コーニング3D細胞培養サミット2024

研究者や業界専門家が一堂に介し、2日間にわたって新たな3次元(3D)細胞培養研究への理解を深め、ベストプラクティスを話し合うコーニング3D細胞培養サミット。米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコを会場に、コーニング主催の2024年3D細胞培養サミットが開催されました。

2024年10月15日・16日に開催された同サミットでは、プレゼンテーションや会場参加型のパネルディスカッションで、3D培養による疾患モデル構築、オルガノイド培養やスフェロイド培養の最新ツール、3Dワークフロー最適化、3D培養によるトランスレーショナルリサーチなどの論題が取り上げられました。

今回は、2024年コーニング3D細胞培養サミットから、プレゼンテーションのハイライトをいくつかご紹介します。

創薬と医薬品開発

UFスクリプス研究所(The Herbert Wertheim UF Scripps Institute for Biomedical Innovation and Technology)のシニア科学ディレクター兼研究教授であるTimothy Spicer博士は、3D培養の生理学的関連性の高さをテーマに講演し、研究室の3Dがん研究で採用している革新的手法について論じました。

Spicer博士の研究室では、Corning® 1536ウェルスフェロイドマイクロプレートを使い、薬剤応答アッセイ用の均質なスフェロイドをハイスループットで作製しています。同研究室が悪性・非悪性の細胞タイプを対象に、2Dと3Dで4,000点のFDA承認薬を試験したところ、2D培養の細胞に見られる薬効が、3D培養の同一細胞で必ずしも再現されないことがわかりました。3D培養のほうが、生理学的に関連性が高いため、この違いを生かせば、3D培養は高生理活性の新薬効を選別する優れたスクリーニング法になるとSpicer博士は説明します。

また、博士は、同研究室と臨床医との協力により、患者由来がんスフェロイドを使って患者の腫瘍の薬剤感受性を判定する研究も報告しました。Spicer博士は、同研究室が行ったCorning Elplasia® 12Kオープンウェルプレートを使ってがんスフェロイドを培養する実験と、Corning Synthegel® 3D hiPSC浮遊用マトリックスキットでiPS細胞を培養してニューロンに分化させる実験の初期データを発表しました。

FibroBiologics社の最高科学責任者、Hamid Khoja博士は、「複数慢性疾患の治療のための線維芽細胞スフェロイドの潜在的使用」と題した講演で登壇しました。Khoja博士によれば、FibroBiologics社では、線維芽細胞を使ったスフェロイドやオルガノイドによる治療薬の開発をめざしています。すでに1薬剤が第I相臨床試験に進んでいるほか、さまざまな病状を対象とした複数薬剤が前臨床段階・探索段階にあります。

Khoja博士は、線維芽細胞由来のスフェロイドが間葉系幹細胞よりも優れた点として、患者からの採取が容易、製造コストが安い、生存率が高いなどの優位性を示しました。Khoja博士は、同社によるCorning Elplasia 12Kフラスコでの線維芽細胞スフェロイド作製の結果を紹介しました。

3D細胞培養モデル

ワシントン大学(University of Washington)医学部准教授で、Plurexa社の最高科学責任者のBenjamin Freedman博士は、「Modelling Polycystic Kidney Disease and Ciliopathies with Human Kidney Organoids(ヒト腎オルガノイドによる多発性嚢胞腎および繊毛関連疾患のモデル構築)」と題した講演を行いました。多発性嚢胞腎(PKD)のin vitroモデルは、開発が困難でしたが、Freedman博士の研究室ではCorning マトリゲル基底膜マトリックスでiPS細胞から分化させた腎オルガノイドでPKD嚢胞形成のモデル化を実現しています。

Freedman博士によれば、この腎オルガノイドは溶質輸送機能を備えているため、ヒトPKDや繊毛関連疾患の病態生理学と遺伝的基盤の洞察を提供することができます。Freedman研究室の研究チームは、PKDオルガノイドを使ってPKD薬剤候補の試験を行い、広く利用される腎疾患薬剤開発プラットフォームの研究に取り組んでいます。

3D細胞培養のヒント、秘訣、トレンド、ツール

コーニングのシニアアプリケーションサイエンティスト、Hilary Sherman氏は、「Tips and Tricks for Optimizing your Spheroid and Organoid Cultures(スフェロイドやオルガノイドの培養を最適化するヒントと秘訣)」と題した講演を行いました。Sherman氏は、スフェロイド実験のデザインに当たって、スフェロイド培養のための播種細胞数の決定方法、適切な細胞タイプでのタイトなスフェロイド形成の促進方法、ウェル内での微小な「サテライト」スフェロイドの形成を防ぐ方法など、考慮すべきポイントがいくつかあると指摘しました。

オルガノイドの培養の場合、Sherman氏は、さまざまなハイドロゲル培養法を取り上げ、オルガノイド培養にマトリゲル基底膜マトリックスを用いる際のヒントや秘訣を披露しました。また、Sherman氏は、後工程の処理用にマトリゲル基底膜マトリックスからオルガノイドを遊離させるためのCorning セルリカバリーソリューションや、3D培養のハンドリングを簡略化するAxygen® ワイドボアチップなど、作業の効率化につながるコーニングのツールやプロトコールを紹介しました。

コーニングのシニア開発エンジニア、Tom Cloutier氏は、スキャフォールドフリーの3D細胞培養について、Elplasia テクノロジーによる製造のスケールアップをテーマに講演を行いました。Cloutier氏は、コーニングによる細胞培養のイノベーションの歴史を振り返り、Elplasia テクノロジーの特長や利点、利用可能なオプションについて解説しました。Elplasia プラットフォームの大きな利点の1つに、スケーラビリティが挙げられます。薬剤の探索研究には、スクウェアボトムとラウンドボトムのElplasia プレート、スケールアップやプロセス開発には、Elplasia 12Kフラスコとプレートが用意されています。

コーニングでは、同プラットフォームのスケーラビリティをさらに高めるため、大スケール製造に用いるElplasia 48Kベッセルの開発を進めています。また、Cloutier氏は、Elplasia 48Kベッセルの試作品を使ったスケールアップ実験の初期結果の一部も公開しました。

コーニングとともにめざす3D培養成功への道

詳細についてはコーニング主催2024年3D細胞培養サミットのウェブページでオンデマンド型のプレゼンテーションをご覧ください。また、コーニングのサイエンティストへのご相談も承ります。