性を高め自信を持って実験することも可能です。

最初から適切な血清を選定

実験的アッセイは、使用する細胞と同じように特殊なものであり、対象となるアッセイに最も有用な特異的血清処理を丹念に検討することにより、研究を的確に開始できます。

Corning® FBSは、さまざまな処理に対応しています。この処理オプションは、0.1ミクロンのフィルターによる滅菌濾過の3回実施と、無菌性、マイコプラズマ、モニター対象のウィルス、細胞増殖能力などの各種試験が必ず実施されます。また、血清の原産国も米国、オーストラリア、ニュージーランド等から選択できます。

FBSに関して人気の高い処理オプションとしては他に、56°Cでの30分間の非働化処理があります。この処理は、最終的な濾過やボトル充填の前か、個々のバイアル単位など、要望に応じて実施し、沈殿物減少や均一性向上に寄与します。またFBSには、マイコプラズマの不活化など、ウイルスの不活化を目的としたガンマ線照射オプションもあります。ガンマ線照射は、細胞の成長を促進する成長タンパク質や生理活性分子を損傷することがありますが、この点を踏まえ、照射線量については、個々のニーズに合わせてカスタマイズできます。別の標準FBS組成には、非働化とガンマ照射の両方を含めたものがあります。

Corning FBSには、培養細胞の増殖に影響しかねないホルモンを選択的に除去する活性炭・デキストラン処理済みもあります。また透析済みFBSもご用意しています。これは、血清タンパク質の沈殿を回避しつつアミノ酸やホルモン、サイトカインなどの低分子を除去するものです。テトラサイクリン陰性FBSは、テトラサイクリン遺伝子発現誘導系を使用する場合やテトラサイクリンの存在が望ましくないアプリケーションに利用できます。Ultra Low IgG (超低濃度 IgG) は、アフィニティークロマトグラフィーを使用してIgG濃度を5 ug/mL未満に低減します。これはIgG抗体産生や、IgG存在下で阻害される他の実験に有効です。

どの処理オプションを選ぶ場合でも、長期にわたって研究を確実に継続できるように、確かなパートナーを見つけることが大切です。コーニングの垂直統合型の血清サプライチェーンは、地域的なFBS供給面の制約が発生した場合でも、一貫した供給を維持します。コーニングは屠場と直接の取引関係を確立しており、所定のトレーニングを受けた採血担当者が適切なツールを使用し、政府公認施設での採血に当たって厳格な無菌操作を順守する体制が整っています。コーニング ライフサイエンスは、国際血清産業協会(ISIA)によるトレーサビリティーの認定を受けており、すべてのロットについて由来確認の検査を実施しています。原料供給源がコーニングであれば、安心してご利用いただけます。

ロットチェックとストック確保

必要な血清処理の選定が終わったら、複数ロットのチェックを実施し、実験に最適なロットを見極めます。これは、細胞増殖が最も速いロットを選ぶこととは必ずしも限りません。例えば、同じデキストラン処理済みFBSであっても、ロットによって痕跡量のステロイドホルモンが残っていることがあります。実験で使用する細胞や特定アプリケーションの感受性によって、チェック対象ロット数やチェックの実施条件が決まります。

ロット間差に振り回されない最善の自衛策としては、対象となるアプリケーションに適したロットの血清をストックしておくことです。研究室での細胞培養量によっては、血清保管専用フリーザーの導入が必要になります。理想を言えば、研究中に血清を切らすことのないように、十分な量の血清を確保しておきたいものです。こうしたストックが少なくなってきたら(ただし、在庫切れまで十分にストックが残っている段階で)、複数ロットを発注してロットチェックを実施します。ロットチェックでは、現在重要アッセイに使用している現行ロットと同様の結果を示すロットを見極めることが目標です。所望のロットが見つかったら、ストックを確保します。こうしたステップを踏むことにより、実験に一貫性が生まれ、最終的に時間の節約にもつながります。

血清の新ロットのチェックの際、他の試薬や消耗品・備品は同じものを使用します。また、比較対照のため、これまで使ってきた手元のロットも十分に残しておく必要があります。毎日の細胞の反応を確認する最良の方法が目視であることも少なくありません。その意味で新旧ロットの比較が特に重要です。ベストプラクティスとしては、計測結果を記録し、グラフにプロットして細胞増殖曲線を作成することが挙げられます。メーカーから提供されるロット番号などの情報の記録も忘れずに実行します。最後に、他の研究者が実験を再現できるように、血清のロット選定までのプロセスを文書に残しておきます。

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