パートナーシップの力

リソースからサポートまで、良きパートナーの存在が細胞培養のコンタミネーション対策の一助に

ラボマネージャーが日々直面する課題は無数にありますが、中でも細胞培養のコンタミネーションの可能性には警戒を怠るわけにはいきません。予防には、しっかりとしたコンタミネーション管理 プログラムが必要です。万一、コンタミネーションが発生した場合には、ただちに対策を講じ、経済的な損失を抑えるとともに、組織の信用と評判を守る必要があります。効果的なコンタミネーション管理プログラムの策定に当たっては、コンタミネーションの影響範囲、想定される汚染源を把握しておくことが第一歩となります。膨大な作業に感じられるかもしれませんが、決して孤独な作業ではありません。こうした課題について精通するコーニングでは、培養容器や表面、培地、フィルトレーション製品、各種消耗品など多彩な製品を揃え、正確で再現性のある実験結果につながるよう皆様をサポートしています。また、当社エキスパートチームが実験のガイド役を担います。

コンタミネーションの代償:経済的損失や時間的ロスに加え、信用失墜も

ひとくちに細胞培養のコンタミネーションと言っても、程度はさまざま。しっかりと制御された条件下では、影響は特定のプレートやウェルだけにとどまることが多いのですが、厳格に制御されていない環境では、コンタミネーションの発生頻度も高く、実験全体が失敗に終わることもあります。さらに、マイコプラズマ感染や細胞株のクロスコンタミネーションとなると、壊滅的な被害が及ぶこともあり、現在だけでなく過去の実験の妥当性にも疑義が生じ、場合によってはいくつもの実験や研究プログラムが中止に追い込まれる恐れもあります。

いかなる細胞培養実験も、多くのリソース(財源、人材)が投じられます。ひとたびコンタミネーションが発生すると、プレート、培地、細胞を始め、数々の消耗品までもが無駄になります。プレートやフラスコの2つや3つ程度なら、取るに足らないコストかもしれませんが、実験全体が水泡に帰すとなれば、そのコストは甚大です。ワクチンや薬剤、モノクローナル抗体を作製している研究室の場合、コンタミネーションでバッチ全体を破棄することになり、経済的損失はさらに拡大します。

実験のやり直しとなれば、消耗品・備品や製品に加え、スキルの高い科学者や技師が時間をかけて取り組んだ努力も徒労に終わります。こうした人材は、他の必要不可欠な業務を止めてまで、コンタミネーション対応や実験のやり直しに駆り出されることになります。

細胞株のクロスコンタミネーションは、経済的な損失にとどまらず、研究室の評判にも深刻な影響を及ぼしかねません。適切な管理体制を整えないまま、さまざまな細胞タイプを扱っていると、ある培養で使用している細胞が別の培養に混入して増殖する事態を招くことがあります。その場合、再現性のないデータになってしまい、使い物にならない恐れもあります。このようなコンタミネーションは、履歴を遡って調べることも難しく、データに疑義が生じれば、過去の論文の取り下げにも発展しかねません。

適切な管理と予防対策を導入することが、コンタミネーションのリスクを大幅に抑え、研究室の資産と信用を守ることにつながるのです。その第一歩は、コンタミネーション発生の原因を理解することです。

発生源はどこに

細胞培養の汚染物質は、大きく分けて化学的汚染物質と生物学的汚染物質の2つがあります。化学的汚染物質は、広義には、細胞培養系に望ましくない影響を及ぼす非生体物質と定義されます。最も一般的に見られるのは、金属イオンやエンドトキシン、その他の不純物を含む化学的汚染物質が、細胞培養培地作製に使う試薬や水を介して、あるいは血清などの各種添加物を介して、培地に混入するケースです。保管容器や実験器具が化学的汚染物質の汚染源になることもあります。例えば、プラスチック製チューブやストレージボトルに含まれる可塑剤が培養物を汚染することもあれば、殺菌剤、洗剤、消毒薬、殺虫剤がガラス器具やピペット、その他の用具に沈着物・残留物として残り、細胞培養のコンタミネーションを引き起こすこともあります。CO2インキュベーターで使用する不純ガスも、コンタミネーションの原因になります。意外なところでは、研究室の照明もコンタミネーションの原因になることがあります。培地が蛍光灯の光に晒されると、トリプトファン、リボフラビン、HEPESの光活性化によって培地にフリーラジカルが生成される可能性があるからです。

次に、生物学的汚染物質もさまざまな可能性があり、容易に検出可能なものもあれば、そうでないものもあるので注意が必要です。細菌やカビ、酵母は環境中に広く存在し、細胞培養物に混入すると、特に抗生物質がない場合には急速に繁殖します。抗生物質が添加されている場合には、細菌増殖の速度が緩やかになりますが、顕微鏡観察での検出は難しくなります。ウイルスや原生生物も汚染物質になる可能性がありますが、ウイルスは感染性が限られており、原生生物によるコンタミネーション発生は極めてまれです。

マイコプラズマによるコンタミネーションは、はるかに深刻な脅威をもたらします。マイコプラズマは、サイズが非常に小さく(直径0.15〜0.3 µm)、細胞壁を持たず、発育の選好性(栄養・環境要求性)が高い特性があります。その点、培養細胞は格好の養分供給源になることから、細胞に容易に感染します。このタイプのコンタミネーションの封じ込め・予防には、積極的な管理が不可欠です。細胞株のクロスコンタミネーションも重大な問題です。その影響はプレート上の感染にとどまらずに大きく広がることも少なくなく、実験データの整合性に疑義を生じさせることもあります。

生物学的汚染物質は、消耗品や実験器具から混入することもよくあります。これは、不適切な減菌処理や、保管・使用上の問題に起因します。こうした汚染物質の多くは、人や実験機器(フリーザー、遠心機、乾燥機など)、実験動物飼育施設などが大量の粒子やエアロゾルの発生源となり、空気中を浮遊します。不正確なラベリングや試料の取り扱いミスといった事故は、細胞株のクロスコンタミネーションの主因になっています。

管理体制の明確化

細胞培養コンタミネーション管理戦略を成功させる基盤となるのは、コンタミネーションの本質を徹底的に理解すること、コンタミネーション管理 プログラムの整備、整理整頓に対する各チームメンバーの高い意識です。さらに、抗生物質を控えめに使用して耐性菌の発現防止に役立てたり、細胞バンクを活用して細胞株のクロスコンタミネーションのリスクを抑えたりする取り組みも有効です。コンタミネーションを抑え、正確で再現性ある実験結果に導くうえで、確かな無菌操作手順を守ることは、何よりもシンプルにして効果的な取り組みです。

コンタミネーションの多種多様な原因の封じ込めは決して容易なことではありませんし、細胞培養のコンタミネーション管理 には、研究室メンバー全員の協調作業が必要になります。そのため、多忙な研究室のメンバーにとって、しっかりとしたコンタミネーション管理戦略の導入は厳しいこともあります。そんなとき、確かな知見を持ち、信頼のおける定評あるパートナーがいれば、こうした課題を克服し、細胞培養アプリケーションを成功に導く一助になるはずです。

私たちにお任せを

充実した細胞培養実験は、高品質な消耗品・備品から始まります。こうした製品は、コンタミネーションのリスク抑制に役立ち、一貫性、信頼性、再現性の揃った実験結果を獲得するうえで欠かせません。コーニングは、高品質な細胞培養用品を豊富に取り揃えているだけでなく、研究室の良きパートナーとして、細胞培養研究成功への道のりをともに歩みます。科学的知見と教育支援を通じて、コンタミネーション管理プログラムの立案や細胞培養研究に伴う数々の課題の克服をお手伝いします。常に研究者に寄り添い続ける良きパートナー、それがコーニングなのです。