凍結保存の良し悪しで、細胞が長期間生存することもあれば、すぐに死んでしまうこともあります。Nature Protocolsによれば、優れた凍結方法は次の10の基本手順に沿っています。
- 凍結用容器を4°Cに冷却します。使用プレートが6ウェルか48ウェルかによりますが、クライオバイアル(クライオチューブ)ごとに少なくとも1つか2つのコンフルエントなウェルを確保します。
- 1,000 μLピペットと500 µL〜1,000 µLの基礎培地を用いて、培地をピペッティングして、オルガノイドが含まれる基底膜マトリックスを破壊します。
- オルガノイド懸濁液を15 mL遠沈管に移します。
- 冷却した基礎培地をオルガノイドに加え、再懸濁を繰り返して基底膜マトリックスを除去します。
- 8°C、100×g〜200×gで5分間遠心します。
- 上清約2 mLを残して吸引します。オルガノイドが崩壊して単一細胞にならないように注意してください。
- オルガノイドに冷却した基礎培地をさらに加えます。
- 8°C、200×g〜250×gで5分間遠心します。
- 上清をすべて吸引してから、使用プレートが6ウェルか48ウェルかに応じて1ウェルまたは2ウェル当たり500 µLの凍結保存培地で再懸濁します。
- 懸濁液を500 µLクライオバイアルに移し、凍結用容器にセットします。すぐに凍結用容器を-80°Cの環境に移します。最低24時間そのままの状態に置いてから、液体窒素タンクに移し、オルガノイドを長期冷凍保存します。
注意:凍結保存用培地には、室温下で細胞に毒性を持つDMSOなどの凍結保護剤(CPA)が含まれています。凍結保存時の細胞生存率を高めるため、細胞回収時に室温下でCPAに過剰に曝露しないようにしてください。
凍結対象は単一細胞ではなく、毎日、成長し複雑化していくオルガノイドだという点に留意しましょう。
コーニング ライフサイエンスのシニア・アプリケーションズ・サイエンティスト、Hilary Sherman氏は、次のように語ります。「凍結時のオルガノイドのサイズは、最終的に解凍する際の回復状態に大きな影響を与えます。一般的には、小さなオルガノイドのほうが凍結融解プロセス後にはるかに高い生存率を示します」
Sherman氏によると「培養物を正しく保存すれば、最大10年もの長期保存が可能です。新たな情報が出てくることを考えると、長期間保存できることは有用性が高く 、実験のメリットにつながります」
「研究者がオルガノイドをこのように長期間保存したいと考える理由はさまざまです。ライブラリーを構築している場合、何年も前に患者から採取した検体を使ってテストしてみたい治療法候補が浮かび上がることもあります。あるいは、ポスドク前に研究に着手した研究者が異動したため、その研究を引き継ぐこともあります」とSherman氏は言います。