ハイスループット薬剤スクリーニングにおける3D細胞培養の進展 | 3D細胞培養とHTSスクリーニング | Corning

SelectScience®では、The Scripps Research Institute(米国フロリダ州)のDiscovery Biology & HTSで助教授(分子治療法)兼主任IDディレクターを務めるTimothy Spicer博士に、3D細胞培養の自動化による抗がん剤スクリーニングの進展状況について聞きました。

Spicer博士の研究は、治療のアンメットニーズが存在する生物学的標的を対象に、ハイスループットスクリーニング(HTS)技術の開発・最適化に焦点を当てています。がん研究分野では、スクリーニング推進と疾患との類似性確保を追求する動きが強まっています。

3D細胞培養とHTSスクリーニング

従来の単層培養の手法に比べ、3次元のあらゆる方向にin vitroで細胞を培養できる3D細胞培養は、生理学的に生体をより模倣しています。このため、3D細胞培養は創薬の化合物スクリーニングに理想的と言えます。しかし、大規模な2D細胞培養の置き換えはなかなか思うように進んでいません。Spicer博士はコーニングとの共同研究で、非接着性表面の1536ウェル スフェロイドプレートの開発・検証を通じ、3D細胞培養スクリーニング技術の改良に取り組んでいます。Spicer博士は次のように説明します。「現在取り組んでいる研究では、この技術の改良に専念しています。多くの研究者が長らく2D、つまり単層フォーマットでスクリーニングを実施しており、合理的なリード化合物の発見までは進むものの、そのほとんどが最終的に失敗に終わっています」。新しく登場した1536ウェルのプレートは、大規模・高密度フォーマットでスフェロイドを迅速に形成できるよう設計されており、大量の化合物のスクリーニングを促進します。Spicer博士によると、この技術を使えば、65万種以上の化合物で構成されるScripps Drug Discovery Library全体が2週間足らずでスクリーニング可能になります。Scrippsの研究チームは、コーニングと共同で、1536ウェル スフェロイドプレートの開発・テスト・検証に取り組んでいます。このプレートは、イメージング装置やリーダー、自動化ワークステーションなど、既存のHTS設備に適合します。

今後の展望

この共同研究は順調に進んでおり、現在、がん治療候補薬のスクリーニングによる1536ウェルプレートの検証に注力していますが、この技術は、中枢神経障害、感染症、心血管疾患、代謝性疾患など、創薬のあらゆる領域に適用できます。一貫性のある3D細胞培養を大規模に実施できるようになれば、創薬の領域は大きく変わることになります。これまで以上に生理学的に適切なモデルで、膨大な数の化合物のスクリーニングを迅速に実施できるため、臨床への導入が加速され、最終的に新しい有効な治療につながるでしょう。

Scripps InstituteでのSpicer博士の研究の様子については、動画ウェブサイトをご覧ください。コーニングのハイコンテントスクリーニングプレートの詳細は、こちらの動画でご覧ください。