第1回 細胞培養の基礎と無菌操作 質問と回答
セミナーご参加の皆様からいただいた質問に片岡先生(講演者)より回答をいただいております。
細胞や培養条件によっては当てはまらない事もございますので、その旨ご理解の程を宜しくお願い致します。
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細胞培養に際して、クリーンベンチか安全キャビネットのどちらを使用するかを決めるポイントを教えていただけますか?
一般的に安全な細胞を扱う場合はクリーンベンチ、感染性がある場合には安全キャビネットを使う必要があります。詳しい使い分けは、装置メーカーへの相談をお勧めします。
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クリーンベンチのUV殺菌時間は何分くらいが適していますでしょうか?
UVのランプによって異なりますので、説明書がある場合はそちらを参考にしてください。一般的には15分~30分ぐらいです。
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細胞培養する試験室に必要な環境管理などはありますか?
細胞培養に必要な環境は、取り扱う細胞の拡散防止に必要な設備(P1、P2など)で判断してください。培養操作はクリーンベンチや安全キャビネットで行いますので、P1実験室レベルの環境であれば細胞培養のための実験室としては問題ありません。医療応用などの場合は、別途CPC(細胞培養加工施設:Cell Processing Center)の施設要件に合わせる必要があります。
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培養された細胞の一般的な廃棄方法はどのようにされていますか?
細胞の廃棄方法は施設によって異なりますが、最低でもオートクレーブや次亜塩素酸ナトリウムなどを用いた滅菌処理が必要です。具体的な廃棄方法については、ご自身の施設の規定に則ってください。
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クリーンベンチ内でガスバーナーでの滅菌は行わない方がよいのでしょうか?
ガスバーナーは必要に応じて使用していただいて問題ありません。作業中は、使用するガスバーナーに応じて管理してください。チューブのフタなどはバーナーの近くには置かない方が望ましいです。気流の乱れなどが気になる場合は、使用しているクリーンベンチや安全キャビネットの説明や使用方法を再確認してください。
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基本的に培養容器ごとに新しいピペットを使用するべきでしょうか?
作業ごとにピペットを交換することが望ましいですが、作業内容に応じて判断してください。ピペットやチップの使いまわしはクロスコンタミネーション(細胞同士の汚染)の原因になりますので注意してください。
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ディッシュやフタを置くときの向きは、上向き、下向きどちらに置いても良いでしょうか?その際の注意点は何でしょうか?
基本的にクリーンベンチ内の気流は清潔なので、手などがフタが開いた培養容器やフタの上を通らなければどちら向きでも問題ありません。ただし、チューブの場合は蓋の内部に溶液が付着していることがあり、下向きに置くことで蓋とベンチの間に雫が垂れて汚染する可能性がありますのでご注意ください。
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開封したデッシュ等の消耗品をクリーンベンチ内で保管せず、ベンチ外で保管する場合、どのようにすれば滅菌状態を保てるでしょうか?
しっかりとテープで止めるなど汚染対策を行い、管理してください。ベンチ横に専用のプラスチック収納ケース等を設置して保管するなど、工夫をお願いいたします。
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クリーンベンチ内に持ち込むチューブ立てやオートピペットは、エタノールによる清拭のみで使用しても良いのでしょうか?
エタノールによる清拭でも問題ありません。ただし、エタノール清拭というのは完璧ではありませんので、過信は禁物です。一方、その他の滅菌法で滅菌されたとしても、ベンチに運んでくる過程で汚染する恐れもあります。対象物に合わせて、複数の方法を組み合わせて運用してください。金属製ラックなどオートクレーブできるアイテムはオートクレーブにかけるなど、それぞれのアイテムに適した方法を検討しましょう。
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チューブをベンチに入れる時に袋ごと入れて取り出すのと、袋の一部だけ入れて取り出す方法とどちらが良いですか?
どちらの方法でも構いません。状況に応じて判断してください。例えば作業途中でチューブが必要になった時に、培養細胞のディッシュ等が中にある段階で、袋ごと入れてそれがフタを開けた培養容器の上を通るというのはあまり良いこととは言えませんので、そういう場合は袋の一部だけを空気取り入れ口の辺りまで入れて取り出したりします。
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血清は小分けにした方がいいでしょうか?また、どのくらいの量がちょうどよいでしょうか?冷蔵保存にした場合、どの程度保管できるのでしょうか?
血清は50mL程度に小分けにして冷凍保存してください。冷蔵での長期保存や凍結融解を繰り返すことはお勧めしません。
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FBSの非働化は必ず必要でしょうか?
必須というわけではありません。実験上の必要性に応じて判断してください。
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培養に用いる血清のロットを新しいものに変えた場合、培養と継代を何度か繰り返した方が良いでしょうか?繰り返すとしたら何回程度が良いでしょうか?
がん細胞のようなロット差の影響を受けにくい株細胞の場合は大きな問題となることは少ないですが、免疫細胞など細胞の種類によってはロットの影響を受けることもあると言われています。研究対象の細胞を入手した時に、ロットチェックの必要性を確認してください。
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コンタミネーションの事例を原因及び対策とともに紹介していただけますか?
最も問題があるコンタミネーションはクロスコンタミネーション(細胞同士の汚染)で、培地など溶液の共用が原因であるケースが多いと言われています。クロスコンタミネーションが起こると、それまでの研究データが無駄になってしまうこともあります。培地などは他人と共用せず、また同じ培地でも細胞ごとに小分けして使い分けるようにしてください。
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コンタミネーションのリスク要因について、クロスコンタミネーション以外にあれば教えてください。
一般的な細菌によるコンタミネーションに加えて、マイコプラズマのコンタミネーションが問題です。マイコプラズマに感染しても顕微鏡観察ではわからず見逃してしまうことがあります。研究室で昔から使っている細胞などが感染していることが多いので、注意してください。マイコプラズマ専用の検出キットが市販されていますので、必要に応じて定期的な検査を行ってください。

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