What Is High Throughput Screening? | Corning

自動車製造や外食など、さまざまな業界で効率化と大規模化をリードしてきた自動化技術。ハイスループットスクリーニング(HTS)のおかげで、創薬の世界も例外ではありません。

ハイスループットスクリーニングとは

HTSは、所定の時間内に何百、ときには何千もの薬剤スクリーニングを高速に実行できるアッセイプロセスです。標的に対する膨大な化合物ライブラリーのスクリーニングを実現するうえで、ロボットや人工知能を始めとする先端技術が活用されています。

いわば、同一疾患の何千ものサンプルがある海に向かって、治療薬の可能性を探るための大きな網を打ち、機械の力で特に有望な化合物候補を引き揚げるようなイメージです。そこから先は人間の出番です。見つかったリード化合物について研究者が実験を重ねながら、有力候補が特に有効な反応をさせている特異的性質を解析します。

このように、HTSは単なる独立した手段ではなく、創薬全体を活性化する役割を担っています。

しかしHTSには、疾患標的にとどまらず、実に幅広いアプリケーションが考えられます。例えば、がん研究や抗生物質開発にも役立ちます。また、ゲノム解析、エピジェネティクス、免疫化学などの研究分野でも、分子・細胞アッセイが行われています。

ハイスループットスクリーニング施設

技術要件が驚くほど高かったこともあり、かつてはHTS設備を持てるのは、業界大手の大型研究所や医薬品開発受託研究機関(CRO)に限られていました。完全自動設備に絞って言えば、今もこれは変わりないようです。とはいえ、HTSがアッセイの量からスクリーニングの質へと、ある程度は軸足を移しており、規模の小さい研究所でも、膨大な化合物ライブラリーや高額な機材をもつことなく、HTS導入のチャンスは巡ってきています。

しかしほとんどのHTS施設は、それぞれ個別のニーズにもよりますが、数千種の化合物を貯蔵する、ほどほどの規模の設備があり、その多くがChemBridgeやChemDiv、National Cancer Instituteなど主要ライブラリーから入手したものです。

実験器具・設備も研究所の規模や範囲によって違いはありますが、一般に大規模スクリーニングシステム、ピペッター、遠心分離機、インキュベーター、イメージキャプチャー、プレートリーダー、リキッドハンドラー、分注器、プレートウォッシャーなどの設備が必要です。もちろん、どのHTS施設も、自動化に適した消耗品を揃えるには、Transwell ハイスループットスクリーニングシステムと専用アクセサリーなど、パーミアブルサポート対応のHTSシステムやプレートも必要です。

ハイスループットスクリーニングの進歩

HTSは劇的な進歩を遂げています。第1に、アルゴリズム学習における破壊的イノベーションを背景に、予測パターニング技術のおかげで自動化は新たなレベルに到達しています。その結果、最近では機械学習がエボラ出血熱や結核に関わる発見などにつながっています。

他のHTSの進歩は、目的や気風の変化に由来します。Technology Networksのレポートにもあるように、約10年前の業界内では、HTSは研究や新たな発想を生み出す独創的な姿勢を抑制すると考えられていたために、創薬が阻害されるのではないかとの懸念がありました。しかし、HTSは合理化されつつも戦略的に創薬を実現できるように進化しています。ハイスループットの自動化は、治療法の発見に新たな道を開き、いつの日か、高い新薬開発失敗率の解消に寄与する可能性があります。

ハイスループットスクリーニングの3D応用

スフェロイドやオルガノイドなどの3D構造を大量にテストする場合に、どうしても避けられない物理的課題や分析に伴う技術面のハードルがあるために、ほとんどの細胞スクリーニングでは2D培養が使われています。しかし、Frontiers in Pharmacology誌に掲載された研究論文にあるように、こうした2Dサンプルは手ごろではあるものの、研究対象の微小環境を完全に再現していない可能性があります。

機材や消耗品・備品、HTSシステムの進化に伴い、合成スキャフォールドや自己凝集性ハイドロゲルも生かしたHTSの3D応用が可能になっています。HTSシステムの処理能力の高さゆえに、高速・大規模に多様な組み合わせのテストが可能です。大量の組み合わせが可能になれば、その分、失敗も増えますが、この段階で失敗が多ければ、実際に患者が関わる臨床試験での失敗が減ることになります。言い換えれば、研究者が効果的な組み合わせに早くたどり着き、効果的な薬剤を迅速に上市できることを意味します。

HTS技術が次々に出現するペースや3D細胞培養の研究上のメリットを考えると、近い将来、こうしたイノベーションが具体的な形となって現れる可能性があります。少なくとも2027年までHTS産業の急拡大が見込まれており、数え切れないほどのビジネスチャンスもまず間違いなく生まれるはずです。