3D Cell Culture Models and Techniques | Drug Discovery and Advanced Therapeutics Trends

3D培養のイノベーションで臨床研究やトランスレーショナルリサーチが変わりつつあります。研究機関や製薬企業の間では、創薬への3Dモデル利用が増加傾向にあり、また3D培養が細胞治療用製品など先端医療の最前線を支えています。

この記事では、創薬や細胞療法研究に3D培養を活用するイノベーション事例をご紹介します。さらに、3D培養の今後の動向や、3Dを巡る課題への研究者・技術者の取り組みについて考えます。

創薬や先端医療を支える3D技術の最前線

創薬や先端医療を支える3D技術の最前線

創薬を支える3Dモデル

3D細胞培養法の適応性やスケーラビリティのメリットを活用している研究機関や製薬企業が増えています。小スケールの複雑高度なアッセイからハイスループットスクリーニング(HTS)まで、3Dモデルの採用により、従来の2D培養に比べて、化合物スクリーニングの際の生理的妥当性を大幅に高めることができます。

米スクリプス研究所のTimothy Spicer博士の研究室では、Corning® 1536ウェル スフェロイド マイクロプレートをベースにした超ハイスループット3Dスクリーニングシステムで、3D技術をさらに進化させています。同研究室では、このシステムでメラノーマをはじめとするがんを対象に、数十万もの化合物を3D環境で評価できるようになりました。

3D細胞培養のツールは単体で利用しても高い生体模倣性が期待できますが、こうしたツールを組み合わせると、使い慣れた方式で革新的実験ができる先進的培養環境を構築できます。そのような発想で研究グループが生み出したモデルに、血液脳関門(BBB)モデルがあります。これは、脳内への分子やイオンの移行を制限・制御する関門です。Corning Transwell® インサートでBBB細胞種の単層を培養し、このインサートを、Corningスフェロイドプレートで3D培養した脳組織上に重ねて配置することで実現しています。薬理学研究者にとっては、このモデルは、創薬で重要なポイントとなる薬物のBBB透過性を予測する際に役立ちます。また、このモデルは、疾患によってBBB機能がどのように変化するかを理解するツールにもなります。

細胞療法を支える3D技術

3D培養技術は、治験段階の細胞療法の開発にも寄与しています。このような療法は、培養細胞や改変細胞の患者への移植を伴うからです。例えば、特定の細胞種の場合、単一細胞の懸濁液ではなく凝集塊を注入すると、投与後の治療用細胞の生存率が向上します。

コーニング ライフサイエンスのフィールドアプリケーションサイエンティスト、Whitney Cary Wilson氏は、3D構造を保持した細胞療法には期待できる利点があるとして、次のように説明します。「細胞自体は、基本的に孤立を避けようとする性質があります。本来は組織に存在する細胞種を注射する状況を考えてみましょう。その場合、凝集した状態で移植するのが好ましく、そのほうが生存率も高く、患者への生着率も長期的に高くなります」Wilson氏によれば、組織再建の場合など、細胞療法に持続効果が求められる場合に特に有用な手法になります。

そのような療法を開発しているのが、バイオテクノロジー企業のSymbioCellTechです。同社は、「ネオ膵島(neo-islet)」を用いた1型糖尿病治療法の開発に取り組んでいます。これは、複数の細胞種で構成される3D細胞塊で、患者の体内でインスリンを分泌する膵島の置き換えを目的としています。

 FibroBiologicsも、3D技術を活用する細胞療法開発メーカーの1つです。同社は、多発性硬化症、椎間板変性症などの病態を対象に線維芽細胞を用いた新薬候補を開発しています。FibroBiologicsは、線維芽細胞スフェロイドの培養にCorning Elplasia® 12K フラスコを利用し、2024年のコーニング3D細胞培養サミットでこの成果を発表しました。

3D細胞培養の未来

3D細胞培養の未来

3D培養は、今後、どのような方向に進むのでしょうか。3D培養を取り巻くトレンドについて、コーニングの専門家に聞きました。3Dモデルに関しては未解決の課題がまだ残っており、コーニングでは、こうした課題に対処するツールやプロトコールの開発に取り組んでいるそうです。

創薬で存在感を強める3Dアッセイ

Wilson氏は、標準化された3Dアッセイの利点を考えると、「近い将来、ほとんどの創薬関係者に広く普及する」と予想します。3Dアッセイの利用により、「in vivoでの治療薬候補の挙動について更なる重要な知見が得られることから、開発企業にとっては時間やコスト、リソースの節減につながる」とWilson氏。

コーニングのサイエンティフィックサポートスペシャリスト、Stéphanie Metzger氏は、3Dモデルが医薬品開発の現場で「初期の創薬や治療法発見から治験までの期間短縮」に寄与すると付け加えています。

3D構造の細胞治療用製品の利用が増加

コーニングEMEAのフィールドアプリケーションサイエンティスト、Mikael Garcia氏によれば、臨床の場で3D構造の細胞治療用製品の利用が拡大する見通しですが、実用にはまだ時間がかかりそうです。Wilson氏は、次のように期待を寄せます。

「今後、3D構造の細胞治療用製品がますます一般化し、細胞の生着や有効性が改善するはずです。細胞治療用製品の投与に先立って、in vivo様の特性を高めた環境が用意できれば、投与した細胞そのものの生着や長期生存の可能性が高まります」

依然として残る3Dモデルの課題

目下の課題としては、標準化3Dプロトコールの確立、3D構造のイメージング手法や特性評価手法の向上などが挙げられます。「標準化は重要な課題です。実験デザイン、プロトコール、バリデーション基準には、大きなばらつきが見られます」(Metzger氏)。

Wilson氏とGarcia氏は、3Dに対応したイメージングの手法やツールがないわけではないものの、まだまだ改善の余地があると指摘します。「お客様の間では、ECM(細胞外マトリックス)に悪影響を及ぼすことなく、生存状態のスフェロイドのイメージングに使えるソリューションが求められています」(Wilson氏)。

イメージングや特性評価に関わる課題の背景として、Garcia氏は、いくつかの要因を挙げます。第1は、ライフサイエンス領域では、3D構造物よりも2D構造物のイメージング機会が多い点です。しかも、3D構造物には光が深部まで十分に到達しないうえ、そもそも3D培養物自体、構造が複雑という事情もあります。

「2D培養では均一集団が多くなりやすい一方、3D培養は、多くの場合、はるかに不均一になります。このため、どのようなタイプのマーカーが発現するのか、そしてこうしたマーカーがオルガノイドや構造体のどの部位に発現するのか正確に判断するのが難しいのです」(Wilson氏)。複雑な分析を支援するツールがいくつか出回っていますが、ライブイメージング・分析機能を3Dに統合するには、さらなる技術開発が必要です。

3D培養での顧客ニーズに対するコーニングの取り組み

3D培養での顧客ニーズに対するコーニングの取り組み

コーニング ライフサイエンスは、お客様に共通する課題や要望に耳を傾け、常にお客様起点のイノベーションを推進する姿勢を守っています。コーニングでは先ごろ、3D培養法の再現性とスケーラビリティの向上に対する顧客ニーズを踏まえ、Elplasiaフラスコを開発しました。

コーニングのフィールドアプリケーションサイエンティストマネージャーのCatherine Siler氏は、治療用製品の開発に携わる研究室には、ゼノフリーで組成が明確なECMが特に重要と指摘します。「開発が臨床応用に近づくにつれて、組成が明確なECMや動物由来成分を抑えたECMがますます重要になります。こうした声に応えようと、製品開発に乗り出しました」(Siler氏)。

Garcia氏は、臨床応用開発の意向がある企業にとって重要なのが閉鎖系の確保とGMP適合能力だと強調し、次のように語ります。「現在、細胞の管理方法に関する規制が複雑になっています。臨床応用をめざすのであれば、閉鎖系が必要になります」コーニングでは、こうしたニーズに応えるクローズドシステム製品や無菌送液ソリューションの開発に取り組んでいます。

コーニングにご相談を

創薬や臨床研究に用いる3Dモデルは複雑です。お客様の研究に適合するツールやモデルを選定・最適化する際には、コーニングの専門家によるアドバイスや支援をご利用ください。

コーニングには、3D細胞培養モデル、3D組織モデルなどに特化した製品がそろっています。