輝かしい経歴
ドン・ケックは、同じくコーニングの科学者であるロバート・マウラーやピーター・シュルツと共にコミュニケーション業界を変革し、コーニングインコーポレイティッドをコミュニケーション革命の最前線へと導きました。1970年にケックらが行った導波管減衰および光ファイバの光学特性の分散と測定に関する研究が、光ファイバ導波管の商品化につながり、コーニングはフォトニクスの世界へと歩を進めていったのです。
ケックがコーニングに入社してから34年。引退の時期も迫ってきましたが、研究者としての、また技術革新者としての彼の偉大な功績は今でも次世代の科学者を啓発し、刺激しています。
1968年、ミシガン州立大学で博士号(物理学)を取得したばかりのケックが、コーニングインコーポレイティッドにやってきました。その当時、電気インパルスや光を細いガラス製のケーブルで伝送することなど遠い夢の話で、コーニングの技術革新の対象としても重視されていませんでした。
特に技術の進歩という点では、当時は今とは全く異なる世界でした。1969年、二―ル・アームストロングが人類として初めて月にその足跡を残し、「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」という月面からの彼の言葉に、世界中の人々が聞き入りました。
それからちょうど1年後、ある晩ひとり研究所で働いていたケックが、大きな技術的飛躍を成し遂げたのです。それは、仲間の研究者たちを、そしてコーニングを、一夜にして光ファイバの立役者としての名声をもたらすほどの大発見でした。
その時の興奮は、彼の研究日誌によく表れています。「ウーピー(やったぞ)!」―アームストロングの言葉に比べると、それほど将来への希望が込められた言葉ではありませんが、その時の彼の気持ちにぴったりの言葉でしょう。
ケックを個人的によく知る人達は、彼が中西部出身で、彼が「ゴリージー(おやおや)」「ホーリーサッチェル(びっくりした!)」「ニート(すばらしい)」などの表現を頻繁に使うことをよく知っています。彼の「ウーピー(やったぞ)!」という日誌の表現は、彼ならではの興奮の表現なのです。
コーニングの研究チームの功績と創造性、そして発明手法自体に対するケックの希望に満ちた姿勢や熱心さを目の当たりにしてきた同僚たちにとって、彼の引退を受け入れるのは一層難しいでしょう。たとえ先行きが不透明な時でも、ケックはよくこういうのです、「将来は明るいぞ!」と。
ケックは、自身がコーニングで育もうとした発明の文化は、「人間の精神によるものだ」と信じています。「私たちには生まれつき創造力があるんです。そして、この創造力を活かして世に貢献しようと、努力するんです」と彼は語っています。ケックは、まさにこの言葉通りに実行してきました。
2000年、ケックと彼のグループは、米国の競争力と生活水準の向上に絶えず貢献してきた米国のトップイノベータに対して合衆国大統領から授与される最高の名誉である「
アメリカ国家技術賞
」を受賞し、その功績は世界中で認められるところとなりました。
ケックがコーニングで働こうと決めたのには、運が大きな要因でした。彼は、最初からコーニングへの入社を希望していたわけではなかったことを認めた上で、次のように述べています。「私が大学を卒業したころ景気は絶好調で、6~7社から勧誘を受けていました。どこに就職しようかを決めようとしているときに(そのとき、コーニングは候補にありませんでした)、コーニングの就職担当者が、大学にやってきたんです。担当者は、
光ファイバ
の束を私に見せて、この光ファイバを通して、光を使って会話する方法について研究しているんだ、という話をしてきました。私は興味をそそられて、ボブ・マウラーの面接を受け、そして彼がやっていることに惹かれたんです。彼から誘いを受け、私はそれを受けたわけです。」その後は、ご存知の通りです。
振り返ってみると、ケックは、コーニングに入社したいきさつには運命的な要素があると感じています。「コーニングへの入社は、人生を通じて私についている、ある種の予期せぬ幸運だったと感じています。自分向きのプロジェクトに配属され、自分向きの組織の一員となり、上手くやっていける仕事仲間と働くことができました。」と彼は述べています。
コーニングの150年におよぶ技術革新の伝統に貢献した数多くの人物のひとりとして、ケックはコーニングの歴史における自身の役割について次のように述べています。「ボースカウト時代、キャンプ地を後にする時には、来た時よりもきれいにして帰ろうと教えられました。ですから、入社したときよりも少しだけ良い状態にして、私のキャンプ地であるコーニングを去れればと思っているんです。」
実際、ケックの研究や貢献には、彼の前向きな印象を反映しています。
ケックは、コーニングのほか、コダック、ゼロックス、ニューヨーク州、そして連邦政府が共同で取り組んでいるローチェスターのフォトニクスおよびマイクロシステムセンター設立のために活動しようとしています。このセンターは、多くの革新的な研究を育み、新人科学者をトレーニングする場所として機能する予定です。そして、ケックは、明日のイノベータを鼓舞すべく、コーニングの研究で得たことを彼らに伝えていく啓発的な役割を果たそうともしています。