Tissue Engineering: The Latest 3D Cellular Models for Respiratory Drug Development | 3D Cell Culture Solutions | Corning

呼吸器疾患研究用に予測性をさらに高めた3D細胞モデルの構築に向け、最新細胞培養技術を活用するスイス企業の取り組みとは

喘息から嚢胞性線維症(CF)や肺がんに至るまで、ヒト呼吸器疾患によって、毎年世界中で多くの命が奪われています。こうした疾患は、致命的ではなくても、長期に渡って身体に苦痛を与え、生活の質を大幅に落とす原因となります。しかも、医薬品開発の失敗、とりわけ動物モデルでの代表性を欠いた研究に起因する場合は、問題を悪化させるうえに、業界にとってコストもかさみます。

加えて、動物実験に対しては、「Reduction(使用数の削減)」、「Refinement(苦痛の軽減)」、「Replacement(代替法の利用)」を推進する、いわゆる「3R」の原則に関する政策もあり、組織工学的手法を駆使してなるべく実物に近づけた最新のヒト細胞モデルの導入を促進する条件が整っています。モデルの予測性が高まれば、創薬の質もスピードも上がり、苦痛の緩和効果も高まります。スイスに本拠を置くバイオテック企業、Epithelixは、開発段階にある薬剤効果の評価や化学物質がヒト気道に及ぼす毒性評価を対象に、動物実験に代わるin vitroソリューションを専門に手がけています。

完璧な代替組織になるのか?

ジュネーブ郊外に拠点を構えるEpithelix社は、研究歴18年の有機合成化学者で現COO(最高執行責任者)のSamuel Constant博士らが共同で創業しました。Epithelix社は、鼻組織から気管組織、気管支組織まで、気道のさまざまな領域を代表するヒト気道上皮の最新3Dモデルを開発し、呼吸器疾患研究用として全世界に輸出しています。また、同社は、独自のモデルを生かし、委託研究を請け負って、喘息から慢性閉塞性肺疾患(COPD)、細菌・ウイルス感染症に至るまで、呼吸器疾患のin vitro試験の新手法の開発も手がけています。

Constant博士らは、細胞培養技術や組織工学の最新のイノベーションを活かして、こうした最先端の細胞モデルを作製し、Corning パーミアブルサポート製品を使用して必要な細胞分化を実現しています。

最先端の細胞培養

Epithelix社では、外科手術で摘出された初代細胞をコーニングのTranswell® パーミアブルサポートに播種します。細胞リプログラミングにより、必要なタイプ(例えば鼻や気管など)に完全分化した上皮を作製します。この上皮は、生体組織と同じ形態・機能を備えています。Constant博士は次のように説明します。「当社が細胞の接着に使用しているTranswell メンブレンは、分化や、早期に標準化されたin vitroモデルの組織の作製に最適です。この組織モデルは世界中のお客様に提供されています。」

同社がコーニングのパーミアブルサポート技術を採用した理由について、Constant博士は、「ロングセラー製品であることや(コーニングの)担当チームとの良好な関係はもちろん、何と言っても、Transwell パーミアブルサポートの優れた再現性です。」と明快です。

Epithelix社の組織モデルは、創薬・薬剤試験業界にとどまらず、驚くほど多岐に渡る分野で使用されています。このモデルは、気道に到達する可能性のあるあらゆる吸入化合物(大気汚染物質やナノ粒子、煙粒子、防臭剤、消臭スプレー・芳香剤など)の毒性評価にも用いられます。

今後の展開

創薬における気道3Dモデルの今後について、Constant博士は次のように明確な展望を示しています。「がん研究を始め、さまざまな領域でin vitro肺モデルのニーズが高まります。大気中化合物の毒性の有無や、呼吸器疾患の治療薬候補の効果判定に使えるin vitroツールとして、予測モデルがますます必要になります。」

また、博士は、動物実験の代替となるモデルが一層重要になるとして、「創薬の動物実験をさらに削減し、場合によっては代替法を採用するために、こうしたモデルの必要性はますます高まります。」と断言します。

Epithelix社の今後についても、新規モデルの開発とこうしたモデルのin vitroテストを挙げ、同社のこれからの取り組みに大きな期待を抱いていると言います。「例えばウイルス・細菌感染症の研究や細菌の混合など、共培養で他の多くのモデルを導入しています。また、実際の生体組織に近づけるため、より複雑なモデルを作製していきます。」

最後にConstant博士は、今後について大きな意気込みを見せています。「未来への進歩は目まぐるしいものがあります。組織工学の領域を把握したと思ったら、今度は3Dプリンティングとの関わりが出てきて、ビッグデータの問題まで絡んできます。こうした領域は相互に影響し合っていて、将来、強力な研究ツールを誕生させるでしょう。」

コーニングのTranswell パーミアブルサポート製品について、詳しくはこちらをご覧ください。