Corning Transwell Cell Migration Assay Ultimate Guide

細胞遊走と細胞浸潤は、多くの正常な生物学的プロセスだけでなく、がんを始めとする疾患でも重要な役割を果たします。そのようなプロセスの理解と操作に欠かせない研究ツールに、Corning Transwell パーミアブルサポート細胞遊走アッセイがあります。

Transwell パーミアブルサポートは、メンブレンで上下のチャンバーが分離されています。これを利用して、細胞がメンブレンのポアを通って誘引物質に向かって移動する細胞の遊走能のテスト(細胞遊走アッセイ)や、細胞がメンブレンを覆う障壁を分解してから通過する細胞の浸潤能をテスト(浸潤アッセイ)できます。

Transwell アッセイで科学的ブレークスルーを実現

Transwell パーミアブルサポートを使用した細胞遊走アッセイと細胞浸潤アッセイは、がん転移、免疫応答、細胞間コミュニケーション、細胞走化性、組織治癒などの現象に関する画期的な研究を促進します。

例えば、骨組織工学分野での優れたシステムの開発に、Transwell パーミアブルサポート細胞遊走アッセイが利用されています。これは、患者の損傷骨や患部骨を置換する移植片を研究室で作り出す取り組みの進展につながります。また、Transwell パーミアブルサポート細胞遊走アッセイを使って、骨髄間質細胞(BMSC)に対してこれまで以上に強力な走化性因子の同定や、工学的に開発されたスキャフォールドの骨髄間葉系幹細胞に対する補充能をテストする研究チームもあります。

さらに、Transwell パーミアブルサポート細胞浸潤アッセイを応用し、がん生物学の進展に寄与している研究チームもあります。例えば、2020年に発表された研究論文の著者は、マトリックスメタロプロテアーゼ酵素のMMP-2を阻害する抗体が口腔がんの細胞浸潤を阻害できるかどうかを研究する際、Transwell パーミアブルサポートのアッセイを使用しました。同チームは、この抗体が腫瘍細胞の遊走能と障壁を分解する浸潤能を大幅に低下させることを突き止め、将来の研究に道筋をつけました。

Transwell アッセイに必要な材料チェックリスト

Transwell パーミアブルサポートを使った標準的な実験で用意したい材料を紹介します。

  • Transwell パーミアブルサポートセルカルチャーインサート(プレートに組み込み済み)
  • Corning Matrigel🄬 基底膜マトリックスか、その他の細胞外基質(浸潤アッセイ用)
  • シリンジ(浸潤アッセイ用)
  • 遊走・浸潤の研究対象となる細胞またはがんスフェロイド
  • 誘引物質(細胞、組織、走化性因子を含む培地など)
  • アッセイや細胞に適した培養培地
  • 0.2 μmフィルターユニット(Corning 431222など)
  • 綿棒
  • 滅菌済ピンセット
  • ポジティブディスプレイスメント式ピペット
  • インサート洗浄用のCorning PBS(Corning 21-040-CMなど)
  • 顕微鏡を始めとするイメージング法に適した染色(クリスタルバイオレット、Diff-Quik、ヘマトキシリン・エオシンなど)と、染色・イメージング用消耗品
  • アッセイに適したプレートリーダー、顕微鏡、フローサイトメーター、その他の定量化デバイス
  • アッセイに特有のその他の材料

Transwell パーミアブルサポートアッセイの段階的な手順

簡単にアッセイを実施するための一般的な手順を紹介します。それぞれのニーズに合わせて調節してください。

  1. 無菌操作により、遊走や浸潤の研究対象である細胞かスフェロイドを培養します。
  2. 浸潤アッセイの場合、メーカーの説明書に従い、細胞外基質を再構成または調製します。
  3. 浸潤アッセイの場合、各インサート(コーティングされていないコントロールインサートを除く)への細胞外基質の添加の際、滅菌シリンジか滅菌ピペットを使用し、側面との接触を極力減らします。メーカーの説明書に従い、細胞外基質をゲル化します。あるいは、プレコート済み製品であるCorning BioCoat インベージョンチャンバーかプレートとセット済みTranswell パーミアブルサポートを使用します。
  4. 細胞懸濁液を調製します。細胞またはスフェロイドの懸濁液を任意の細胞濃度と量で上部チャンバーに播種します。
  5. 下部チャンバーの適切な培地に任意の誘引物質を添加します。
  6. 任意の時間、インキュベートします。
  7. 浸潤細胞または遊走細胞を回収または固定し、染色してイメージング処理を行い、遊走または浸潤を定量化します。
    • 非接着細胞の場合、Transwell インサートを外し、下のコンパニオンプレートにある細胞を回収します。次に、細胞をカウントするか、任意の手法で染色・イメージングします。
    • 接着細胞の場合、安価な手法としては、まずPBSで湿らせた綿棒でインサート上部表面をやさしくしっかりと拭き取り、非浸潤または非遊走の細胞を取り除きます。続いて、メンブレンの下側に遊走した細胞を固定し、染色します。
    • 接着細胞が対象の場合、さらにハイスループットが期待できる手法としては、メンブレンの下側から細胞を剥離し、適切な定量化法(カルセインAMなど)を使用します。
    • 定量化は、顕微鏡によるイメージキャプチャー、顕微鏡観察による直接細胞カウント、フローサイトメトリー、血球計数器によるカウント、プレートリーダーのいずれかの方法が利用できます。顕微鏡の場合、インサートの中心部と端の付近の領域を十分に含めるようにします。
    • 浸潤アッセイの場合、浸潤率は、浸潤細胞の平均数を、コーティングのないコントロールメンブレンを通過した遊走細胞の平均数で割り、100を乗じて算出します。

細胞遊走・浸潤アッセイのトラブルシューティング

遊走・浸潤アッセイは複雑であり、多くの場合、Transwell パーミアブルサポート細胞遊走アッセイのさまざまな側面を最適化する必要があります。検討事項としては、次の点が挙げられます。

  • 研究対象の細胞に適切なポアサイズを選定します。ポアサイズは、遊走する細胞がかろうじて通過でき、しかも通過に失敗しない程度のサイズを選びます。また、研究対象の生体システムにできる限り近いサイズとします。
  • 遊走率の計測は、播種濃度が低くても高くても不正確になります。これは、ポアの過飽和、アッセイシグナルの過飽和、あるいは逆にサンプルサイズが小さいといった問題が原因です。既知の走化性因子を使った滴定法で、実験に最適な細胞濃度を決定します。
  • また、滴定法により、実験に適した走化性因子の濃度と遊走時間も決定します。さまざまな走化性因子や浸潤阻害のテストも検討します。
  • 適切なコントロールを必ず用意します。これによって問題の発生を察知し、解決法を特定しやすくなります。例えば、浸潤アッセイでは、コントロールとして低浸潤細胞株を含めることにより、非浸潤細胞や低浸潤細胞の動きを阻止するうえで、細胞外基質の障壁が効果的であることを確認しやすくなります。コントロールウェルとして、対象細胞を添加した細胞外マトリックスのコーテイングがないウェルを含めることにより、浸潤率を算出できます。ネガティブコントロールとして走化性因子のないウェル、ポジティブコントロールとして既知の走化性因子のあるウェルを含めると、遊走アッセイの最適化とトラブルシューティングに役立ちます。
  • セルカルチャーインサートに細胞を播種する前に、細胞に損傷がないことを確認します。回収方法によっては受容体を損傷し、走化性因子への細胞の感受性を低下させるものもあります(トリプシンの使用など)。細胞の遊走が十分に見られない場合、走化性因子に対する細胞の感受性を高めるため、24時間〜48時間の血清飢餓処理を実行してみます。

コーニングの細胞遊走・浸潤アッセイ製品

コーニング製品は、ポアサイズ、フォーマット、メンブレン素材、培養面積、コーティングが各種そろったTranswell パーミアブルサポートなど、多彩な浸潤・遊走アッセイをサポートしています。

コーニングでは、がん転移研究に高信頼のツールとプロトコールを提供しています。詳細については、お問い合わせください。