酪農学園大学北村教授|アンバサダーに聞く

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アンバサダーに聞く

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酪農学園大学 北村教授に研究テーマやご自身について語っていただきました

研究テーマについて

―― 先生の研究テーマについて教えてください。

我々は、Ubiquitin Specific Protease 2 (USP2)という分子を中心に、いろいろな臓器でのUSPのエネルギー代謝における役割を研究しています。USP2は、タンパク質のユビキチン化を調節する酵素で、発見当初はがん細胞のいろいろなタンパク質の分解に関係があると言われていました。そして最近では、がん細胞に限らず、タンパク質の相互作用を含めた、タンパク質の様々な機能修飾において非常に重要な役割を果たしていることがわかってきました。私は名古屋市立大学に在籍中、マクロファージのUSP2が糖尿病を抑えることを見出し、以後、エネルギー代謝とのかかわりにフォーカスした研究を行っています。エネルギー代謝制御を担う機能調節分子というと、有名なものではインスリンやレプチン、アディポネクチンやそれらの受容体、細胞内の分子としてはAMPKやPPARファミリーなどがあります。我々はUSP2がタンパク質ユビキチン化という、意外にもまだあまり情報が充分蓄積されていない制御系で、全ての臓器や細胞のエネルギー代謝を調節しているのではないかと考えています。一般的には、同じ分子でも細胞によって働いたり、働かなかったり、機能の内容が異なる場合が多いのですが、USP2 については、標的分子が違っても同じような方向性をもって機能しているようです。そこに興味を惹かれました。それをきっかけとして、ユビキチン化が生物を維持していくうえで、あるいは病気になるうえで、どのような意味があるのか、USP2以外に約50種あるといわれるUSPファミリー分子も含めその機能をひも解いていくことで、わかってくるのではないかと考えています。ユビキチン化の研究では細胞を使ったモデル系が多いですが、私は高次機能との関係を調べることに面白みを感じ、組換えマウスのモデル系を用いて研究をしています。

 

―― 高次機能との関係に着眼することをもう少し詳しく教えてください。

高次機能との関係については、丸ごとの個体で調べる必要があります。我々は自らが構築した組換えマウスを使った解析系に重きを置いています。名古屋市立大学に在籍していた時に作製したノックアウトマウスと個体レベルでの解析テクニックがあったからこそ今USP2の高次機能や、その破綻による生活習慣病との関係を調べることができています。エネルギー代謝を中心に様々なフェノタイプデータを多く蓄積していることが我々の研究の特長です。

先ほどお話ししたようにUSP2はがんとの関連性についての研究が多いですが、我々はエネルギー代謝にフォーカスしています。酪農学園大学では特に動物の病気がターゲットになります。たとえば犬では近年急増している糖尿病などの生活習慣病へのアプローチも重要だと考えます。犬は遺伝学的に適度なバリエーションがありますが比較的繁殖がコントロールされていて疾患の原因遺伝子にもつながりやすいです。これら遺伝子とUSPファミリーの関係を調べることで、犬でのエネルギー代謝疾患の仕組みが解明されれば、ヒトの病気への応用が期待されます。

 

研究テーマに興味を持ったきっかけ

―― 先生がこれらの研究テーマに興味を持ったきっかけを教えてください。

私の父親が同じく研究者で、ミクログリアという脳のマクロファージの研究をしていました。その影響で私自身も昔からアメーバみたいなマクロファージが大好きでした。マクロファージはいろいろな機能を果たしていますが、その中で特に重要な分子とその生理的な役割を明らかにすることがはじめの目的でした。いくつかの分子を発見し、調べていく中で、たまたまUSP2という分子にたどり着きました。当初はマクロファージの分化とUSP2の関係に注目していたのですが、マイクロアレイなどのゲノミクスの技術を用いて解析をしていた際に、エネルギー代謝との関係が見えてきたのです。そしてUSP2はエネルギー代謝に重要な組織でユニークな発現挙動をすることがわかり、エネルギー調節のカギとなる分子ではないかと考え、以来このテーマで研究を続けています。

 

―― お父様が背中を押してくれる部分もあったのでしょうか?

父は若くして亡くなったので直接背中を押されたということはありません。しかし亡くなったあと彼の書斎を整理していた時に、整理された論文のリプリントなんかを見たときに、生き様のようなものを感じ取りました。泥臭い努力をしながら、決して効率よい生き方ではありませんでしたが、長い生命科学の歴史の中に爪痕を残したわけです。そして私自身そういう形で研究成果を残せたらと思いながら研究を続けています。

 

喜びを感じる瞬間

―― 研究を続けていて喜びを感じる瞬間はどんな時ですか?

研究は、基本的に楽しいことより辛いことのほうが圧倒的に多いです。絶対こうだと仮説を立ても、データに裏切られることが日常茶飯事です。でも研究をやめたいと思ったことは一度もありません。手数をこなして、工夫し、発想を変えて、立てた仮説をデータで実証できたとき、あるいは、全く関係ないプロジェクトで得たデータ間の相関に気づいてそれが証明できたとき、今まで見えなかったことがパッと開ける瞬間があります。それが、20年間くらい研究をしていると何回かあって、そのときは震えるくらい感動します。そして、これが明らかになることがその先で患者さんを救うことにつながるかもしれない、そう考えると、その一瞬のために研究を続けているのかもしれません。

 

――  20年に数回ですか…。

これは面白い!と思う発見についてですよ。それに日常でももちろん喜びを感じることはあります。例えば、最初はそれほど研究に興味を持っていなかった学生が、いつの間にか何も言わずに黙々と実験をするようになって、時々出てくるデータを明るい顔で報告してくるのを見ていると、何かうれしいなと思います。そんな毎日の小さな発見とか喜びもこの仕事を続ける理由ですね。あとは、教えている学生さんたちが最近、日本獣医学会の分科会の奨励賞を2年連続で受賞したのですが、そういった出来事も、研究をさらに発展させ、学生をサポートしていきたいと思う気持ちの原動力になります。

 

研究のゴールについて

―― 研究のゴールをお聞かせください。

私の研究のゴールは、病気の克服に繋がる研究成果を上げることです。動物の病気もそうだし、ヒトの病気も、我々の基礎研  究が臨床に繋がるようなところが見えてくるまで持っていくというのが、医学系の研究している研究者としてのゴールだと考えます。基礎研究の分野であっても我々は病気克服というゴールを頭の中にいつも思い浮かべて研究をしています。研究人生はそれほど長くはないですが、そこに完全にターゲットを絞ってやっています。残りの研究時間を計算しながら、テクノロジーと組み合わせていけばこれくらいまでは何とかなるかなと照準を合わせて研究を続けています。

 

―― ゴールに向けて、10段階だと今はどのあたりですか?

今ですか、2くらいじゃないですか。データを得るためには材料を揃えるのが結構大変で、今はその材料を集めている段階です。ネズミを作るのって時間がかかるんですよ。材料が揃って、3~5段階目になると飛躍的にデータが出だす気がします。そうなると規模も大きくなってくるので臨床に繋がっていくと思います。

 

若手研究者へのメッセージ

―― 若手研究者へのメッセージをお願いします。

研究を楽しんでやること。単純にゲームをやるような面白さではなくて、人生をかけてやっていく目標というのを持てば、こんなに面白いことはないと思います。必ずそこには大きな感動があるし、得られるものも非常に大きいはずです。

 

――  たとえば「病気を治す」といった目標をもって研究を続けていてもそこまでたどり着ける人は少ないのではないですか?

私も、昔はそう思っていました。ただ、世の中解明されていないことは案外多いのです。ボクサーがチャンピオンになるために必要なのは愚直にトレーニングをすることといいますが、研究も似ているところがあるかなと思います。ただ愚直にです。うまく人と人のネットワークを築いて、自分がちゃんと動いていけば、見つけたいことへたどり着けると思っています。ネットワークといっても色々あって、例えばUSP2はユビキチン鎖を分解する酵素ですが、合成する酵素も当然存在するわけで、それらを専門に研究されている研究者がたくさんいます。エネルギー代謝にしても、脳・肝臓・脂肪組織と材料は様々ですし、解析技術も研究者ごとに様々です。私はそういった研究者各々が培った知識や技術を気持ちよくシェアできるネットワークを構築することをいつも心がけています。そのためには勉強会や学会に努めて出かけ、行ったときには、全然知らない人でも話をして、共同研究も積極的に進めるようにしています。これまでの職場の仲間達からも、当時解析を引き受けたよしみで今度は色々と助けてもらっています。助け合いネットワークですね。また、新しい技術や研究に関 する情報に敏感になることもネットワークを成長させるのには重要です。あとは本当にもう実直に研究を続けていくことですね。

 

先生ご自身について

―― 最後に、先生が最近楽しいと感じることは何ですか?

研究が一番楽しいですが、それ以外だと学生と研究の戦略を立てたり、楽しみながら学べるように授業用のスライドを工夫して作ったりすることです。それから、北海道での生活を楽しんでいます。マウスを飼育しているのでお正月もなかなか休めないのですが、年末年始には構内に人があまり出入りしないため、日によっては、ひざ上まで積もった雪の中をかき分けて進むんです。ラボまでたどり着くのがかなり大変なんですよ。また、殺人的なつららを眺めたり、アイスバーンで転んで骨折したりと、冬はなかなかスリリングですね。

 

 

酪農学園大学ホームページ

http://souran.rakuno.ac.jp/profile/ja.6bb904e2b311047360392a0d922b9077.html

研究室facebook

https://www.facebook.com/RakunoGakuVetPhysiol/