Cellular Scaffolding and Modern Tissue Engineering | 3D Cell Culturing | Corning

生物医学が始まって以来、研究者たちは細胞培養で細胞を増殖させる方法、そしてその細胞から組織を培養する方法、さらには組織から臓器を作り出す方法を解明することを目指してきました。このプロセスを飛躍的に進歩させた理由の一つが細胞スキャフォールドです。細胞スキャフォールドの上で細胞は規則的に増殖することが出来ます。

近年3D細胞培養や組織工学においてスキャフォールドを用いない多様な方法が登場しています。それらは、スキャフォールドを用いる場合にはない欠点もありますが、それを上回る利点もあります。スキャフォールドを用いることが適しているアプリケーションもありますが、用いないプラットフォームの方が適しているアプリケーションもあります。それらの違いを知ることは、時間とお金を節約し、失敗した実験をやり直すフラストレーションを避けるために非常に重要です。

将来的には幅広い種類の高度に特化した類似体を作成することを目標としています。それは、in vivoの細胞機能を階層的にコントロールしている細胞や組織タイプそれぞれを再現してゆくことで実質的に生物学的条件を再現しようというものです。

 

スキャフォールドを用いたプラットフォームは有用ですが、どのような状況でも適しているわけではありません

 

ある種の物質、特にハイドロゲルを使用してタンパク質マトリックスを安定的に維持することで、生きた動物の細胞外基質(ECM)を模倣できるようになり、近年この分野は信じられないほどの躍進を遂げてきました。

これにより様々な細胞タイプの3D培養を行うために完璧な、よりin vivoの生物学的条件に近いの環境を作ることが出来るようになりました。

しかし、限界もあります。特に、ハイドロゲルは大部分が均質で、そのため実際の細胞が置かれているようなin vivo 条件の勾配を常に模倣するとは限りません。細胞はこれらのゲルのタンパク質マトリックスに接着することもあります。細胞がゲルに沿って増殖するにつれ、実際の生物学的増殖とは徐々にかけ離れていきます。多くのプロセスが正常に進行するには細胞外基質(ECM)が必要ですが、必要としないプロセスも多くあります。特に、この種の研究の対象となる多くの疾患細胞は細胞外基質(ECM)を必要としません。

そのため今日では、体内の多種多様な細胞タイプの類似体に適した環境を作り出すために、ハイドロゲル、パーミアブルサポートや、ナノファイバーなど細胞増殖のための幅広い形態の足場材料が存在します。オルガノイドモデルには試験環境を通して細胞の正常な増殖を補助するためにタンパク質スキャフォールドがよく用いられます。

多様な細胞スキャフォールドにより、各種多様な細胞プロセスがより自然に進行できるようになり、それによってin vivo挙動に関する有意義な実験データが得られます。

 

増加するスキャフォールドフリー手法

 

スキャフォールドを用いた細胞培養に限界が見えてきたのと同時に、必要な結果を得るための新しい技術も開発されてきています。その結果、スキャフォールドを用いない幅広い細胞培養の手法がますます増えつつあります。

スキャフォールドを用いないプラットフォームの第一形態は、スフェロイドプラットフォームです。これは、それ自体が細胞外基質(ECM)を生成する多細胞の凝集体です。スフェロイドは、ハンギングドロップ法や、スピナーフラスコや、磁気浮上を用いたものなど様々な手法を用いて作製することができます。超低接着表面と適切なウェル形状のマイクロプレートを用いると浮遊培養で単一スフェロイドを形成できます。

より自由な形の培養環境では特定組織の特徴をより明確に示す組織が培養できます。特に癌組織の増殖では細胞スキャフォールドへの厳密な接着を必要としません。スキャフォールドを用いない培養方法は、細胞の正常な増殖制御機序を無視する腫瘍細胞を研究するための強力なツールです。

スフェロイドが機能しているときはより自然に見える結果が得られます。ただし、スフェロイドが機能するためには、自力、または人為的な補助によって、正常に増殖できている必要があります。多くの細胞タイプは、体内で他の細胞により作られる環境に非常に依存しており、そのことがin vitroでの培養をより困難にしています。このような場合に、スキャフォールドを用いたアプローチを試す価値があります。

 

より複雑なモデルには手法の複合が必要

 

一部のタイプの組織は、単一の手法を用いてその組織の特性を発現させることができますが、多くの複雑な生物学的構造は、非常に特異的な培養環境を必要とします。複数組織からなる臓器の働きを正確にシミュレーションするためには、細胞スキャフォールドを用いる場合と、用いない場合を含めた複数の細胞培養技術の複合が必要となるでしょう。

これらの階層的な相互作用が生物医学研究者たちを大変混乱させてきました。

しかし、細胞はそれらが構成する臓器と同じく階層的な複雑なシステムであることを思い出してください。複合システムを作成しようとする場合はいつでも、少なくともその下層システムである増殖システムの大部分を模倣しなくてはならないでしょう。そして、まさにこれができるようになり始めているのです。