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以下は、2022年9月27日にBiocompareに掲載された記事を翻訳したものです。

粉末培地調製を成功させる秘訣

液体培地は細胞培養や流加培養プロセスに広く利用されていますが、どの細胞タイプやアプリケーションでも利用できるわけではありません。液体培地が使用できない場合を含め、粉末培地を用いた自前の培地調製がよく行われますが、これにはさまざまな利点があります。そこで今回は、粉末培地調製の具体的な内容を解説し、お薦めのベストプラクティスを紹介します。

粉末培地調製の利点とは?

研究者が自前の培地調製を検討する理由はいくつかあります。グローバルなサプライチェーンの混乱などで納期遅れが発生している場合には、粉末培地から培地を調製した方が、実験が早く進む可能性があります。さらに、培地(培養液)1リットル当たりの購入価格で見ると、調製や濾過のコストを考慮しても、往々にして粉末のほうが安上がりです。自前調製にはもう1つ重要な利点があります。液体培地は添加剤が加えられていることがありますが、粉末の場合、こうしたものを添加せずに基礎培地を調製できます。さらに、多くの液体培地は有効期間が短いのに対して、粉末による自前調製であれば、期限の問題を回避しやすいうえ、冷蔵庫・冷凍庫の保管スペースも不要になります。

粉末培地による培地調製の実際の内容とは?

粉末培地による培地調製は、それほど複雑なものではありません。最初に、計量した粉末を希釈液に加えます。希釈液は主に細胞培養グレード水が用いられます。使用する希釈液の量は、最終的な培地量の70〜80%程度とし、粉末培地を加えたら、マグネチックスターラーで混合します。溶液と粉末を混合する際、組成によってはpHの調整(通常は1MのNaOHかHClを使用)が必要なこともあります。その後、添加剤(例えば炭酸水素ナトリウムなどの緩衝剤やL-グルタミンなどのアミノ酸)を加えてから、最終的な培地量になるまで希釈液を足していきます。溶液が完全に混ざり、最終的なpHを確認したら、滅菌濾過ユニット(孔径0.22 µmを推奨)で濾過して細菌を取り除きます。この最後の手順は、滅菌性を維持するため、安全キャビネット(BSC)で実施することが大切です。

粉末培地調製のベストプラクティス

粉末培地調製で市販の液体培地と同等の品質を確保するために、お薦めしたいベストプラクティスがいくつかあります。具体的には、粉末培地は信用のあるサプライヤー(詳細な品質保証書や再水和方法の総合説明書を提供できるサプライヤー)から購入すること、添加剤が加えられている場合には細胞培養グレードの証明付きであることなどが挙げられます。

製品の取り扱い方法に一貫性を持たせることも大切です。培地調製法がほんのわずかに変化しただけでも、細胞増殖に影響を及ぼし、実験結果を歪める恐れがあります。代謝や細胞シグナリングなどの生物学的プロセスに影響しないように、pHは、常にメーカー指定範囲に収まるようにします。同様に、粉末が完全に溶けて均質になったことの確認と、細胞の膨張・収縮を防止するために、モル浸透圧濃度(単位容積中の総溶質濃度)は所定の限度内に収めます。

このようにして得られた溶液を濾過する際には、細心の注意が必要です。濾過は調製工程の最終段階であり、この後は培地に生細胞を加えることになるため、濾過段階に入ったら適切な無菌操作が肝心です。その際、使用する濾過ユニットに合った真空圧になっているかどうか確認を怠らないようにします。真空圧が高過ぎると、ボトル破損やフィルター断裂のリスクがあり、意図せぬコンタミネーションを招きかねません。濾過ユニットは、低タンパク質結合の確認(培地成分がフィルターで除去されないため)や、経時変化した保存用ボトルから細胞増殖低下につながる物質が溶出しないかどうかの検証を含め、しっかりとした品質管理証明書が付属したものを使用します。

最後に、培地が使用可能になったら、基礎培地名、添加物の濃度、調製日などの情報を明記したラベルを貼ります。メーカーの指示書に沿って保管し、記載の有効期限までに使用できなかったものは、適切に廃棄します。

コーニング ライフサイエンスでは、幅広い粉末培地、細胞培養グレード添加剤、滅菌濾過ユニットなどをそろえています。