The Growing Role of Mesenchymal Stem Cells (MSCs) in Regenerative Medicine

間葉系幹細胞(MSC)は、1970年代に発見されて以来、再生医療を始め、さまざまな臨床領域の研究者から注目を浴びている組織幹細胞(複能性幹細胞)です。

MSCは免疫調節能と増殖因子分泌能を持つため、ドナーに対するレシピエントの免疫反応や組織成長が大きな課題となっている組織工学の領域で非常に有益と見られています。

このような利点があるうえに、前駆細胞にはさまざまな細胞タイプに分化する多能性がある点も考え合わせると、その可能性に研究者が大きな期待を抱いているのもうなずけます。Cells誌によれば、骨・軟骨、肝臓、神経系、心臓、眼、皮膚に関する数々の研究の結果、再生医療へのMSC利用に関して新たな洞察がもたらされています。

MSCは実験レベルでは有望性を発揮していますが、臨床応用への道に立ちはだかる課題があります。中でも、効果的、効率的なスケールアップは特に大きな課題とされています。典型的なMSC療法では数百万個の細胞が必要ですが、これだけの細胞数を回収することは容易ではありません。

とはいえ、スケール変更の課題をMSC利用の足かせにするわけにはいきません。この有望な治療経路のスケールを管理・最適化するうえで有益な、数多くのツールや技術が登場しています。

大規模なMSC利用に伴う課題

言うまでもなく最大の課題は、「十分な量のMSCを確保するにはどうすればいいのか」に尽きます。

コーニング ライフサイエンスのシニアアプリケーションサイエンティスト、Hilary Sherman氏は、次のように話しています。「これだけの量の細胞を培養するには、かなりの培養面積が必要です。これはCellSTACK® 培養チャンバーHYPERStack® 培養容器といった静置培養であろうと、浮遊培養システムのマイクロキャリアを使用する場合であろうと同じことです。」

MSCの品質と治療価値は時間の経過とともに低下するため、大量培養を効率よく迅速に達成する方法を検討すべきと指摘するのは、コーニング ライフサイエンスのフィールドアプリケーションサイエンティスト、Ben Josey博士です。

「細胞株ではなく初代細胞として確保する制約もあります。MSCの場合、倍加できる回数は限られていて、すぐに細胞老化が始まって、潜在的な治療効果が低下し始めるからです。」とJosey博士は言います。

また、MSCについてSherman氏は「患者から直接採取するため、多様性も大きくなります。」と指摘します。「修飾や制御を重ねていて、毎回、一貫性のある挙動を示すがん細胞株を扱うのとはわけが違います。1人の患者から採取したMSCはどれも同様の挙動を見せますが、別の患者由来のMSCは成長も倍加も微妙に異なる挙動を見せます。」とSherman氏は説明します。

標準化による改良

MSCのスケールアップという課題を背景に、シードの連鎖生産を効率的、効果的に大規模化しようと、モニタリング制御やバイオリアクターなどの最先端技術に活路を見出す研究者が増えています。しかし同時に、スケールアップに伴う課題をきっかけに、MSC利用標準化に関わる幅広い議論も盛り上がりを見せています。

2000年代半ばまでは、MSC利用のあり方についての指針はほとんどありませんでした。

「細胞濃度や培養培地などの面で全体的に一貫性に欠けているのです。」とSherman氏は言います。「MSCの文献を検索してみるとわかりますが、培養プロトコールはおろか、細胞品質評価さえほとんど言及されていません。こうした要因は細胞自体や治療法に影響しかねないため、考慮しておくことが極めて重要です。」とSherman氏は付け加えます。

2006年、国際細胞治療学会(ISCT)は、研究者がこうした込み入った要因を管理する際に役立つ指針を策定しました。この指針(および2016年改定版)で、ISCTはMSCを同定する最低基準と考えられるものを発表しました。この指針の下、業界の標準化が進められています。

それでも、新薬治験開始申請に当たって、ISCTの最低基準を満たしていない研究者は依然として少なくないとJosey博士は指摘します。MSC研究に関わりのある研究者の世界は、まだ改善の余地があります。しかも、最近はこうした研究者数がかつてないほどに増加しています。

幹細胞研究者、バイオプロセス研究者、臨床医など、さまざまな領域から多くの人材がMSC研究に大変な勢いで流入しています。1つアドバイスできることがあるとすれば、こうした特異的細胞の生態学や治療適応症の生態学を考慮したうえで、できるだけ早く包括的に生産目標に向けて準備を開始することです。」とJosey博士は言います。

まとめると、最終的にめざす姿を頭に描いてから始めることが重要です。コーニング ライフサイエンスを始め、多くの細胞培養用製品メーカーにスケーリングプロセス最適化の支援に当たるフィールドアプリケーションスペシャリストが在籍しており、研究目標の達成を支援するプラットフォームを整えています。確固たる計画や援助があれば、研究活動、リソース、コスト、人員にプラスに働きます。