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細胞培養の基礎知識シリーズ 全4回

第4回 細胞計数と増殖曲線

 

セミナーご参加の皆様からいただいた質問に片岡先生(講演者)より回答をいただいております。
細胞や培養条件によっては当てはまらない事もございますので、その旨ご理解の程を宜しくお願い致します。

 

 

  • トリパンブルー溶液は購入品のほうが良いのでしょうか?購入品のメーカーを教えてください。

    どこの製品でも基本的には問題ないと思います。今回のデモでは、シグマのトリパンブルー 4%溶液を使ってます。私が、以前いた研究室ではトリパンブルーを試薬として購入し、自分で4%液を調整して、それを小分けのストックにしてました。重要なことは、小分けのストックにしておくことです。例えばトリパンブルー 100 mLを購入したら、私共は数mLずつ分注したり、1 mLずつエッペンチューブに分注しています。

  • 大区画の細胞数や生存率が各区画で大幅に違った場合も平均して良いものでしょうか?

    実際に医療の現場で血球数を計算するような時でもこういうことが起こります。このような場合は、もう一度血球計算盤に細胞懸濁液を入れるところからやり直した方がよいです。細胞の凝集塊があったりすると、正確な細胞計数ができないこともあります。そういった場合も、もう一度作り直すのがよいと思います。

  • 増殖曲線を書く場合、培養途中で培地交換はしても良いのでしょうか?

    培地交換はした方がいいと思います。増殖曲線を描いたり、倍加時間を計算する時には理想的な条件で行う必要があると思ってください。一般的な株細胞の場合は2日に1回培地交換をすると思いますけれども、そのような形で培地交換は普通に行うようにしてください。

  • 接着細胞の細胞増殖曲線を作製したい場合は、毎日細胞を剥がして数えるのでしょうか?その場合、剥がしたことによる細胞へのダメージは増殖に影響しないでしょうか?

    もちろん、毎日測定をした方が正確な増殖曲線が描けると思いますが、二日に一度でもかまいません。これはその実験、その施設の方針に従って行ったらいいと思います。

    これはちょっと誤解があったと思います。増殖曲線を描く時には、例えば5日間の培養の増殖曲線を作成する場合(Day1、2、3、4、5という日程で増殖曲線を作成)、その時の細胞培養ディッシュやフラスコは毎日剥がして終了という形になります。剥がした細胞をもう一度播種することはしません。つまり同数撒き込んだ細胞を日数分用意することになります。

  • この手法で腸上皮細胞なども算定できるのでしょうか。

    できると思います。一般的な初代培養細胞も基本的には、それこそ再生医療用も含めて血球計算盤でカウントすることも多いと思います。算定そのものは全く問題ないです。注意していただきたいのは、初代培養細胞は環境や培養条件の影響をより強く受けます。そして場合によっては、幹細胞などはあっという間に老化してしまうというようなことも起きてきますので、培養を続ける時にはぜひ増殖曲線を描いたりしながら、よく観察してよい条件の細胞というのを、それぞれの目的でお使いください。

  • トリパンブルーと混合後、生細胞も徐々に染まってくると聞きました。混合から計測までの時間の目安などございますか?

    これは難しい質問ですね。おっしゃる通りです。トリパンブルーと混合した後は、細胞にとってあまりいい環境ではありませんので、細胞がだんだん弱ってきます。そうすると、生きてる細胞も徐々に染まってきます。1、2分の時間内に計測した方がいいと思います。10分置いたら死んでしまうというわけではありませんが、それ以上は置かない方がいいです。これは特に生細胞率を出す時には、混合してから計測までの時間を各施設である程度揃えておいた方が比較がきちんとできると思います。

  • トリパンブルーと細胞液の比率は1:1でなくてはいけませんか?

    トリパンブルー 4%の場合は、1対1で等量入れてくださいと話しましたが、これは当然染色できればいいので、1対2とかでも可能です。トリパンブルー1に対して、細胞液が2。ただ計算のしやすさを考えると、1対1がよいです。それぞれの培養室で、やりやすい希釈率を考えてみてください。

  • ニュートンリングがうまくできません。コツはありますか?

    ニュートンリングは、血球計算盤とカバーグラスがきちんと接しているという保障になります。よくひっくり返しても落ちなきゃいいよねっていうようなことを言う人もいますが、実はニュートンニングがちゃんとできて密着していてもひっくり返して落ちることはあります。ちゃんとニュートンリングが見えればいいんですけれども、それが上手に作れない見えてこないっていう時は、血球計算盤の表面が汚れていたり、あるいは擦れて平面性が失われている可能性があると思いますので、そういう場合は血球計算盤を定期的に買い替えることをお勧めしています。

  • 血球計算盤は繰り返し使用できると思いますが、洗い方に注意点はありますか?

    血球計算盤がガラスの場合は繰り返し使用できますので、計算盤上の細胞は当然洗う必要があります。その時に一番注意していただきたいのは、血球計算盤の表面が傷つかないようにしていただきたいということです。そのためには、例えばブラシやスポンジだと傷がつきますので、手袋の表面で軽くゆすいだり、水だけで洗浄するなどで構わないと思います。それともう一つ注意点は、血球計算盤を細胞が付いている状態で乾燥させないことです。乾燥させると、なかなか落ちなくなってしまいますので、計測したら、すぐに洗ってください。