Scaling Vaccine Production Process Development Best Practices | Corning

新たなツールや技術の登場で、常に刷新されているワクチン製造プロセス。わずか数年前に開発されたプロセスでさえ、すっかり時代遅れになっていることもあるほどです。

このように活発なイノベーションのおかげで、研究者はプロセスを改良しながら、コスト効率や費用対効果に優れた製造スケールアップを実現する多くの機会に恵まれています。今、COVID-19のパンデミックの真っ只中にあるだけに、これは非常に大きな意味があります。しかし、その一方で、プロセス開発に取り組む研究者に重くのしかかる課題もあります。新しい手法・手段と従来の製品・システムを適合させて最適化を図るという難題が待ち受けているからです。このため、担当する研究者は気が抜けません。

製品のカスタマイズによってこのプロセスの難度が下がる可能性があり、実際、カスタマイズは必須と言えます。研究から製造まで網羅する完全なソリューションを提供するメーカーは存在しないため、複数メーカーから調達した製品・技術を上手に連携させるうえで、カスタマイズは避けて通れません。最初から最後までの全体をカスタマイズしてモジュール型プロセスを入念に築き上げておけば、バージョンが変わるたびにプロセス開発担当者が1から設定し直すこともなく、新しい技術のメリットを享受できるとJohn Yoshi Shyu博士は言います。Shyu博士は、コーニング ライフサイエンスで客先や社内に勤務するアプリケーションサイエンティストを束ねる立場にあります。こうしたアプリケーションサイエンティストは、取引先が検討している製造計画の設計・増強の意向に沿って、プロセスの最適化に当たっています。

「ワクチンの世界では、できたらすぐに使えるシステムはありえません。この領域に新しい技術が現れると、研究の現場では既存システムと新技術の連携という課題を抱えることになります。新しい技術や手法を既存のやり方に組み込むには、精密なカスタマイズが必要です。時としてこれが軋轢を生むきっかけになります。現行のプロセスに慣れている現場の人々にとって、新しい技術や手順に適応することが負担になるからです。しかも時間との戦いに明け暮れる世界です。」とShyu博士は言います。

では、ワクチン製造に従事する研究者は、カスタマイズを念頭にどのようにプロセスを最適化できるのでしょうか。Shyu博士からの助言をご紹介します。

1. フィールドサポートに対応するサプライヤーを選ぶ

テクニカルサポートに対応するサプライヤーと手を組めば、研究現場に以前からある既存のやり方について、新鮮な視点を持ち込むことができます。このような外部の意見は、歩留まり向上やスケールアップコスト削減に向け、プロセス最適化のほか、新技術の導入、カスタマイズ、トラブルシューティングといった課題に円滑に対処していくうえで参考になります。

コーニングでは、プロセス製品一式の一環として、フィールドアプリケーションサイエンティストによるサポートサービスを提供しています。

「私たちの製品がお客様のプロセス強化に確実につながるように、技術、アプリケーション、プロセス、生物学の面から研究現場を支援します。」とShyu 博士は言います。

2. 不要な改良に投資しない

すべての研究所に最大・最高水準のバイオリアクターや驚異的な最新技術が必要なわけではありません。費用的にも、すべての研究所がまかなえるわけではありません。特に助成金頼みの小規模の学術系研究室となれば、なおさらです。

研究のニーズを明確化するため、まず予算を考慮しながら短期・長期の治療法開発目標を設定し、続いて予算を最大限に生かす味方になってくれそうなメーカーをパートナーに選ぶことが大切です。Shyu博士によれば、メーカーからは次のような事項を質問されます。

  • どのようなスケールを達成したいのか
  • いつまでにそのレベルに到達したいのか
  • 現在の技術・インフラの状況

「気の利いたメーカーなら、こうした質問を通じて、最も効果的で最適なカスタムシナリオを見つけ出してくれます。私たちがよく代案として提示するのは、当初の計画よりも経済的負担を抑えつつ、お客様の状況を改善できる戦略です。」とShyu博士は言います。コーニングのフィールドアプリケーションサイエンティストにとって、ゴールは顧客の成功であって、当社の売り上げを増やすことではありません。代案の、カスタマイズした戦略には、想定より安価な機材の購入のほか、高額品の場合はモジュール方式により設計段階から関与するといった方法が挙げられます。

3. サプライヤー側にライフサイエンスの専門家が揃っているかどうか確認する

プロセス開発にエンジニアは欠かせませんが、同じようにライフサイエンスの専門家も重要です。プロジェクトの担当者として、エンジニアとライフサイエンス専門家の両方を送り込んでくれるサプライヤーであれば、技術導入完了後、細胞培養を維持し、目的の産物を生産するなど、科学的な成果に向けて取り組む体制が確立しやすくなります。

「プロセス開発は、ワークフロー最適化のための技術導入がすべてではありません。実際の科学研究のために条件を最適化する取り組みでもあるのです。取引先サプライヤーからはエンジニアによるサポートしか得られず、生物学の経験が豊富なスタッフによる追加支援が得られない場合、そのような研究面の要素や、製造時に遭遇する潜在的な問題を解決する機会を失うことになります。」とShyu博士は述べています。

4. モジュール化をめざす

モジュール型でスケール変更可能な製造体制を構築すると、短期的なコスト管理が実現するだけでなく、必要に応じて新技術で新たな製造ニーズに適応する柔軟性も確保できるという、2つの側面でその長所を生かすことができます。

この柔軟性があれば、どのような市場でも、とりわけ、変化が目まぐるしく競争が熾烈な市場であっても、大きな効果を発揮できます。モジュール化を進めると、研究室としての体制が強化されるだけでなく、臨床需要の変動への適応・対応力アップにもつながります。

「市場の潜在的な変化にどのように対応しますか?モジュール式の拡張に対応する技術に投資すれば、いつでも必要に応じてスケール変更が可能です。今日はバッチ当たり100,000回分だけでいいけれど、明日はバッチ当たり200,000回分が必要といった変動がある場合でも、わざわざ代わりの技術の調査に時間をかけることなく、既存プロセスの調節で済みます。」とShyu博士は言います。

Shyu博士はこの柔軟性を積み木に例えて次のように説明します。「100個入りの積み木セットを買ってきて、10階建てのビルを作ったとしましょうか。その後、さらに2階分のフロアを追加したければ、必要な数の積み木を追加購入すればいいわけです。10階建てのビルに相当するセットをもう1つ購入する必要はありません。別の構成(5階建てのビルを2棟など)に変更したり、別の種類の積み木を組み入れて新たなデザインや特徴を活かしたりすることも可能です。」

バイオプロセスにも同じことが当てはまります。(積み木のように)モジュール式であれば、いきなり大がかりな設備に先行投資するコストを回避でき、新たな製品や技術が市場に出回ったときに追加や付加に踏み切る柔軟性が生まれます。

プロセスをカスタマイズして適応力アップ

研究室の規模を問わず、適切なパートナーの支援があれば、プロセスはカスタマイズできます。その結果、将来のイノベーションも取り込めるようになります。ワクチン製造の場合、いつ次の大きな動きがあるのか予測できません。ここに挙げたヒントを生かすことで、既存の環境に縛られることなく、プロセスやゴールのスケールを変更できるのです。