細胞タイプ別表面ガイド:最適なコーティングを選ぶために

細胞の形態や表現型、機能に影響を与えるコーティング済み培養容器の表面選定は、上流・下流の細胞培養アプリケーションを念頭に、最適な表面を選ぶ必要があります。実験で細胞タイプに最適な培養表面を使うことで、実験データの変動要素の抑制や、in vivo条件の厳密な模倣、細胞増殖の促進、目的のエンドポイントの達成が可能になります。

ただし、表面選定は必ずしも単純明快ではありません。選択肢は際限なく広がっていて、特性が重複しているものも少なくありません。これでは、どれが自分のニーズに最適なのか、容易に見極められません。そんなときに頼りになるのが、このガイドです。

知っておきたい3つの表面カテゴリー

実験に最適な培養容器を選定する際、天然由来細胞外基質(ECM)タンパク質コーティング、ミメティック(模倣物)コーティング、合成表面の3種類がある点を理解しておくことが大切です。

  • 天然コーティングにはECMと生物学的コーティング済み表面があり、2D培養や3D培養向けにin vivo環境を模倣できます。選択肢としては、コラーゲンラミニンのほか、Corning® マトリゲル基底膜マトリックスなどの表面があります。
  • ミメティック(模倣物)コーティングには、ECMミメティック表面や最先端表面があります。独自の機能性表面活性により、細胞増殖やアッセイの特殊なアプリケーションに対応できます。主に細胞治療に利用されているミメティックコーティングは、少量の合成タンパク質で接着を支えます。
  • 合成表面は、細胞タイプによって正の電荷、負の電荷、正負の電荷のいずれかを持たせて培養容器に手を加えた接着強化型の表面です。合成表面は、低血清・無血清環境で、初代細胞株やトランスフェクトされた細胞株を含む偏好性細胞の接着・増殖を促進します。

選定のためのチェック項目

上記の3つの細胞タイプ別表面の中から実験に最適な表面を見極めるため、以下のチェック項目を確認してみましょう。まずは実験目的にしっかり着目します。

  • どのような生理機能について実験しますか?自分の実験目的に最も当てはまるのは、どのようなアプリケーションですか。細胞の増殖について調べるのであれば、使用する細胞タイプに合わせて、コラーゲンかマトリゲル基底膜マトリックス、あるいはラミニンも候補に入ってきます。
  • どのような由来の細胞ですか?表面選択は、初代細胞・細胞株を使うのか、それとも前駆細胞や幹細胞を使うのかといった細胞の由来によっても異なります。
  • どのような細胞活性を期待していますか?実験手法によって、必要な表面メカニズムも異なります。治療法のために幹細胞を拡大培養するのであれば、ミメティック表面が最適と考えられます。しかし、3D環境でのオルガノイド培養の場合、スキャフォールドとECMが必要です。
  • 細胞増殖でトラブルに見舞われたことはありますか?以前の実験で、細胞増殖が進まない、接着が弱い、うまく分化しないといった問題を抱えて、播種細胞数を増やした経験がありませんか。その場合は、表面タイプの選択を誤った可能性があります。別の表面に切り替えてみて、増殖に変化が見られるか確認しましょう。
  • ワークフローは細胞の耐久性にどのような影響を及ぼしますか?特定の培養に必要な下流のステップが、細胞増殖にどのような影響を与えるのか検討します。例えば、ハイスループットスクリーニングアッセイなど、セルベースアッセイでは、徹底した洗浄が求められます。細胞がしっかりと接着していない場合は、洗浄時に流れてしまう恐れがあります。

表面選定は、経験を積んだ研究者にとっても煩雑なものです。コーニング ライフサイエンスでは、最適な表面の選定に役立つクイックガイドを2種類用意しています。1つは取り扱い表面ガイド、もう1つは細胞タイプ別選定ガイドです。