間葉系幹細胞(MSC)単離法の比較|酵素法およびexplant培養法

間葉系幹細胞(または間葉系間質細胞、MSC)は、再生医療、組織工学、各種治療応用の領域で多大な可能性を秘めています。MSCの可能性を引き出すうえで、極めて重要な第一歩となるのが単離です。

研究室の運営や戦略策定を担う責任者にとって、MSC単離法が持つ意味合いを理解しておくことが大切です。意思決定に当たっては、プロジェクトの当面のニーズだけでなく、遺伝的安定性や、細胞製造のスケールアップの可能性など、長期的な影響も考慮しなければなりません。

MSC単離法入門

当初、MSCの単離には、細胞培養用プラスチック製品が使われていました。これは主に骨髄や脂肪組織から接着細胞集団を単離する製品です。この方法が有効とされていたのは、他の細胞タイプからのコンタミネーションを最小限に抑えたMSCが中心の集団を産生する場合です。しかし、生物工学的プロセスの進歩に伴い、さらに洗練された手法が出現してきました。

現在、MSC単離手法は、酵素法とexplant法(培養液で維持された移植片からの遊走細胞を培養する手法)の2つが主流です。どちらの手法も、それぞれ固有のプロセスと結果があり、アプリケーションや研究のニーズによって向き、不向きがあります。つまり、各手法を理解しているかどうかで、研究室としての計画策定や意思決定のプロセスが大きく変わってくる可能性があります。特に、必要な消耗品・備品の計画立案や調達の責任者にとって重要な意味があります。

酵素法:迅速で効率的

酵素処理による単離法は、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシンなどのタンパク質分解酵素を使って組織を消化し、細胞を単離します。このプロセスで細胞外基質が分解されて、個々の細胞が懸濁液に放出されます。これを細胞培養用プラスチック表面に播種します。この手法の最大の利点はスピードです。基本的には約7日以内で細胞がコンフルエント状態に達するため、迅速な細胞増殖が必要なプロジェクトに適した手法と言えます。

しかし、短所もあります。組織の過剰消化があると、細胞損傷を招くことがあり、単離したMSCの生存能と機能が損なわれます。さらに、酵素消化の過酷な影響を相殺するため、beta-FGFやPDGFなどの増殖因子で初代培養を確立・維持する必要があります。こうした因子は、細胞増殖を促進する一方、細胞単離プロセスの複雑化やコスト増につながる面もあります。

こうした課題はあるものの、時間が限られていて、治療用量の要件に合わせるために高細胞収率が求められる臨床の場では、酵素法が多く好まれます。

細胞完全性を保持するexplant法

酵素法とは対照的に、explant法は、組織の解離に酵素の力を利用しません。組織片を細胞培養表面に直接置きます。時間の経過とともに、tissue explant(生体から取り出して培養液中の生かしたままの組織)から細胞が遊走し、プラスチック表面に接着します。一般にこの手法は、細胞がコンフルエント状態に達するまでに最大15日必要になるなど、時間がかかる場合が多いものの、特に細胞品質の面で大きな利点があります。

explant法の大きなメリットの1つに、細胞集団倍加時間が短い点が挙げられます。これは、細胞変化のリスク削減や遺伝的安定性の保持、細胞の幹細胞性の保持において極めて重要です。さらに、この手法は表面マーカーの発現を変化させません。これは、MSCがその基本的特性を確実に保持するうえで欠かせません。酵素による消化がないために増殖因子を補う必要がなく、MSC単離の全体的なコストを削減できます。

explant法は、生物学的浮動を最小限に抑えた細胞を産生し、治療応用の細胞源としても信頼性と一貫性が高いため、細胞バンクを作成する際に特に好まれます。

MSC単離の収率向上法

どのような単離法であっても、機能強化型の細胞培養表面を使用することで、細胞単離の結果を大幅に改善できます。Corning® CellBIND® 表面 などの製品は、細胞接着を強化し、酵素法でもexplant法でも増殖と収率の向上を促進させます。これは、効率性と経済性が最優先の研究室環境では特に有益です。

また、高品質細胞の安定供給を確立するために、単離段階でマスター細胞バンクとワーキング細胞バンクの両方の樹立をおすすめします。このアプローチでは、細胞製剤開発・製造プロセスにおける混乱の発生が最小限に抑えられるため、実験・臨床のさまざまなアプリケーションで一貫性のある細胞性能を確保できます。さらに、単離細胞の有用性と寿命を最大化するには、MSCの細胞集団倍加数を最大15回に明確に制限し、細胞バンクサイズを綿密に計画することも重要です。

適切なMSC単離法の選択ができるかどうかが、幹細胞の研究やアプリケーションの効率、コスト、品質を大きく左右します。ラボマネージャーとしては、酵素法とexplant法のそれぞれの利点や限界を把握しておけば、プロジェクトのスケジュールやゴールを踏まえ、十分な情報を基に意思決定を下せるようになります。CellBIND 表面などの機能強化型細胞培養製品を使用すると、こうしたプロセスがさらに最適化されるため、研究室での高度な細胞培養法の導入を成功に導く一助となります。