第2回 凍結細胞の解凍から継代まで 質問と回答
セミナーご参加の皆様からいただいた質問に片岡先生(講演者)より回答をいただいております。
細胞や培養条件によっては当てはまらない事もございますので、その旨ご理解の程を宜しくお願い致します。
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トリプシン処理は時間で管理するSOPで運用しているのですが、それでは問題があるのでしょうか?
SOPでトリプシン処理を決めているということは、それが最もぶれが少ない方法ですのでSOPに従うということで問題ありません。反対に問題が生じるようでしたら、SOPそのものをご検討いただくという形になるかと思います。
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トリプシンの処理時間で最大何分まで処置しても問題ないでしょうか?
細胞によって異なってくるので、ここで最大の処理時間を言うことは非常に難しいです。例えば5分で剥がれない細胞が10分、20分になっても、あまり変わらないということが多いです。例えば、10分かけても剥がれない場合は、これは処理時間の問題というよりは試薬の濃度です。
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トリプシンの活性を止める場合、無血清培地を用いるときにはどうしたらよいですか?
トリプシンインヒビター(阻害剤)が売られています。試薬として、このトリプシンインヒビターをPBSに溶かして使うことができますので、ぜひそれを使用してください。初代培養でよく使います。
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細胞間の接着力が強いものを剥離する場合、EDTAの濃度を高めると細胞はバラバラになりますか?
一般的に使われる0.02%EDTAでカルシウムイオンの阻害は十分ですので、濃度を上げるのではなく処理時間を長くする方が効果的です。EDTAの他によりカルシウムイオン阻害効果の強いEGTAを用いることもあります。
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解凍する本数が2本になっても10倍量の培地で洗った方が良いのでしょうか?
一般的な凍結溶液に用いられるDMSOは細胞を凍らせるような時には細胞を保護する作用がありますが、凍結に用いる濃度(10%程度)のDMSOを常温で培地に加えると、細胞に毒性を与えてしまいます。10分の1程度に希釈することで細胞への毒性を下げることができますので、常に10倍量の培地で希釈すると思ってください。
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継代の回数は何回までできますか?
研究実験の目的によって異なります。株細胞として樹立されているものは基本的に程度安定していますので、何回継代しても構いません。ただし、まだ安定してない初代培養の細胞は、継代を繰り返して継代数が増えていくと老化細胞が増えてきます。これはもうこれも細胞の種類によって異なりますので、それぞれの細胞に応じて教科書等を見て検討してください。
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コンフルエントの見極めはどうしたらいいですか?
コンフルエントの定義は、おしくらまんじゅうで細胞が隣同士接している状態と思ってください。もっと詰め込むことも可能ですが、細胞がお互い接するような状態になってくると増殖停止等のいろいろなシグナルが走り始めます。一般的には細胞の隙間がなくなったらコンフルエントと理解していいと思いますので、その前の段階、すなわち7割・8割で継代をしていくという形になるかなと思います。
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どのような書籍を細胞培養の参考にしたらいいでしょうか?おすすめはありますでしょうか?
一番の勧めは日本組織培養学会が出している細胞培養実習テキスト(第2版)です。じほう社から出ていますで、リンク先を参考にしてください。このテキストには今回お話ししたような初心者向けの内容について非常に詳しく書いてありますし、さらに指導する立場の方にどういうポイントで指導したらいいかについても書いてあります。ぜひ参考になさってください。
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細胞数の計算についてです。遠心してペレットにした後培地を加えて細胞測定するのと、遠心前(トリプシン含有)に細胞数測定をするのはどちらがよいですか
ペレットにしてその後培地を加えた後で細胞数を計測する方が、正しい数字が出ます。ただし遠心の前に取って計数するということでも、プロトコールとしては構わないと思います。その場合、計測後の作業によって細胞が失われる可能性がありますので、前後の細胞数の変化を検討してください。
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PBSのwith Mg, Ca, without Mg, Caの使い分け方を知りたいです。
カルシウム阻害剤EDTAを含むトリプシン液による細胞剥離の前処理として洗浄する場合は、必ずカルシウムイオンとマグネシウムイオンを含まないPBS(-)を用いてください。細胞培養にはPBS(-)が使われることが多いですが、細胞をPBS(-)で懸濁して長時間放置することは避けてください。
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初代細胞の培養時に注意点はありますか?
初代培養の方法は目的の組織・細胞によって大きく異なりますので、それぞれ成書(組織培養の技術など)を参考にしてください。またプロトコールには書かれていない細かいコツを要する場合も多いので、実際に初代培養をおこなっている研究者に相談することをお勧めします。
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解凍した細胞は、ディッシュの中で希釈する代わりに、大きいチューブで希釈してから播種してもよいでしょうか?
今回、4枚のディッシュに分ける時に9mLの新しい培地を事前に入れて、1mLの細胞液を入れてから混ぜてくださいと説明しました。例えば50mLの大きなチューブ(Falcon チューブ等)に40mL分全部を入れて、混ぜてからそれを10 mLずつ分注するということでも全く構いません。むしろ、その方がしっかりと混ぜられる可能性があります。ウェビナーで提示した方法はチューブを節約できる例として理解してください。
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接着細胞を播種すると、どれだけ丁寧に撹拌してインキュベーターに入れても偏りが生じてしまいます。どうしたらよいですか?
偏りを完全に無くすことはできません。特に容量の小さいディッシュやマイクロプレートなどではなおさらです。ウェビナーで説明したように縦横に細胞を混ぜる方法でも偏る場合は、あまり良い策はありません。
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24wellに播種すると、どうしても細胞が中心に集まってしまいます。何か良い方法はありませんか?
あまり良い方法はありません。大きなディッシュの場合は、ウェビナーで説明した方法で混ぜることによってうまく分散できますが、小さくて丸い形のウェルの場合はどうしても真ん中によりやすい傾向があります。そのため、あまりいい方法が正直ないという印象で、私がやっても中心に集まってしまいます。ある程度中心に集まるのは仕方ないと割り切って、それでもできる限り縦横に混ぜてみてください。もし今まであまりきちんと縦横に混ぜていなかったようでしたら、今回示したようなやり方を試してみてください。

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